フランス
男飯を完成させた秋夫さん、見た目は少々悪いが元来、男飯なんてこんなもんだ。
そもそも、秋の非常用リュック、プロバンス風なんてネーミングを付けてはいるが、プロバンス風ってなんぞや?
オリーブオイルを使う?トマトを使う?
南フランス風の料理で、自然の材料をあまりいじらずに作るのが特徴らしいが、昨今世間ではプロバンス風が溢れかえってる。
ある居酒屋ではイワシの甘露煮プロバンス風なんて料理まである、注文すると缶詰のふたを開け缶詰のまま、オリーブオイルとバジルをかけ客に出す。
実に、なげかわしい風潮だ、だが、秋夫さんは違う。
心の中にフランスがある、あの美しい景色をを心に思い浮かべ調理したのだ。
いまだに、色あせない記憶フランス…………
多感な少年だったあの頃、バイトの給料を懐にしのばせ、都電にゆらゆらゆられ、着いた先は。
浅草フランス座 ストリップ…………
さてさて、実食しますか。
「いただきます……………………」
サンマの缶詰の甘味とコンビーフの脂肪分が舌の中でよく絡み合う。
「次は乾パンだな…………」
やはり、サンマの缶詰とコンビーフの油の味がする。
ミネラルウォーターを注いだため、乾パンが、やや食べやすくなっている、
「うむ………………………………マズイな」
食べれなくもないが、マズイ、やはり思いつきで食べ物を混ぜるのはよくないかもしれん。
秋夫はコンビニ内の商品の醤油とマヨネーズ七味をちょうだいして、男飯にふりかけ、ぐちゃぐちゃにまぜた。
「うん、味が良くなった」
見た目はグロ18禁その物だが、悪くない味だ秋夫さんの舌がおかしいのか。
LINEが既読にならないと、何かマズイ事言ったか気になり夜も眠れない、粘着質でめんどくさい性格の秋夫が悪いのか?とにかく美味です。
ごちそう様でしたと完食の後、タバコを吸いながら弁当コーナーに突っ込んだバイクを見るが、多少の傷はあるが平気そうだ。
エンジンをかけると一発でかかった、すこぶる順調である。
雑誌コーナーから地図を出し確認してみる秋夫。
「道がめんどくさいな、どこまで流されてるんだ俺…………」
先ほど入手した、非常用リュックに缶コーヒーや地図おやつを300円以内にして詰め込み背負った。
ブンブブーンとバイクを走らせ中央区経由で戻ろうと考えていたが、ちょいと寄り道で港区に来ております。
やはり港区、オシャレさんである秋夫さんは以前サラリーマン時代、六本木で一番有名な金持ちビルの中で勤務していたことがある。
その前は六本木内のITで中堅どころにいたのだが、会社が上場して金持ちビルに移転してしまい牛丼の店が遠く苦労した物である。
社内も、完全禁煙だしムカつく記憶しかない。
だが、そんな地域だからこそ高級店が多い。
秋夫は、ランジェリーショップとジュエリーショップの言葉の響きが、似ているのを気にしながらジュエリーショップに入った。
「ふ~じこちゃ~ん」
お宝を目の前にすると、つい言っちゃう年齢なのだ
「リュックに入るだけ入れるか!」
ショーケースを割り、宝石、高級貴金属も含めそこそこの高価値であろう物をリュックに詰め込み。
あばよとっつぁんと店をからバイバイした。
とっとと帰ろうと、バイクにまたがり、新宿方面へとブーンと飛ばしていたら、前方にとんでも物が見えてくる。
頭が二つあるでかいワンワンや、鳥っぽい女やらとにかく色んな種類の化け物が大量にいる。
百や二百じゃきかない数の化け物達が、道をおおいつくしている。
「なんぞ!? あの連中は? ヤバげな雰囲気ビンビンじゃない!」
明らかに殺気立っている化け物達を見て、全力で横道に軌道修正する秋夫さん、アクセルをグイグイ絞り猛スピードで港区を抜け。
後ろを振り返り、化け物達がいない事に安心した秋夫さんだが突然、路地から一台の車が飛び出してきて横からはねられた。
車にはね飛ばされ、すっとんで地面をゴロゴロと転がり、うずくまっていると。
「あれっ?ひょっとして先輩ですか!?」
車から降りて来た男は、秋夫を知っているようだ?
痛む体を引きずり起こし、顔を男の方に向けると秋夫の良く見知った男だ。
「そのパイセンだ、なぜお前がここに…………?」
ゆらゆらと都電にゆられるのも、いい物です、JRを使えば自宅から池袋まで20分かからないのですが、つい都電に乗り遠回りしてしまいます。