第二章 『少女の黙秘』
鳥類が奏でる鳴き声は朝が来たと騒いでいるのか、それとももう朝が来てしまったのかと嘆いているのかのどちらなのだろう、二択の疑問に徹夜明けの頭では解決する配線は断絶していた、もう日の出かと溜め息混じりに安堵するがやはり眠いとかったるさが横柄な顔をするのがムカつく。
あれから少女を抱えマギアに敵が来てないか調べながらアパートに戻り手当をしたがまだ油断できないと現時点まで見張りをしていた。
傷の手当はなんとかなったが体温が低下していたからこのままではまずいと思ったが説明しづらい状態の少女を病院に運ぶ訳にも行かず、仕方ないのでマギアに頼んで人肌で温めるのが有効なのを知っていたから少女と添い寝してと頼んだのだ。
俺の後ろでマギアと少女が裸で抱き合って寝ていると思うとなんだか恥ずかしい気分になる、別にやましいことなんか考えてない、本当だぞって自分自身に言い聞かせる虚しさは体感したものしか分からないかもしれないな。何を馬鹿なことを考えているんだ、少女の生死に関係する問題だというのに不謹慎な。
「あ……」
少女の服をどうしようか、着ていたものは傷だらけでもう着られないしマギアの服は大き過ぎるだろうし俺のなんか論外だし、小柄な体型といえばお隣りのつぼみちゃんくらいか。後で服を借りに行こうか、事情はどう説明するかな。
「んーーそれが問題だな」
「何が問題なんだ?」
とマギアが問い掛ける、どうやら起こしてしまったらしい。
「大したことじゃないさ。それより悪い起こしたな」
「いや、ちょうど起きたところだ」
「ならいいが……で、その子の様子はどうだ?」
「だいぶ体温が戻って穏やかな寝息を立てている、これならもう大丈夫だ」
「そっか……良かった」
本当に良かった、死なせなくて良かった。
「それにしてもこの娘愛らしいではないか」
「まあ確かに可愛い子だな」
将来は美人になるだろうな。
「うむ、こうやって肌を晒し同じ布団に入っているとなんだか、いけない気分になりそうだ」
「ちょっと待て。何変態ちっくなことを口走ってるんだこの痴女!」
「どうだユウヤ、この娘が眠っている間にあんなことやこんなことをしないか?」
あ、あんなことやこんなことだと、それってどんなことだよ。
「……ユウヤ、もちろん冗談だぞ? それは理解しているだろうな?」
「あ、ああ、当たり前だろ!」
「ほう、挙動不審さを露呈させるとはまだまだ未熟だな……そうかユウヤのストライクゾーンは意外と低いのか、さすがにわたくしも引くぞ」
「ば、馬鹿野郎! 俺にそんな趣味はない! 俺が想像したのはマギアが……」
あ、やばい変なことを言ってしまった。
頬を赤らめニヤつく痴女がこちらを面白そうにこちらを眺めてやがった。
「そうかそうか、わたくしでいろんなことを想像したのか、全くユウヤはエッチだな、そんなことをしたいなら早く言えばいいのだ、わたくしはいつでもどこでも準備は万端だからな!」
「なんの準備だよ!」
「言って欲しいのか?」
この野郎これみよがしに攻めてくるじゃないか、度が過ぎた悪戯は悪意としか思えないぞ。
「マギア、めちゃくちゃ楽しそうだな」
「はっはっは、当たり前だろうユウヤを手玉に取る快感は蜜の味だからな!」
こいつ女王様って呼んでやろうか。
「はあ、まあ冗談はここまででいい」
「え? 冗談だったのか? わたくしは意外と本気だったんだけどな」
「……この万年発情期女め」
「ほ、褒めても何もないぞ!」
「誰がいつ褒めたよ」
頭痛くなりそうだ、気分転換に顔を洗って朝飯の準備でも始めるか。
「マギア今朝は何か食べたいものあるか?」
「ど、どうした、いつも朝は味噌汁と米だと言ってそんなこと訊いたことなかったのに」
「……まあ昨晩はマギア頑張って魔力探知をしてくれたし、その子の手当も添い寝もしてくれたし、朝飯くらい好きなの食わせてやっかなーーって思っただけだ」
「ユウヤ……」
言ってて恥ずかしくなって来たぞ、いつもやらないことをすると調子が狂うな。
