第五章 『開示する過去』
風呂から上がった二人は無言のまま目の前に座り俺の言葉を待っている。
「助けた理由を話す前に俺の過去を話さないといけないんだ」
「はい、聞きます」
「分かった……」
過去を語る。
先祖から代々と液状炎などと言う特殊な魔力を体内に宿して親から子へと受け継がれて来た、しかし魔力世紀が終わり新世紀となった世界では魔力は得体の知れない常識を大きく外れた存在でしかなく理解もされない。理解されないものは遠ざけ畏怖の対象とするのが人間である、だから忌み嫌われ呪われた者との烙印を押される。
俺の家族も魔力を隠しながら生きて来た。小さい頃に育った村は山奥にあって自然に囲まれた豊かな場所だった、隣近所も優しい人ばかりでいつも幸せだったのを覚えている。家族は母さんと母さんの妹との三人暮らし、父親は俺が生まれてすぐに事故で亡くなったと聞かされたが寂しくはなかった、大好きな母さんと一緒だから他に何もいらない。
当時はそう思っていた。
だが幸せは長くは続かなかった、魔力を受け継いだ人間はいつの日か力が目覚める日がやって来る、五歳の頃に突如として魔力が目覚め液状炎を発現させそれを村人に見られてしまったのだ。噂は瞬く間に広がり村中から呪われた者と石を投げられた。痛かった、体中あざだらけになり頭からは血が流れてどこに逃げても追って来る村人が鬼のようで地獄に落とされたと錯覚して今も消えずに記憶の奥底に住み着く。
母さんが盾となって俺を庇ってくれた、自分も痛いだろうに。
力無き者を守る力、そう信じていた母さんは決して村人に魔力を使うことはなかった、抵抗もせず俺を抱きしめ逃げ回るだけ。村人全員から追われる恐怖はいつまでも纏わり付いて逃げても逃げられない、世界の果てに逃れようと無駄なのではと絶望した。
『やめてください、助けてください』
ずっとそう呟いていた母さんだったが村人には届かない、響きもしない。
逃げまわる内に足が縺れ地面に倒れてしまい村人に追い付かれてしまった、罵倒も投石も雨のように降り注いで醜悪な村人の群れを眺めるしかできない。怖くて震えることしか許されない、それしか頭になくて泣きじゃくるだけ。
そんな絶望の中に一人の村人がこちらに近付き太い木の棒で母さんの背中を殴る、何度も何度も。衝撃だけが伝わって一層と恐怖に取り憑かれた、母さんは吐血し抱き締める力も弱まって微かな声で俺を呼ぶ。
『ユウヤ、ユウヤ……この、人たちを……恨んじゃ……ダメだからね……強く生きて、幸せになって…………』
そして声は聞こえなくなった。温もりも途絶えて行く。
『おかあさん……』
呼んでも返事をしない。
『おかあさん、おかあさん』
もう優しい笑顔もしてくれない。
目の前で大切だった母さんを失った。
その後のことはあまり覚えていない、断片的に覚えているのは母さんから俺を引き離そうとする村人の姿と、駆け付けた母さんの妹の姿のみ、その後意識が途絶えた。
気が付いた時にはもう母さんはいなくて彼女と一緒に抱き合って泣いた。後で聞いた話しでは村の外に買い物で出ていた彼女は異変に気が付き駆け付けて魔力を使い俺を助け出した、同じ家系だから母さんの妹にも魔力が目覚めていたのだ。皮肉にもその御陰で助かった、俺が目覚めた所為で地獄が始まったと言うのに。
助けられなかった、それどころか怖がることしかできなくて情けなかった。
その時から笑えない子供になった。そんな俺を一生懸命に慰めてくれたのが彼女だった、献身的に接してくれて温もりをくれた彼女のことをもう一人の母さんとして慕う、母のいない寂しさも、死なせてしまった後悔も、何もできなかった絶望も全てを優しさで包み傷付いた心を緩和してくれた。
だからこの日から彼女のことを母と呼ぶ。
村から逃げ出して一年程二人でひっそりと村よりも発展している町で暮らし一時の平安を送る、だけど村人に追われていた光景が脳裏から離れずそれを夢に見てしまっていつもうなされる毎日、それと同時に母さんが死んだ光景も蘇って心がおかしくなりそうだった。二人目の母さんは恐怖に震える俺を抱き締めてくれる、だけども毒のように少しずつ心を犯す記憶は感情を奪って行く。
そんな絶望の日々に俺は一匹の猫に出会った。
感情を取り戻す切っ掛けは猫の御陰だろう、猫と触れ合う内に笑顔を思い出したように忘れていた感情を表に表せられるようになった。笑うと母さんが喜んだ、それがとても嬉しかったからずっと笑っていようと思ったのを覚えている、出会った猫と一緒にいるだけで世界が広がり、曇り空に光が満ちて行くのを感じた。
幼心にもう大丈夫だと。
母さんもまだ若い女性である、恋をし結婚をして義理の父親ができた、けれど過去に戻れるのならば全力で止めていたかもしれない。それが悲劇の始まりだから。
義理の父親は母さんの気が付かないところで俺を殴った、知らないところで蹴った、陰に隠れて叩いた、静かに目を盗んで抓った、暗夜に紛れて水を掛けた。笑いながらやめてと言ったのに酷いことをやった、たくさん、数え切れない程に。あの村人の顔が重なる、やっぱり呪われているのだろうか。
