このまま朝を迎えても
ノンフィクションのようなそうでないような・・・
本来は連載小説の登場人物のモノローグの予定で書いたものなんですが・・・
目が覚める時の感覚はいつも曖昧だ。いつから起きていて、いつから覚めていたのかわかったもんじゃない。
でも、目が覚めた時の感情はいつも明瞭で決定的だ。
不愉快。それに尽きる。不愉快が過ぎたら怒りがこみあげてくる。
一体何にそんなにムカついているのか、自分でもわからない程、目を覚まさなきゃならないことに理不尽だと感じる。それでも諦めてベッドから身を起こし、決められたルーチンと化した身支度を始め、制服と化したオフィスカジュアルを身にまとう。
鏡の前で自分に問いかける。
「何やってんの?」
答えなど返ってくるはずもない。まあ、返ってきても困る、これくらいにしておこう。昔、ネットの都市伝説に、鏡に向かって「お前は誰だ?」と5回問いかけたら、精神が崩壊すると書いてあった。まあ、崩壊などはしないだろうが、精神衛生上、自分に問いかけるのは良くない。
転勤してきて何年になるのだろうか。着任日を調べるのは容易だが、やりたくない。”長くいる”ってことをはっきり時間に区切りたくない。または本当に長い年月だとしみじみ感じる余裕などない。
この数年、本当に長かったし、資格やスキル、貯金、手に入れたものはある。去年の自分など、自分でないように感じるほどだ。それでも、階級も、給与も、仕事内容もさして変わらず、休日に下手をすると一言もしゃべらない毎日はあまりに空虚だ。
年を取りたくない。
いつまでも若くて、ちやほやされたいってことではない。変化に対する柔軟さや好奇心を枯らして、疲れ果てたくない。
さあ、もう寝よう。このまま朝を迎えても、朝はやってくるし、きっと私は会社に行くのだから。