「ああもう! 照れたユウヤ可愛くてキュンキュンするぞ! 添い寝していなかったら今直ぐ押し倒していけないことをするのに!」
「一生布団から出るな」
朝から元気な奴とある意味感心して顔を洗い朝食を作ることにした、改めて食べたいものを聞き出すとフレンチトーストとサラダとオムレツに焼いたベーコンを所望したので朝は洋食に決定、パンは確か買い置きがまだあったはずだと材料を確認すべく冷蔵庫を開けると卵を発見し牛乳とベーコンが言い合わせたようにそこにあったから希望通りにできるな。野菜はレタスとミニトマトしかないや、これは我慢してもらうか。
先ずはボールに卵を混ぜてそこに牛乳と砂糖を入れ食べやすく切った食パンを浸す、染みるのを待つ間に別のボールに食べやすくちぎったレタスを水に入れる、こうすると時間が経った野菜に水分が行き渡ってシャキシャキ感が復活するとテレビでやっていたので実践する。
さて次は先程浸しておいたパンをフライパンに油を引いて焼く、焦げ過ぎないように加減するのが難しい。その次はベーコンとオムレツを作る。オムレツなんて久し振りだから少し失敗してしまったがそこは目を瞑って貰うとしてベーコンはカリカリにできた。レタスとミニトマトを盛り付けて朝食の完成だ。完全に男の料理だから繊細なものは作れないがある程度は形にできると自負している。
「朝飯できたぞ。その子と様子はどうだ?」
「美味そうな匂いだな。まあそろそろ大丈夫だと思うが……起こしてみるか?」
「まだ寝かせた方がいいかもしれないな、無理はさせられないし」
「案外ご飯だって耳元で囁けば起きるかもしれないぞ」
「そんな馬鹿なことがあるかよ」
面白がってマギアは本当に実行しようと少女の耳元に口を近づける。
「おーーい、朝食だぞ、ご飯だぞ」
「マジでやるなよ」
とその時。
「ごひゃん?」
半目を開け少女が本当にご飯の単語に釣られて少し覚醒した、こんな面白展開があるとはこれは見ものだと思ったのは罪深いだろうか。
ま、結構うるさくしてたから少し起きてたかもしれないけどな。
「この娘面白いな。どれもう一回……ご飯食べるか?」
「んんっ……ごひゃん……たべりゅ……」
少女は起き上がろうとしたが自分が怪我していることを寝ぼけて忘れており痛みが走ったらしく完全に目を覚ました。髪と同じ青い瞳が印象的だった。
「痛っ……あ、あれ? ここはどこ……?」
見慣れない部屋に不安を感じたのか身を縮め表情を不安に染める、それから同じ布団に入るマギアと視線が合うと固まる。
「…………え? は、裸の……女の人? え?」
「起きたか小娘? どうしたきょろきょろして、まさか昨日のことを覚えていないのか?」
「え? え? あ、えっと……き、昨日……ですか? えっと……確か……」
「うむ、昨日わたくしと一夜を共にしたのだ」
場が凍り付いた。少女の顔が見る見る内に血の気が引き顔面蒼白に、あの馬鹿ニュアンスは間違ってはいないが言葉を選べ。
「い、一夜を共にって……貴女とわたしがですか?」
「ああそうだ。わたくしが一晩中肌を重ねていたのだ」
「はうあう……一晩中……肌を重ねて……裸……わたしも裸……」
「馬鹿! 言い方がおかしいだろうが! あ、あのだな……」
説明しようとしたが今の状況で男が現れたのが悪かったのか少女の顔から生気が抜け出したかのように真顔になり。
「男の人……」
彼女の中でバラバラの単語が妙な形で構築されたのは誰の目から見ても明らかだった。直後、少女が悲鳴を上げたのは言うまでもない。慌てて事情を説明しマギアにげんこつを食らわせ謝罪させるとどうにか事情を飲み込んでくれたらしく一応おとなしくなった。
「……そ、それじゃあわたしはこの女の人と……その、そういうことをしてないんですね?」
「絶対にそれはない、本当だ」
「ちぇ、ちょっとふざけただけじゃないか、げんこつは酷いぞユウヤ」
「少しは反省したらどうだ、話をややこしくしやがって!」