我慢の限度を超えた頃に魔力を使って父親を遠ざけようとしたがそれが不味かった、呪われた力を目の当たりにして恐怖に形を変える顔が同時に憎悪を呼ぶ。
『呪いの力……ああ、恐ろしい』
父は子の脆い首に手を伸ばす。
『死んでしまえ、お前は呪われている!』
ごめんなさい、ごめんなさい。
『なんでお前みたいなのがいるんだ、お前みたいな奴が……』
ごめんなさい、ごめんなさい。
『死ね、死ねえ!』
もうやめてよ。
たすけておかあさん、たすけて……。
最初、周りの声が遠ざかって今自分が何をしているのかを忘れた。次に、視界に赤や緑や青のノイズが覆って行き輪郭もぼやけ体に力が入らない。
呪われた者の末路、幸せに生きる権利すらない。そう言っているように聞こえた。
『やめてください!』
母さんが父親に飛び掛る姿を目撃した、必死に首から手を取り除こうと奮闘し呼吸が正常化する。
『何をする! そいつは呪われた子供だ!』
『呪われてなんかいません! 私たちが何をしたって言うんですか、あなたを傷付たことなんかない、ただ私は……私たちは幸せに暮らしたかっただけなのに』
『……そうか、お前も呪われているのだな? 騙していたんだずっと、その屈託のなかった笑みは醜悪に染まっていたんだな、騙して喜んでいたんだ!』
『違います、私はあなたのことを……』
『うるさい、さえずるな悪魔め!』
幼子の首を好んでいた手は自分の妻へ。
『死ね、死んでしまえ!』
やめてと口を動かしても声が出ない、ズボンの裾を掴むことしかできない。
『あ、ああ……あな……た…………』
『死ねぇえええええええ!』
『ユ……ウ……ヤ……』
『おかあ……さん』
どれだけ時間が経ったか、手から解放された母さんは床に落ちる。
『おかあさん、おかあさん』
同じだ、あの時と。村人に襲われた母さんと忌まわしい記憶と床に転がる母さんが同一になり前の母さんのようにもう笑わない、怒らない、悲しまない。
ごめんなさい。
『はぁ、はぁ……呪われたバケモノめ、騙していたお前が悪い、悪いんだ』
声なき叫びを上げ魔力を使う。それに驚き父親は怯み足を滑らせ床に頭を強く打ち付けて動かなくなった、時間が経過すると赤い絨毯を広げて電池の切れたおもちゃみたいに微動だにしない。
おもちゃから母さんに視線を移し体を揺する。
『おかあさん、起きてよおかあさん……』
起きない、本当は気が付いていたが現実から目を逸らし母さんを呼び続ける。
ごめんなさい、ごめんなさい。何もできなかった、守ってあげられなかった、最初のおかあさんも次のおかあさんも守ってあげられなかった。
ごめんなさい。
「そうやってずっと謝っていた」
過去から生還する意識は眼前の少女を見詰めて助けた理由を語る。
「俺は……俺は母さんが死んだ日から心が壊れたんだと思う、目の前で女が死にそうな姿を見ると体が震えて……頭が真っ白になり二人の母さんを思い出して思考がぐちゃぐちゃになって訳が分からなくなる…………助けなくちゃって強く思って君を助けようとした。偽善ならまだ良かったのかも知れない、だけど俺がやっているのは代償行為だ、助けられなかった母さんの変わりに君を助ける……自分勝手で醜悪、俺は自分の都合で介入した」
羽原姉妹もそうやって首を突っ込んだ、目の前で傷だらけだった二人を見てしまったことで心の傷が開きそれを埋めるために助ける、自分の心が潰れてしまわないように。
俺はなんて醜い。
「俺のために君を利用した、申し訳ない」
深く頭を下げたがそんなことで醜さは取り除かれない。
「あ、頭を上げてくださいユウヤさん! そちらの思惑で助けたのは分かりました、でもその御陰でわたしはこうして無事に生きている……理由は関係ありません、命の恩人には変わりがないんです! ユウヤさんは優しい人です」
「そんなことはない、俺は死に掛けた女なら悪人だろうときっと助けてしまう……ほら、もうどうしようもなく壊れている、理解に苦しむだろ? 決して優しい人なんかじゃない」
エゴの塊、自分を守るための手段に他人を利用しているだけだ。
「ユウヤ……もうやめろ、自分を責め過ぎだ」
「だけど、俺は……」
「ユウヤさん」
フォティアが真っ直ぐな瞳でこちらを覗く。
「やっぱりユウヤさんは優しい人ですよ……だって辛いはずの過去を喋ってくれました、誰にも触れられたくないはずなのにそれを曝け出して……前に私に言ってくれましたね? わたしが話せないと言ったら君は優しいなって。普通なら話せないと言って笑ってここに置いてくれました……だからユウヤさんも言いにくいことを言った、だから優しいって思うんです」
「フォティア……」
「わたしが言えた義理ではないですけど自分勝手だっていいじゃないですか、その結果には命を救われた人が確実にいるんです、私はその一人ですから保証します」
