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僕は、パラノイアになりたかった。
全てを、無かった事にしたかった。
自分が童顔である所為で、上司からセクハラ紛いのことをされていた事。
結婚することを発表した日、上司に呼び出され、襲われてしまった事。
僕を通じて、婚約者が汚れてしまう事……。
全て、妄想なら、良かったのに……。
『僕と一緒にいたら、君まで、汚れてしまう』
それが僕の最後の言葉。
電話を切って、マンションの3階の、自分の部屋のベランダから飛び降りた。
そして、気が付けば、この場所で、私はアドと会っていた。
「……思い出した」
目から、ポロポロと涙がこぼれる。
「お前は、パラノイアにはなれなかったんだ。全て現実。違うのは、この世界だけ」
この世界だけ……。
「アド、じゃあ、あなたは……」
「そうだな……お前の意識が、婚約者を手本に作ったってところだろうな。性別は反転しているが……ここはすべて、お前の夢の世界だ。あの老婆も、お前の意識が作り出したものだ」
夢……私は今、夢を見ている。
「アドの再教育は、私の記憶を思い出すための行動。アドが衰弱していくのは、私が目を覚ますと、アドが消えてしまうから……」
頷いた。
「でも、お前は目覚めなきゃいけないんだ……解るだろ?」
アドの目は優しかった。