「ややこしくした覚えはない、ただこう言ったら面白いだろうなーーって思っただけだ!」
「威張って言うな! それから面白くしてどうするよ、冷や汗かいたじゃないか」
「汗くらいなんだいっぱい出せ、ケチケチするな!」
「ええっ! 俺ケチだったのかよ! て言うか服を着ろ服を!」
「なんだもう着た方がいいのか? ずっと眺めていたいと思っていたが」
「だ、誰が思うか! いいから着てくれ!」
「しょうがないな……」
いつもの調子で言い争っていると堪えていたものを我慢できなくなったらしく少女が肩を震わせて程なく決壊した。
「ぷっ……あはははっ! ひっひたい、ぷぷっあははっ!」
「えっと、笑ってるのかそれとも痛がってる?」
「り、両方です……ぷっぷ、あははっ、いたたた……」
俺たちは顔を見合わせた。
「そんなに面白かったか俺たち」
「知らないぞ、いつも通りの日常だったはずだが?」
「そ、そうだな、いつも通りだったよな?」
そのいつも通りが落とし穴で他の人からは別に映るのだ、それに全く気が付いていないのだから結構な馬鹿なのかな俺たち。何はともあれ案外元気そうな少女に安堵を覚えると空腹だったことを思い出しもう食事の用意もできているから朝食を取るよう促す。
「元気そうで良かったよ、えっと先ずは自己紹介でもしておくか。俺は神道ユウヤ、でそこで馬鹿なことを言っているのがマギアだ」
「む、どんな紹介の仕方だもう少しわたくしを敬ってみたらどうなんだ」
「敬うに値しないことばかりの言動をどうにかしたらな」
「むうう、今に見てろいつかギャフンと言わせてやるぞ」
「楽しみに待ってるぞ。おっと話しが逸れてた、よかったら君の名前を教えてくれないか?」
「あ、はい、わたしはフォティアです。フォティア・イーグニス、フォティアとお呼びください」
「フォティアか、いい名前だね」
「ありがとうございます」
さてと、ここから重要なことを質問しなければな。
「フォティア、話せることだけでいいから質問に答えてくれないか?」
すると表情は陰りを帯びる。
「…………はい、話せることだけなら」
「ありがとう……じゃあ先ずは、そうだな状況説明を先にした方が話しやすいかもしれないな。昨夜俺達は君を橋の下で発見した、川から上げて救助しようとしたら変な男が現れた、セルモクラスィア家のディーナーと名乗ったアゴーニと言う奴だ」
その名を聞いた瞬間にフォティアの肩が反応する、知っているということだろう。ならばセルモクラスィア家となんらかの関係があると思っても差し障りはないか。
「そいつは魔力使いで君を保護すると言って来た」
「え、魔力使いを知ってるんですか? ……ではお二人は」
「ああ、俺も魔力使いだ……話を続けてもいいかい?」
「あ、ごめんなさい続けてください」
「俺は自分の魔力でどうにかアゴーニを退けて君を家まで運んだんだ……現在ここが襲撃を受けないことを見ると見付からずに帰れたのか向こうはこちらを監視しているのか、どちらかは分からないが君は非常に危険な状況だってことは理解している?」
「……はい」
「じゃあここで質問するね? どうして追われていたんだ?」
一時沈黙が部屋を支配した、不安げにフォティアは両手を組み何を話すべきか吟味しているようだった。
「……話すのは難しい? 話せないことは無理に話す必要ないよ」
「えっと、あの、ご、ごめんなさい……お話し、できません……助けて貰ったのに、保護して貰ったのに話したいけど話せません! ごめんなさい!」
全身を震わせて頭を下げた。つまりなんらかの事情で隠す必要がありそれをセルモクラスィア家が狙っていると考えた方が妥当か。話したいけど話せないか、黙っていたいのならそんなことを言わなければいいのに。でもこの子は正直者かもな、悪いようには見えない。
「君は優しいな、隠したいことがあったら普通は話したくても話せないなんて言えないよ、そう言ったのは申し訳ないって思っているからだろ? それは君の優しさだ。分かった、この件は無理には訊かないから安心してくれ……でももし話してもいいと思ったならその時に話してくれ、今はそれでいいかい?」