「小娘の言う通りだ、だからもう泣くんじゃない」
そうか俺は泣いていたのか。
「小娘……いやフォティア、ユウヤのことを許してくれるのか?」
「許すも何も感謝しています」
「そうか……ありがとう。ほらシャキっとしろ神道ユウヤ!」
と言って背中を叩く。脈打つように痛覚を寄生させるがその痛みが原動力に変換され強い意志が生まれるのを体感する自分がいた、俺は決めたんだ自分の都合で助けるのであれば必ず助けた相手を幸せにしてみせると。
その意志だけは貫くと。
「痛てて……もっと優しくしてくれよ」
「腑抜けた奴は叩くに限る」
「意外にスパルタだよな……御陰でシャッキとできたよ。フォティア、個人的な理由で介入したが俺は最後までお前の見方になると決めた、それだけは偽りはない」
「ユウヤさん……わたし……」
表情を曇らせたフォティアには理由を言えない申し訳なさを感じた、ここでシャルールとの戦いで得た情報を訊き出そうとするのは酷だろうか。しかし奴らが定めた期間がいつまでも続かないのは分かっている、これから戦いが起きるのにこちらが後手に回るのは避けたい。
「……フォティア、答えられることだけを答えて欲しい」
「はい」
「俺はこの前シャルールと名乗ったディーナーと戦った」
「シャルと……」
シャルールを知っている、つまりセルモクラスィア家と関係が全くない訳ではないと言うことか。
「その時シャルールはフォティアがセルモクラスィア家の当主から何かを盗んだと聞いた」
「……そんな、どうしてシャルが……えっとわたしが話せることだけなら、あのわたしはセルモクラスィア家に使えている……ディーナーなんです……元々わたしには魔力を持っているのですけど微弱なものしかなくて強力な魔力を持っている他のディーナーと違って不当な待遇を受けてました。でもシャル、えっとシャルールだけは違ってとても良くしてくれて、わたしのお姉ちゃんのような存在になってくれて……彼女は口は悪いですけど優しい人なんです……でもどうして、わたしに協力的なのに……」
「事情は分からないが、その何かを盗んだ訳じゃないんだな?」
「あの……えっと……」
「……もしかしてその何か関することを喋ることができないのか?」
「……は、はい」
つまり口止めされているということか、それだと追い掛け回す意味が分からなくなる。何かを盗まれたとの名目で追跡しているはずだが盗まれたもののことを口外しないようにされているのは奇妙だ。つまり向こうは盗まれることを前提にしていた? いや、そもそも盗むとの事象事態もう違うのでは?
「ユウヤ、もう直接本人に訊いた方が早いぞ」
「本人って?」
「セルモクラスィア家のご当主様のことだ。実は結構前から魔力を遮断している結界の周りを誰かの使い魔が飛び回っている、多分そいつの使い魔だとは思う」
実際のところ魔力を遮断すると探し方次第では発見される恐れがある、普段世界には魔力が微々たるものだが溢れている、それを感じ取れる者は魔力遮断している場所を見付けてしまうとそこだけ魔力がなくなっていて怪しい場所となってしまう、遮断しているがかえって発見し安くなると言う矛盾が生まれる訳だ。だからそれを見越しこの町には数箇所に魔力遮断場所が存在し魔力探知者をかく乱している訳だが、奴らはその一つに使い魔を張り付かせているのだろう。
「だがその使い魔に接触してしまったら居場所がバレるぞ」
「……バレなきゃいいんだろ?」
「そうだが、何か方法があるのか?」
「わたくしを誰だと思っているんだ、ある程度なら魔力を使えるんだぞ。つまり話しができればいい訳だ、この町には魔力ネットワークがあるだろう?」
町には源さんが施した網上に張り巡らされた魔力の糸が存在している、魔力を持たない一般人が触れても糸の存在に気が付くことはないがこれに魔力を持つ者が触れると瞬時に源さんのところに侵入したことを知らせる警報装置みたいなものだな、これを使ってセルモクラスィア家のディーナーが町に侵入したことを感じる手段としている。
これは声や使い魔が見た映像をもネットワークに流すことができる、他にも様々な用途に使われたりするが基本は町の見張り用だ。
「あれを利用すればこちらの声を流すことができる、ネットワーク全体から声を発生させれば魔力を持つ者のみに聞こえる、向こうには四方から聞こえてどこからの声か分からないからこちらの居場所はバレないだろう」
「なるほど、それならいけるかもしれないな。さすがだなマギア!」
「はっはっは、褒めろ褒めろ、私の偉大さを思い知ったか!」
「マギアさんって何者なんですか、ユウヤさんと同じ魔力使いですか?」
「まあそんなところだ。さて、ネットワークを使うのなら源さんの許可を取らないとな、さっき頼んだ確認も聞いておきたいし」
ケータイを取り出して源さんに電話をする。数回のコール後直ぐに出た。
