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パラノイア  作者: 颪金
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「知ってる」

 アドの答えは、意外なものだった。

「俺はお前の事で知らないことなんて無い。好きだということも、全部知ってる」

 じゃあ、私が、どこの誰なのかも、知ってる……?

「ああ、お前が忘れているだけで、俺は全部知ってる。お前自身が思い出すために、俺は再教育をしている」

 私が、思い出すために……。

 困惑する私を余所に、アドは語り始めた。

 男は、結婚を申し込まれた。

 自分を理解してくれる唯一の存在に、一緒にいようといわれたのだ。

 もちろん、男は了承した。彼女を、愛していたから……。

 男の幸福な知らせを聞いて、嫌な人間は喜ばなかった。

 男が会社から帰ろうとした時、呼び出され、薄暗い、誰も入らない空の倉庫へと連れて行かれた。

 男は、ひ弱だった。

 何も抵抗が出来なかった。

 人肌の気持ち悪さが、身体に染み付いた。

 男はそこで初めて、自分が"性の対象"とされている事に気付いた。

 自分が汚されて、初めて気付いたのだ。

「衝撃のあまりぼんやりとしか覚えていない状態で飛び出し、気が付けば自室にいた。携帯に『思い出』と題されたメールが、写真と一緒に送られてくるまで、男は自分がされたことが解らなかった。その場で婚約者に電話を掛け、別れを告げた」

 そして、男は

 マンションの自室のベランダから飛び降りた。

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