「は、はい……えっと、あの、どうして助けてくれるんですか? わたしは見ず知らずの他人です、それに関わったらお二人を不幸にするかもしれません……なのにどうしてですか?」
理由なんて自分勝手なものだ、本当はフォティアの抱えている問題なんかどうでもいいのかもしれない、俺は彼女を、いや女を死なせたくないだけだ。たったそれだけのエゴを突き通すために君を助けた。これは贖罪なのかもしれない、助けられたかった変わりに助ける。
俺の心は醜い。
「助けたいと思ったから助けたんだ……助けたいと思うことに理由なんているか?」
偽善者の言葉を借りた。ああ、反吐が出る。
「……でも、危険な目に合うのは避けられないかもしれないです」
「大丈夫だって、ほらアゴーニが襲って来たけど生きてるだろ? 俺だってそれなりに戦えるし心配しないでくれ」
嘘つきの言葉を信用してくれるだろうか、その答えを聞くのを恐れ話題を逸らす。
「それよりもお腹空いてないか? 話しばかりで辛いだろ、朝食も準備できてるし食べよう」
「え、いいんですか?」
「ああ、子供が遠慮するもんじゃないさ……とその前にマギア、フォティアに何か着るものを貸してやってくれ」
包帯とガーゼだらけの姿じゃ恥ずかしいだろうし。
「それはいいが下着はどうする? 小娘の服はボロボロでも下着は確かに無事だったが洗濯して干してるぞ?」
「えーーと、マギア後で買って来てくれ」
「分かった、ならわたくしのTシャツを着ておけ」
「は、はい、ありがとうございます」
マギアが渡したのは少し大きめのTシャツで見ようによっては少しブカブカのワンピースだ、何も着ないよりはマシだがちょっと着心地が悪そうだな。食事の配膳を整え三人で食卓を囲む。
「じゃあ食べよっか、頂きます」
「頂くぞ!」
「あ、ご馳走になります」
どうも箸に慣れていないようなのでフォークを用意してみた、それを掴み恐る恐るオムレツを口にする、すると開花したように笑顔を咲かせた。
「お、美味しいです!」
「ありがとう、たくさんあるからいっぱい食べていいぞ」
「はい!」
「んんっ、さすがはユウヤ今朝も実に見事な食事だ、褒めてやるぞ」
「ありがとうよ、たまにはマギアも作ってくれると嬉しいけどな」
「む、料理は面倒臭いから嫌いだ。食べる方が好きだぞ」
誰でもそうだろう食べるだけなら楽だしな、しかし勿体ないなマギアはがさつそうに見えて実は料理の腕はプロ並みなのだが今の言動の通り面倒臭がりなので滅多に食べられない。確実に食べられる日は俺の誕生日くらいかな、その日だけはやる気満々となって腕を振るう。
要は気まぐれ猫だな。
「な、なんだわたくしを見ているが顔に何か付いてるか? そんな情熱的に見詰められると発情してしまうじゃないか」
「ばっ、子供の前で何言ってるんだ!」
そっとフォティアの様子を伺うと平然と食事を続けていた、俺の視線に気が付き悟ったようににこやかな表情を浮かべる。
「もうわたしは子供じゃありません、そう言った冗談は許容範囲です」
おお、しっかりした子供だ。
「む、わたくしはいつでもどこでも本気だぞ?」
おお、ダメな大人だ。
「……分かった、分かったから黙って食おうなマギア」
「ん? よく分からんがユウヤそう言うなら黙って食うぞ」
なんかフォティアの方が年上に思えてしまうな。そんなマギアよりも精神年齢を凌駕しているフォティアが俺らを交互に眺めてとある疑問を投げかけた。
「あの、神道さん」
「ユウヤでいいよ」
「あ、はい。えっとユウヤさんとマギアさんってご夫婦なんですか?」
「ふっ、いい質問だな小娘、わたくしとユウヤは夫婦以上の存在なのだ! 聞くがいい、わたくしの体も心も何もかも全てユウヤのものだ。そしてユウヤの体も心も何もかも全てわたくしが所有する、二人で完全なんだ」
「二人で完全……ふ、深いお言葉です!」