『結果が知りたいのか? 残念じゃが今は向こうに連絡が取れん、どうも拠点にいないようでな、向こうの管理者は根っからの魔術師、ケータイなんぞ持っておらん、基本管理者同士での連絡は定例会合のみなのだ、もしかしたら魔力の原因を探っているのかもしれんな、使い魔を放って伝言しておく』
「そっか、ありがとう源さん。えっと、実はお願いがあってさ」
『……お主のお願い事でろくなことはなかったぞい』
「まあそう言わずにさ、頼むよ」
『それで何が願いだ?』
「魔力ネットワークをちょっと借りたくてさ」
解してない源さんに事情を説明した。
『ほう、ネットワークを使って直接語り掛けるか。つまり直接対決も辞さないと言うことか』
「ああ、まあ動向はネットワークで聞いていてよ、どうせ丸聞こえだと思うし」
『お手並み拝見といこうかの……もしもの場合は分かっておるな?』
「分かっているよ」
最悪の事態に陥った時には町の管理者である源さんが動く、結果がどうあれ町を守るためなら手段を選ばないと言うこと。もしかしたらフォティアを町から追い出す可能性も否定できないだろうな、災いの元を立つことが町を守ることになるのなら迷わずにそれを選ぶ。
魔力、魔術などは現代社会において異物でしかないく理解しがたいもの。それを管理して魔力や魔術を秘匿し、それらが起こす犯罪や災害を防ぎ人々の暮らしを守る管理者たちが作り上げたのが魔平定協会。源さんもその一員で協会により様々な町に魔術師を派遣し、そこを管理させている。魔力、魔術による犯罪を監視して実刑をも許されている。
つまり平和維持機関とでも言おうか。
『それならばよいがな。魔力ネットワークを使わせることは充分な譲歩だ、それを忘れるな』
そして電話が切れた。
「いいってさ」
「あのじじいまた偉そうなことを言ったんだろ」
「そう言うなよ、実際に偉いんだからな。魔術師だってことだけで魔力使いとは格が違うんだからな」
魔術師は魔力使いよりも希少だ、魔力を操作し術式を作り上げることで汎用性に特化したより強力な術を発動させる。俺やあやめさんと違って魔術師は高位の存在、もし純粋な力と力による勝負となったなら魔力使いに勝ち目はない。
魔力と魔術の間における法則がその圧倒的な溝を深めている。
純粋な力の塊である魔力には様々な特性が有る、俺の液状炎やシャルールが使っていた人型炎の遠隔操作、魔力自体が硬質化して物質となったり、自分と同じ模造品を作り上げたりと多種多様な能力を持つ。
一方魔術とは魔力を元に術式、一般的には魔術陣を創り上げ魔力使いが使う力よりも強力な術を発動させる。
魔力と魔術は天地の差と言っても過言ではない、例えば魔力使いが自身の魔力特性により発言させた火の玉と魔力を糧に術式で組み上げた威力も大きさも同等である火の玉を用意する、二つをぶつけ合った場合、魔術は魔力を糧にしているため魔力特性としての火の玉を吸収し術式の火の玉を強化させてしまう。
魔力は魔術の糧、それが法則である。
実際には魔力と魔術を遥かに凌ぐ存在が世界で七人いると伝えられている。現段階ではそちらを警戒する必要はないだろう。
「フォティア、始めても良いか?」
「はい、あ、でも……」
「フォティアからは何も聞いていない、そうしていて欲しいんだろ?」
「はい……ごめんなさい手間を取らせてしまって」
「謝るなよ、俺は助けるって決めたんだ……始めよう、マギア!」
「よし任せろ! じゃあユウヤのけいたいって奴をかせ、それを媒介に使う」
ケータイを渡すとマギアはそれに魔力を込め始めた、なる程、マギアが持っている魔力の特性を利用した通信方法になるのだろう。
物体に寄生する特性を持つ魔力を使っているのか、俺のケータイに魔力を寄生させ魔力ネットワークと繋げられるように調整していると思う。本来の使い方は剣や盾などに魔力を寄生させ魔力による攻撃を防いだり切れ味をアップさせ攻撃に転じたりするのが魔力使いの一般的な使い方だ。魔力使いでも剣とか使う奴がいるしな。
まさかケータイに魔力を寄生させるなんて発想はなかったな、魔力と科学の融合みたいなものだから魔科折衷とでも名付けるべきか。
「よし、魔力を寄生させた。確かでんぱって奴を使って話しができるんだったよな? でんぱを魔力に変えてネットワークに繋げるようにしたぞ、後は話すだけだ」
「ありがとうマギア」
「はっはっは、これくらい朝飯前だ! さあ一発ぶちかましてやれ!」
「ああ! フォティアやるぞ?」
「お願いします」
魔科折衷と化したケータイを使用する、ここいる全員で聞こえるようにして会話を始めた。
「セルモクラスィア家当主マルス・セルモクラスィア、聞こえているか? お前と話しがしたい。どうせ使い魔を町にばらまいて探っているんだろ? 話し合おうじゃないか」
応答なし。本当に聞こえているのか、それとも当主がいないのか。
「名門のセルモクラスィア家なら堂々としたらどうだ、それとも臆したか?」
『安い挑発だ、しかし敢えてそれに乗ろうではないか』
出た、若い男の声、こいつが当主か?
