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始めに聞こえたのは、人の声だった。
「あなた、あなた! 目を覚ましたわ、先生を呼んで!」
続いて、バタバタと走る音。
そして。
「ひー君!」
見知った人の声。
その目で、その姿を捉え、思わず僕は泣いてしまった。
母親と、その横に。
「亜戸……」
待っていてくれた―――。
それから、数日が経過した。
婚約者が病室に来ると、僕の姿は無かった。
代わりに、枕にメモが置いてあった。
「ひー君!」
病院の中庭でぼんやりと空を見上げていると、声が聞こえてきた。
その姿を見て、笑みをこぼす。
「亜戸」
僕の婚約者。フルネームは「亜戸 瑠璃」
学生時代のあだ名は、フルネームから取って「アドルフ」だったが、それは男性名という事もあり、僕には「アド」と呼ばせていた。彼女自身、アドルフというあだ名に、若干の抵抗があったらしい。
ちなみに、「ひー君」というのは、僕の本名から取ったあだ名である。




