から揚げ
秋の夜風に吹かれながら、ちんちん先生のお宅から、おいとまさせていただき,自宅に帰る途中の秋夫さん。
先生のお宅は、倒壊オチですんでよかった、爆破オチだったらシャレにならないもの…………
家路への帰路につくために歩いていると、妖精に出会った。
「あー 秋夫さんです~」
「おう、生きてっか」
赤羽の妖精こと、たかしぃだ、彼は見た目はゆるふわの不思議系、無職だが、この辺りの住民 、すべての夕飯を把握してるスペシャリストだ。
「たかしぃは今日もハローワークに行ったです~」
「毎日えらいな、たかしぃ」
「でも、お給料に一日5つイチゴが欲しいって言ったら、帰らされたです~」
世間は中年無職には冷たい、たかしぃの苦労は秋夫さんにも、良くわかる。
秋夫さんはたかしぃに、そっと心付けを握らせた、同じ無職どうし、ガンバレのエールである。
「はわわわわっ ちなうんです、たかしぃは、そんなつもりで言ったわけじゃないです~」
「いいから、取っとけ、それで何かウマイもんでも食べろ!」
秋夫さんが握らせた、わりばしを嬉しそうに見つめる、たかしぃ。
「ありがとうです~ そう言えば今日の秋夫さんのお宅の夕飯は、奥さんが鶏肉を買っていたから、から揚げです~」
「こんな所にいる場合じゃねー!!」
嫁さんが作る、から揚げは、秋夫さんの好きな食べ物トップスリーに入るホームラン級のうまさだ。
全速力で走り自宅までの帰路を急ぐ秋夫さん、途中でシャドーボクシングを間に入れつつ走り、男らしさアピールも忘れない。
だが、途中で気が付いてしまった、秋夫さんの走るペースに合わせて付いてくる足音があることに。
男らしさアピールをしている秋夫さんを付けてくるとか、相当にできる奴だろう。
突然、秋夫さんは急停止をすると、つけてきた不審者は、勢いが止まらずに秋夫さんを追い抜いた。
追い抜いた、不審者に対して秋夫さんは、浣腸44マグナムを抜き。
「フリーズ、止まれ、下手なまねをしたら、後ろから浣腸44マグナムをぶち込むぞ!」
「じっ自分であります、宇宙刑事であります!」
「いいから、ゆっくりと、こちらを向くんだ!」
暗がりでビビっていた秋夫さんだが、良くみると宇宙刑事である、彼の手を見ると、ペレステ4のコントロールが握られている。
「おい、おい、どうした宇宙刑事? まだ帰ってなかったのか?」
「まだ、バイバイしてないであります!!」
「で、いったん帰ってペレステ4のコントローラを持ってきたと?」
コクリと、うなずく宇宙刑事どうやら宇宙刑事は我が家で、野球ゲームをするつもりらしい。
秋夫さん宅では、ペレステ4のコントローラが一つしかないため、野球ゲームをする時はコントローラ持参が通例となっている。
「ついでだウチで飯くってけ」
「よねすけ」
「ああそうだ、よねすけだ、ウチのから揚げはウマイぞ!」
宇宙刑事を連れ、ようやく自宅マンションが見えてきました。
「!? でっ刑事長どの! ひっ飛行機であります、監視されてるであります!」
遥か上空を飛ぶジャンボ機を見て、また面倒くさい事を言い出す宇宙刑事、だが付き合いの長い秋夫さんは、そんな電波発言にも動じない。
「バカだな~ 宇宙刑事、俺らはステルスフィールドで防護されてるから、
ヘリや飛行機には見つからないの」
「……………………そっそうだったであります、自分、ついつい忘れておりました!」
「メモっとけ、試験にでんぞ」
ひゅ~ 危ねぇ、危ねぇ このアホの発言に付き合っていたら、家に帰る時間が遅くなってしまう。
ただいまっと、自宅マンションに入りキッチンを見ると、から揚げが置いてあった、まだ熱つ、熱つである。
嫁さんの美晴が秋夫さんに気が付き。
「お帰り~ 遅かったね~」
「おう、今日は色々とあってな、それより宇宙刑事を連れてきたぞ」
「あっ宇宙刑事君いらっしゃい! 夕飯食べていくでしょ?」
すでに食卓のイスに座っている宇宙刑事は。
「よねすけであります!」
「宇宙刑事君も、から揚げ好きだもんね~ すぐ持ってくから待ってて!」
美晴が手速く食事の準備をして、いただきます、したのだがやはり、ウチのから揚げはウマイ、これにレモンを絞るとさらにイイ。
ドン…………
と食卓を叩き。
「刑事長どのそれは、ギャラクシー憲法第12条の第3項に違反してるであります!」
「秋夫ちゃん、宇宙刑事君が、から揚げにレモン汁はかけちゃダメだって」
「おお~すまんね、自分が食べる分だけ、かけるから怒るな」
そう、揚げ物にレモン問題は意外とシビアな問題だ、過去に、揚げ物にレモン汁をかけてしまったがために傷害事件にまで発展した話を聞いた事がある。
親しき中にも礼儀ありである…………
「そお言えばさっき、たかしぃにあったぞ、あいつ今日もハローワークだって、えらいよな」
「毎日、良くがんばるわね~ えらいと言えば、宇宙刑事君も会社の役員さんだよね」
「!?」
なんですと!? 宇宙刑事は医者を辞めた後は無職なはずだが??
よくよく、嫁さんに聞いてみると、宇宙刑事は親が不動産関係の会社を経営しており、その会社の役員をやっているとのことだ。
宇宙刑事のことだ名前だけの役員だろうが、毎月のお給料は、出ているわけで。
いくら名前だけの役員で、普段は遊びほうけていても、無職の秋夫さんとは、えらい違いだ。
「宇宙刑事、本当に、お前会社役員なの?」
「?? 自分は宇宙刑事でありますよ?」
「宇宙刑事君のお母さまが何年も前に、おっしゃっていたけど会社役員にして役員室も用意したのに、会社に寄り付かないって、なげいてらしたわ」
そんな宇宙刑事には、裏切られた気分だ…………
「へへっそうか、ここで無職は俺だけか…………」
「違うのよ、秋夫ちゃん、そんなつもりで言ったんじゃないのよ!」
「刑事長どの、味の素とほんだしは違うと申しまして、あまり気にされないほうが」
今のすさんだ心の秋夫さんには、美晴の慰めも届かない、と言うか、何か宇宙刑事にまで、わけのわからい事を言われ慰められる、秋夫さんって…………
あんなにウマイはずのから揚げが、急に味気ない物に感じられ…………
「ごちそうさま寝る…………………… 」
先ほど、セブンイレブンでカップのホットコーヒを購入したのですがスモールサイズのカップなのに、Lボタンを押してしまいコーヒーが溢れてました、そんな間違いをするのは僕だけでしょうか?