「お前が当主か?」
『いかにも。我が名はマルス・セルモクラスィア、栄光あるセルモクラスィア家現当主だ。臆すとは無礼ではあるが強力な魔力使いであるそなたには寛大に接しようではないか、我が名を呼ぶことを許そう。炎系統の同門としての我が敬意と思ってくれて構わない』
堅苦しい喋り方だな、それに貴族って感じで偉そうだ。
「そいつはどうも。そっちが名乗ったから俺も名乗る、俺は神道ユウヤだ」
『名を名乗り返す礼儀はあるようだ、気に入ったぞシンドウユウヤ、そなたなら我が屋敷に招いてセルモクラスィア家の最上級のもてなしを受けるに値する。アゴーニ、シャルールとの戦闘を覗かせてもらったが珍しい炎だ、それだけではないそなたの戦闘力も中々、ますます気に入った』
「……そいつはどうも」
まさかこいつ魔力主義者じゃないのか? フォティアにそっと確認を取ってみると頭を縦に降った。羽原姉妹の両親と同じように魔力を持つ者が世界を統べるべきとの思想を持った魔力主義者、ならば敵である俺に賛辞を贈ることに納得が行く。奴らは強力な魔力を持つ者を選ばれた種族と思っているらしい、つまり同志と捉えているのかもな。
全く奇妙な連中だな。
「まあセルモクラスィア家の最上級のもてなしって奴に興味はあるが話しを本題に移そうか」
『そなたはせっかちだな、我との会話をもっと楽しんで貰いたい。セルモクラスィア家当主と会話できるとは幸せ者と同義なのだから』
「ま、確かに幸せ者かもな。俺の側にはお探しの可愛い女の子がいるしな」
『そうか、幼女が好みか。我が屋敷に招いた暁には古今東西の幼女を取り揃え世話係に付けさせよう。その者らの扱いは非道でも我は目を瞑ろう』
「よしてくれ俺にはそんな趣味はない。興味があるのは年端もいかない女の子を追い掛け回す理由だ」
『幼女を追う理由か、それを知ってどうする?』
「戦う、シンプルな答えだろ?」
『ふっ、野蛮だな。しかしそれも面白い……フォティア、この会話を聞いているな?』
「は、はい……」
小さな体が震えている、顔面蒼白であの笑顔の可愛かったフォティアの面影が消えている。
『我との約束は覚えているな?』
「は、はい! だ、誰にも口外していません!」
『そのようだな、賢い子は嫌いではない』
喋ってないと何故分かる? もし口外していたのなら必ず分かるようになっている? そんな魔力があると言うのか。
『懸命に耐えた褒美だ、そなたの愛しき者との会話をさせよう』
数秒間が相手別の者が電話に出る。
『おねーちゃん』
幼い子供の声、多分男の子。
「そんな、どうして……アグノス! アグノスなの?」
フォティアの震えた声が悲しみを含む、必死に名を呼ぶ。
『フォティアよ、自分の弟の声を聞き忘れたのか?』
「そんな、見付からないように逃がしたのに……」
『愚かな、シャルールに頼んだのは承知だ、だが我を誰と心得る? 我らの宝物庫には魔道具のコレクションを忘れたか。その中に意思に反し喋らせるものを所有している。最もそなたがシャルールに話したことを忘れさせ忠実に我の命令を守りそなたを追っていたのだがな、滑稽であったぞ』
こいつ、事情は分からないが下衆だってことは分かるぞ。
「あ、ああ……」
絶望に途方に暮れるフォティアは現状の処理が間に合っていない、どうしたらいいのかと手が震えていた。そんな姉に無垢な声が意識を戻させた。
『おねーちゃん、いつかえるの?』
「あ……ぜ、絶対に帰るから、だから良い子でお留守番しているの、いい?」
『うーー、いいこにしたらはやくかえってくる?』
「うん、うん! 絶対に帰るから! だから待っていられるね?」
『うん、わかった、まってる』
「アグノス……ごめんね」
謝罪して涙を流す。
『感動の対面だったな、フォティア、そろそろ……いや、もうゲームは終わりだ』
ゲームだと?