その話しを聞いているとちょっと恥ずかしい、マギアは人前でよく平気で恥ずかしいことを言えるなとある意味感心してしまう、こっちは二人きりじゃないと言えないと言うのに。
「中々に分かっているな小娘、気に入ったぞ」
「ありがとうございます」
照れるフォティアは子犬みたいで可愛いな、素直な子のようだし尻尾でも振ってお手とかさせたら似合うだろうな。
うん、今のはちょっと危ない思想になりそうだったので心の奥に封印しておこう。
「……ユウヤ、今エッチなこと考えてなかったか?」
「なっ、何言ってんだそんな訳ないだろ!」
「む、やっぱりストライクゾーンが低いんじゃないのか?」
「スト……? えっとどう言う意味ですか?」
「マギアが言うことは全部妄言だ! 何も信じない方がいいな! あはははっ!」
「ユウヤ、本当に変な趣味に目覚めてないよな?」
悲しそうな目でこっちを見ないでくれ、虚しくなるから。
楽しい食事を終えてフォティアの着替えをマギアに買いに行かせることにした、子供だと言え女の子には変わりがないので男の俺が下着を買いにはいけないし彼女自身に行かせるのはまだ安全だと証明された訳ではないので外出は論外。ならば女性で自由に動けるマギアに行って貰うのが一番無難である。その間フォティアの警護だってできるし一石二鳥だな。
「と言う訳で頼むな!」
「それは構わないが……わたくしの趣味でいいんだな?」
「……なるべく趣味と真反対がいいと思うが?」
「え? マギアさんの趣味ってどんなのですか?」
マギアの趣味は淫靡な下着などを好む、黒い下着はもちろん殆ど透けているものやもはや下着の概念を疑いたくなるような異質なものなど多種様々だ。そんなものをフォティアに装着させるなど教育上よろしくない。
「うーーん、刺激が強すぎるって感じかな」
「刺激……お、大人の下着ですね」
真っ赤な顔をして何やら興味津々だがそれはあまりよろしくない展開が未来に待っていそうなので念を押して趣味とは真反対のものを購入するように釘を指す。すると遊び心が足りないなとの捨て台詞を吐きながら出撃して行く。ああ、もの凄く心配だ。
「あの、色々と申し訳ないです」
「気にするな、俺が好きでやってることだから……それよりもまだ傷痛むんだろ?」
「えっと少しだけです、大丈夫です」
「無理はするな、ほらもう少し寝ていろって」
少し迷って俺の指示に従うらしい。
「じゃあお言葉に甘えます」
布団に入り数分も経たない内に微睡みに落ちた、やはり無理をしていたんだな。
こんな小さな体躯に何かを背負っている、きっと苦労しているのだろう。それに子供が申し訳ないってらしくない台詞を言わせてしまう環境を簡単に受け入れているように感じた、わがままだって言っていいのに、その姿は自分を押し殺しているみたいで息苦しい。昔の俺が目の前にいる、そんな錯覚が酷く気分を害した。
俺は自分のエゴを押し付けて助けたとしたら、果たしてそれはこの子のためになるのだろうか。勝手に助けるからには償いとしてフォティアを幸せにしたい。狂っているのかな俺は、それでも関わってしまった責任を放置したりはしない、エゴを押し付けたのならエゴを貫く覚悟と決意を最後まで持続させる。
狂った感情でもその筋だけは通す、そう決めている最初から。こんな生き方はいつまで続くのか、一生そうやって死んで行くのか。それでも構わない、マギアが側にいてくれるなら俺は地獄に落ちたとしても笑っていられる、俺の心を救ってくれたのは彼女なのだから。
思考巡りをしながら窓に上映された空を捉えた、今日は曇り一つない晴天だと気分を良くして飽きずに凝視していると影が指す。どうやら昔からの相棒が訪れたらしい、全く気紛れな奴だな。窓を開け来訪を歓迎する。
「よお帰ったか、もしかして腹でも減ったか?」
問い掛けに相棒は口を開き話す、いや鳴いた。
『ニャ』
「なんだ愛想無いな、もう少し愛らしくできないか?」
