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パラノイア  作者: 颪金
16/22

16

 アド……僕の婚約者の愛称。僕の大切な存在。

 僕は彼女に嘘をついていた。

 仕事は全く忙しくないと嘘をついた。

 上司とは上手くいっていると嘘をついた。

 そして、僕自身、自分に嘘をついた。

 嘘をついて、現実から逃げた……。

「―――アド!」

 話を終えた瞬間、崩れるように倒れた。

「アド、しっかりして、アド……!」

 揺さぶって気付いた。身体が熱い。かなり無理をしているはずだ。

 背負って歩き出す。まだ、まだ目覚めたくない。

 まだちゃんとお礼を言えてない……!



 連れ帰り、ベッドに寝かせる。苦しそうに呼吸をしている横に座った。

「アド……」

 手を握ると、虚ろな目で私を見上げた。

「……隣に、寝てくれ」

「え?」

「さっきやったみたいに……頼む」

 アドの最初で最後のお願い。ちゃんと聞いてあげないと。

 横になると、抱き寄せられた。

 胸に頭を乗せると、心臓の鼓動が聞こえてきた。

 ゆっくりで、まるで……。

「眠ってるみたい」

「そりゃそうだろ、眠ってるんだから」

 眠っている。現実の僕は今、眠っている。

「アドは、待ってくれてるかな」

「さぁな」

「待っててくれてると良いな……」

「『さよなら』って、電話しちゃったんだろ? どうなってるかな」

 アドが待っているかは解らない。それでも、僕は生きたいと思った。

 生きたいと思ったから、こうして夢を見ている。





 そろそろ目覚めるか。

 アドがそう言った。

 大丈夫、俺はいつだって、お前のそばにいる。俺はお前なんだから、当然だろ?

 アドの言葉、アドの声。

 もう1つ、思い出した。

 今のアドは、僕の―――。

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