『アゴーニに狩りを楽しませたがもう飽きた、そろそろキーを返して貰おうか』
「そんな、約束が違う……」
『もうお遊びは終わったのだよ』
俺を差し置いて話しを進めるな。
「ちょっと待て、なんの話しをしているんだ、ゲームだとかお遊びだとか!」
『知りたければフォティアに訊くがよい、もう口外しても害はない』
なんだと、フォティアに何かを喋るなと禁止しておいてもうそれが解禁したと言いたいのか、理解しがたいなそんなことをする意味はなんだ? コイツは何がしたいんだ。
「……マルス、お前の行動が理解できない」
『ふっ、理解できないのは知識が足りないからだ、だが恥じる必要はないそなたには魔力がある、それだけで世界の全てなのだよ。そんなことよりもシンドウユウヤよ今のこの世界をどう思っている?』
「何? どう言う意味だ」
『我ら魔力を持つ偉大なる存在、かつて魔力世紀では世界は魔力を持つ者が統べていた、だが魔力、魔術を退け科学なるものに乗っ取られてしまった、腹立たしいとは思わないか?』
「別に思わないね、確かに魔力世紀では魔力や魔術が世界の全てだったかもしれないが今は科学技術が人々の生活を潤している、主役が変わっただけじゃないか」
『……そなたそれを本気で言っているのか? 馬鹿な、高貴たる魔力使いの言葉とは思えないな、魔力魔術こそ世界を稼働させるものにふさわしい。科学など滅ぶべきだ、新たなに過去の繁栄を取り戻し魔力に満ちた世界の再生を望まないのか!』
典型的な魔力主義者だな。だが怒らせてしまったら後々面倒な気がする、諌めるべきなのかと思った時マギアが俺に耳打ちをする。
「ユウヤ、こいつを怒らせろ、こちらが有利になる」
有利になる? どうしてそう思うのか問い掛けようとしたがそれを止めた。
気付きがマギアの意図を察しさせた、ならやってみるか。
「望まないな、魔力世紀が何故終わりを迎えたのかは知らないが滅ぶべくして滅んだ、滅びまた新たな繁栄を迎えるのが人間の世界、つまり自然の摂理だ」
『…………どうやらそなたは魔力使いとしての誇りを捨ててしまったと見える』
「最初からそんなものはない」
『低魔力共と同じ廃れた人種であったか、劣等種めが』
完全に頭に来たらしいな声に怒りが混ざっている、凝り固まった思考では柔軟性に欠けてこちらの言葉なんか届きはしない。
だが火を注ぐことは容易い。
「劣等種でもさっきお前から賛辞を貰ったんだ、それを見抜けなかったご当主様の落ち度じゃないのか?」
『我を愚弄するか、許さんぞ?』
「許さなかったらどうする気だよ」
『この町を吹き飛ばしてくれる!』
怒らせればその言葉を言ってくれると思ったよ、これであの人は黙っていない。
『それは困るのう』
影牢市の管理者長沼源一郎が魔力ネットワークを介して声を発した、源さんが張り巡らせた魔術だ声を出すなんて朝飯前だ。
『誰だ、介入者よ名を名乗れ』
『ふん、魔平定協会から派遣されている管理者の長沼源一郎だ』
『……なるほど管理者か』
『会話を聞いていたが町を吹き飛ばすとは穏やかではないな、その行為に及んだ場合儂は本気で潰しに掛かるぞ、管理者は魔術師が任命されることは理解しているか? そして魔術師を敵に回すリスクも見当は付いておろう?』
これがマギアの狙いだ、相手を怒らせ源さんを自ら出させ相手を不利にした。魔力使いが魔術師を相手にするのは自殺行為と同じ、それ程の差があるのだ。
でもそのことを見抜いて敢えて声を発したのだろうけどね。
『魔術師の力を侮りはしない。だが科学が広まる町を守る魔術師など劣等種よりも愚かだ、聡明さと稀少さを知らしめ世界を統べるべきだ』
『儂にそんな面倒なことをする気はない……これでもこの世界を気に入っているのでな』
『ふっ、思想すら腐ってしまったのか。嘆かわしい、自身の高位なる存在を理解していない愚かな者共め……早く浄化しなければなるまい。フォティア』
「は、はい!」
『明日の正午キーを渡せ、場所は光芽市で一番高い建物だ。来なければ弟の命はないと思え』
「必ず行きます! だからアグノスを殺さないで!」
『それはそなた次第だ、では待っているぞ』
ご立腹した当主の声は去った、しかし今は聞き逃せないことが。
「光芽市の一番高い建物って光芽タワーじゃないか、魔力が集まり忽然と消えた問題の場所」
「ユウヤ、じじいから電話だぞ」
マギアはケータイに寄生させた魔力を解除してそれを受け取り電話に出る。