また短くニャと鳴いてアホらしい、そう言った気がした。こいつは俺が小さい頃に知り合って現在も交流がある相棒の黒猫だ、名前はクロ、なんの捻りもないありふれた名前だが考えたのが幼い頃なのだから勘弁して欲しい。毛並みも瞳も何もかもが真っ黒だったからクロ、我ながら単純である。ちなみにメスだ。
「猫缶どれ食べる? かつお味か?」
そんなものが食えるかと言わんばかりにそっぽを向く。
「そっか、じゃあさんま味、どうだ?」
やれやれと溜め息を付く。
「これも嫌か? じゃあまぐろ味」
すると早くよこせと前足で地面を数回叩く。
「……贅沢な猫だな」
クロ専用の小皿にまぐろ味のキャットフードを入れてやるとご苦労と鳴いて食べ始めた、横柄の化身と名乗っても差し障りはないがこいつを嫌いには離れない。こんな態度をしているがたまに俺が胡座をかいているとその上に乗っかって体を丸めて眠るんだ、そんな感じで稀に甘えてくるから可愛いんだよな。いつもなつれない態度なのに虚をついて来るからいいね、動物、特に猫が好きだからこの一時は心が安らぐ。
「やっぱりクロの毛並みはいつ見ても綺麗だよな、それに美人顔してるしオス猫が放っておかないだろ?」
こちらを一瞥したクロは興味なさげに視線を戻した、もう少しリアクションしてくれると嬉しいのだがな。ご飯を食べ終えるとじっとこちらを見詰めてからゆっくりと歩き出し俺の膝上に乗っかってリラックスし始めた、体を撫でてやると喉を鳴らす。どうやら甘えているらしい、なんだよさっきまで素っ気なかったのに。可愛い奴め。
しばらくクロと触れ合っているとマギアが戦利品を持参して帰って来た。
「ただいまユウヤ、ちゃんと趣味と真反対の下着と着替えを……って、何をしている!」
「おかえり……何ってクロと触れ合っているだけだぞ? どこか変か?」
「当たり前だ! ユウヤの上に座ってなでなでなんてわたくしだってされたことないぞ!」
自分と猫を比較してどうする。
「この猫ちくしょうめ、わたくしの下僕のくせに主人をなんだと思っているのだ!」
気持ちよさそうにくつろいでいたクロだがマギアの登場で不機嫌になってしまった、こいつら仲が悪いからな。
「どけ猫め、そこに座るのはわたくし以外有り得ない!」
『フーー!』
毛を逆立て威嚇し合う一人と一匹、一触即発とはまさにこのことで間近でその現象に遭遇するとはラッキーなのか不幸なのか。
「ちょ、お前ら喧嘩するな、フォティアが眠っているんだ静かにしろ怪我人なんだから」
怪我人との単語が効いたのかマギアとクロの闘争心が沈静化して一時的な平和が訪れるが多分こいつらの蟠りを解決しなければまた再開されるだろう、何が気に入らないのか分からないな、仲良くしてくれるとこっちも喜ばしいのに。
今の騒ぎで寝られないのではないかとフォティアの様子をそっと確認してみたが深い眠りのようで心配ないらしい、追っ手から逃げて体も精神も疲弊した影響が強く反映されていると考えた方がいいだろうな。
さてと、マギアも帰って来たことだしここは任せて源さんに会いに行くかな。
「マギアちょっと留守番頼むな、俺は源さんのところに行ってくる」
「セルモクラスィア家を調べてみる気なのか?」
「ああ、向こうの情報は殆どないからな、だから独自で調べないと対処のしようがない」
「そうだな……わたくしの知っている情報は炎の魔力使いの一族で名門、そんな程度だ」
「情報が少ないな、追っ手も一人だとは考えにくいしセルモクラスィア家の総意での追撃なのかそれとも極一部の犯行なのか」
圧倒的に情報がない、向こうも俺たちのことを異質の炎を操る魔力使いとして認識しているだけだと思っていいだろうがこちらを調べている可能性は否定できない。こちらも調べようとしているのだから。
何はともあれ情報ならば源さんに訊いた方が早いだろう。
「行ってくる」
「分かった、小娘は任せておけ……ただ気を付けて行くんだぞ特に……あの孫娘に色香でたぶらかして来たら誘いに乗るんじゃないぞ、女は魔物なのだ」
