5
到着したのは、広い市場のような場所だった。
人が溢れていて、遠くまで見渡すことができない。
その人も、角が生えていたり、尻尾が生えていたりと様々である。
「はぐれると面倒だからな、離れるなよ」
歩き出したので、咄嗟に手を掴むと、一瞬睨んで、また歩き出した。
人と人の間を縫うように進んでいると、途中で誰かにぶつかり、アドの手を離してしまった。
あっ……と声を出した時には、アドの姿は見えなくなっていた。
名前を呼んで、辺りを見渡して探すが、どこにも見当たらない。
しばらくきょろきょろしていると、手を掴まれた。
「ったくお前は、何やってんだ」
こちらを睨むアドの姿があった。
「ついてこい」
強引に手を引っ張って歩き出した。
しばらくすると、人ごみを抜け、1件のテントに到着した。
乱暴に捲って中に入る。テントの中心に、胡坐をかいて座る老婆の姿があった。後ろには大量のバケツと、外から床に向けてパイプのようなものが伸びている。
「おや、アドルフ。また来たのかい」
しわくちゃの顔の口角を上げた。
「おや? アド、その娘は誰だい?」
老婆が怪訝そうに訊いた。