「源さんもしかして」
『うむ、妙な現象は十中八九あの魔力主義の男が絡んでおるな』
「だろうね、源さんはどうするの?」
『原則儂らは管理する場所が危機に見舞われた場合に動く、隣り街では範囲外だ。だが何もせん訳にはいかん、何を企んでおるのか知らんがこちらにも被害が出る可能性を想定しておかねばなるまい……結果的に向こうの管理者と連絡を取らんと始まらん、儂は急ぎ他の方法も用意て連絡せねばなるまい、では忙しくなった、何か分かり次第連絡する』
「ああ、ありがとうな」
『……気を付けろよ』
通話が終わる。
「……フォティア、大丈夫か?」
今にも張り裂けそうな程の悲痛顔をしていた。
「は、はい……大丈夫です」
ごめん、辛そうなのに訊かなければならない。
「こんな時にだが事情を話せるか、無理には訊きはしないから」
「いえ、話せ……ます、もう時間がない……ユウヤさん、マルス様は街を破壊するつもりなんです!」
「街を? 落ち着いて、順番に話してくれ」
「はい……ある日のことでした、わたしがセルモクラスィア家でディーナーとしての仕事で屋敷の掃除をしている時に当主様とアゴーニさんの会話を聞いてしまったことから始まりました。話しの内容は科学技術の結晶である都市を破壊して世界にもう一度魔力世紀に引けを取らない世界を創り上げるための足がかりにしたいと。そして最初の実験を終えたと言ってました」
「最初の実験?」
「はい、セルモクラスィア家の宝物庫には魔力世紀から代々受け継がれて来た魔道具のコレクションしてあるんです、その中には街を破壊してしまえる道具があるらしくてそれを実験したらしいんです、その実験でどこかの都市が消滅したと話していました」
ちょっと待て、確か数日前にテレビ番組のニュースでどこかの都市が跡形もなく消え去ったと報道されていたぞ、その時は信じなかったがあれはマルスが起こしたこと?
「わたしは、都市を破壊させる魔道具エクスプロズィオーンを起動させるキーを盗んで逃げたんです」
「……ならフォティアは主人に逆らってまで止めようとしたのか」
「あ、わたしはそんな志のある人間じゃないです……最初はわたしには関係のないことだって当主様の話しを忘れようとしました……でも、その夜たった一人の家族であるアグノスの顔を見ていて、もしアグノスがいなくなってしまったらって思ったら急に怖くなって……もしも消えてしまった都市に弟がいたならって想像しただけで震えが止まらなかった、そんな怖い思いをわたし以上に感じてしまった人がいる、それがもっと続くと思ったから……止めようって決意したんです。仲が良かったシャルールに全部話して協力して貰ってエクスプロズィオーンを発動させるためには起動させるキーがあることを知ってそれを盗み出したんです」
「そのままこの町に来たのか」
「いえ、違うんです。シャルールに弟を任せて逃げたんですけど当主様に気が付かれてわたしは捕まってしまって、もうダメだって思ったら……当主様が暇潰しとおっしゃってあるゲームをわたしに提案したんです、エクスプロズィオーンのことに関することを一切誰にも口外せずにキーを守り追ってから逃げ切れば都市の消滅は止めるとおっしゃったんです……だから話せませんでした、ユウヤさん今まで話せなくてごめんなさい!」
深々と謝罪する。
「頭を上げてくれ、フォティアは悪くない……悪いのはマルスの野郎だ、嘘を言って騙していたんだ、罪悪感を感じる前に怒ってもいいんだ」
「ユウヤさん……」
暇潰しでフォティアを瀕死まで追い込んだのか、マルスめ。
「ユウヤ頭を冷やせ、冷静にならないと敵の分析に支障が出るだろ」
「分かっている、分かっているが……」
「わたくしだって頭に来ているんだ、一発ぶん殴ってやりたいぞ。そのためにも今やるべきことをするんだ」
「……ああ」
確かにその通りだ今は冷静に、この怒りは後で返してやればいいんだからな。
今の話しで分からなことがあった、それは暇潰しで行われたゲームについてだ。魔力の世界を復活させたいと象徴たる都市を破壊したい、つまり魔力主義の悪癖を最大化させた目的なのだからエクスプロズィオーンの起動キーを盗まれたのなら発狂して全力で取り戻そうとするはずだ。なのにキーを持たせ逃げ回らせるとは一体どうしてだ、それにフォティアとの会話で口外しても害はないと発言した、ならば何故喋らせないようにしたのか。
本当に気紛れでゲームをしたのだろうか。
