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「飯ができたぞ」
部屋の外から声が聞こえた。
扉を開けると、エプロン姿のアドが立っていた。
「とっとと座れ。冷めないうちに食え」
テーブルを指さした。
白米と味噌汁……とても美味しそうな和食があった。
席について右手で箸を持ち、違和を感じたので左手に持ち替えた。
目の前に座るアドを呼び、自分は何者なのか訊いた。
「知る必要はない。全て俺が再教育する」
食べ終えたら、しばらく部屋で休めと言われた。
了承せず、席に座り続けた。
アドの傍にいたいと、そう思っていた。
「部屋に戻れよ」
首を横に振った。
溜め息をついて「勝手にしろ」というと、皿を洗い出した。
私は、どうやらぼーっとしがちな人らしい。気が付けば、アドが目の前で身支度をしていた。
「出かけるぞ」
上着を羽織ってついていった。
「今から行く場所は、今後、お前が1人で行く場所だ。それまでに場所と道程、人の顔を覚えてもらう」
森の中をどんどん進んでいく。
アド、と呼ぶと、立ち止まって振り返った。
覚えられる自信がない。何せ、自分のことさえ、覚えていないのだから。そう言うと、はあと溜め息をついた。
「お前、やる気あるのか?」
何のやる気だろう。