「……フォティア、そのエクスプロズィオーンってどんなものなんだ?」
「えっと形状は知らないのですけど魔力を集めて破裂させる爆弾みたいなものだって話してたと思います」
「都市を消滅させる爆弾、核爆弾のようなものか。それに光芽タワーで起きている現象とキー引渡し場所の一致、つまりエクスプロズィオーンは光芽タワーに設置されていることになるな。これは不味い、もしキーを渡してしまったらそれこそ終わりだ」
光芽市が地図から消える。
「エクスプロズィオーンの効果範囲はどれくらいだ?」
「えっと、えっと、そこまでは分かりません……ごめんなさい」
「あ、悪い、強い口調で言ってしまったな、フォティアは謝らなくていいんだ」
おそらくだが都市を破壊してしまうのだから規模は巨大なのは確実、威力は未知数だがこれは影牢市にも影響があるかもな。
俺たちはどう動けばいいのか、それが今の問題だな。素直に出向いてキーと人質を交換する、これは論外だろう。向こうが素直に人質を返すとは思えないし肝心のキーを渡してしまったらそれこそアウトだ、エクスプロズィオーンを発動させられて街も俺達すら消滅してしまう。
「ユウヤ、キーを破壊してしまったらどうだ? そうしたら爆弾は起動できないし」
「……確かに壊してしまえば街を破壊されなくなる、ただその場合人質交換の時に困るだろうな、キーと交換しなければならないが向こうが本当にそれに応じるかは分からないが」
「ならキーの偽物を用意したらどうだ、先ず破壊の驚異を除去して後は人質を助けることだけに集中できるぞ?」
それもありかもしれないな、キーらしきものを用意して交換の時にどうにかして助け出す方うが酷い話しだが被害が少ない。試す価値はあるかもしれないな。
「フォティア、そのキーって奴は今どうしているんだ、よければ見せて欲しいんだが」
「……あ、あの、実は一度捕まった時にキーを渡してしまったら大勢の人が死ぬと思ったから咄嗟に口の中に入れて飲み込みました……ごめんなさい、だから見せられないです」
「そっか、確かに同じ状況に陥ったら俺もそうするかもしれないしな、フォティアの判断は間違ってないよ、謝るな……」
「そう言って貰えるとちょっとだけ気が楽になります……あの、キーの形状は球状の宝石でとても小さいものでした」
「そうか……教えてくれてありがとう」
形状を知ったとしても人質と交換はフォティアを渡すことになる、キーが体内にあるのならばフォティアを殺してでも取り出すだろう。それだけはさせない、殺させない、殺させない殺させないコロサセナイ。
落ち着け、また俺の悪癖が表に出てしまうだろうが。
「俺はもう一度源さんに連絡を入れて今の情報を伝える、フォティアは不安だろうけどもう休んだ方がいい、明日は忙しくなりそうだからな」
「はい……」
「大丈夫だ、必ずフォティアも弟も助けてみせるから、だからそんな悲しそうな顔をしないでくれ」
頭を撫でた、少しでも痛みを和らげたかった。大切な人を助けられないもどかしさと悔しさを俺は知っている、無力なことを呪う日々の辛さを体中に心の中に刻んでいるのだから。
「フォティアは笑った顔が一番似合う、だから笑っていろ、俺が笑わせてやるから」
家族を守るために戦う少女は瞳に溜める涙にどんな感情を秘めたのか、それはぎこちなくも柔らかな表情に答えはあった。
「ユウヤさん、ありがとう……ありがとうございます」
「待て待て、わたくしだって笑わせてやるぞ、ほらハグしてやる」
「わっ! 苦しいです……でも温かいです」
大きく動き出した事柄に一抹の不安が過ぎるがもう泣くだけの子供じゃない、俺には力があるのだ忌み嫌われた魔力が。それに一人じゃない、少女を優しさで包む最愛のパートナーが側にいてくれるなら俺はどこまででも羽ばたいていける、誰かを救おうとすることはおこがましい行為なのかもしれない、それは知っている。
俺はそれ以上に愚かだ、心に傷に突き動かされているだけの壊れた人形と同じだろう。だが最後まで自分の意志を貫く、歪なものであったとしても決めたことだ。
「マギア、明日は力を貸してくれ」
「何を当たり前なことを言っている、わたくしの体も心も何もかも全てがユウヤのものなのだ、願いさえも。わたくし達は二人で一つなのだから」
「ああ、そうだな……俺の体も心も何もかも全てマギアに捧げたんだからな」
時刻は止まることなく進む、不安を道連れに。
だが不安は必ずしも成就するとは限らない。