「……シリアスな雰囲気をぶち壊すな、それからえいなちゃんはそんな子じゃないぞ」
との捨て台詞でさっさと外へ、きっと女性が絡むとムキになるから突っかかって来るのですぐに退散した訳だ。帰ってからが怖いがな。出て来る時に時計を確認したら十一時五分前だったから早めに行かないと昼食を取っているかもしれないな源さん、自称常識人なので食事時に訪ねると不快になって扱いづらくなるからそれは避けたい。奴らに見付かる恐れがある大通りを回避して身を隠しながら小道を利用して細心の注意を払い移動した。
少し急いで十一時半頃にバイト先でもある古本屋へやって来れたので中へ入るとえいなちゃんが店番をしながら読書に没頭している姿があった、彼女は読書家と言う訳ではないのだがあまりにもお客が来ないので店の本を読みあさるしか暇潰しはない、変な話しだけど。読書中だから声かけづらいがこっちも急ぎの用だから申し訳なく名を呼ぶ。
「えいなちゃん」
「え? あ、神道くんこんにちは、今日バイト入ってたっけ?」
「いや今日は休みだよ……ちょっと源さんに用事があってね、源さんいる?」
「うん書斎に籠って何かしてるみたいだよ」
もしかして昨日の件で独自に何か掴んでいるのか?
「ちょっと上がらせてもらうよ」
「いいよ、あそうだ用事が終わったらおじいちゃんにお昼早めに食べるように言ってね? 午後から友達と待ち合わせしてるから」
「分かった、伝えとくよ」
店内の奥には自宅に通じている玄関があり直ぐ目の前に少し急な階段を上って行くと自宅スペースに繋がっている、木材で構成された廊下を進み一番奥まで進むと源さんの書斎を確認できる、基本和をテイストとして構成されている自宅に違和感が割り込んだような洋式の扉を設置されていた、もちろんこの中もそれに準じている。
ノックをして来訪を伝える。
「源さんユウヤだけど」
すると中から入れと短く返事が返って来た。
「お邪魔します」
扉を開放すると洋風にまとめられた室内が露呈した、机には何やら書類やら古書が山のように積み上げられそれらと睨めっこする源さんの姿は話し掛けづらいと思った、左右の壁には下の店にも引けを取らぬ本がびっしりと並ぶ。しかしここは埃っぽい、えいなちゃんですら入室を拒んでいるため清掃が行き届いていないが入れる訳には行かない事情もあるから我慢するしかない。
窓一つ取り付けてないここは天井の蛍光灯で光を得ている、本人曰く太陽の光がこの書斎に入るのは好ましくないらしい、おそらくは源さんのサイドビジネスにも関係しているのだろうけどね。
「そろそろ来る頃だと思っておったぞ神道ユウヤ」
「……ってことは俺が知りたいことも分かってるよね?」
「当たり前だ、この町を管理しているのは誰だと思っておる?」
「そんなの魔術師の源さんだってことは分かってるよ」
「ふん、そこは弁えているようだな」
「そりゃあ源さんの御陰でマギアと暮らしていける訳だし感謝や尊敬だって持ってるんだ」
「それならいいのだがな……儂とてお主のところにいる外人娘には礼儀知らずで大暴だが、尊敬と畏怖を持っておるぞ、彼女は『例外』なのだからな……話しが脱線したな」
俺とマギアの事情を知っている数少ない人だ、頑固な人だけど優しいことは知っているし世話焼きなんだよな。ま、その恩恵が現在の暮らしと言える。
「じゃあ単刀直入に訊くよ、昨日のこととセルモクラスィア家のことについて」
「ふむっ、ならば順番通りに教えてやるか……昨日の午後一時頃町中に放っていた魔力ネットワークに計三人の魔力使いらしき人物の侵入を確認し使い魔を派遣して儂の脳内に映像を飛ばして観察した、その者達には微弱ながら魔力を感知したのでな、それぞれに使い魔を尾行させていた」
三人の魔力使いらしきものか、基本的に魔力を使える者が力を行使して初めて魔力を感知できるのだが探知能力が高い者か魔術師なら微弱に出ている魔力を感じ取れる。中にはその微力な魔力を隠蔽できる者もいるらしい。
俺はその能力には疎い方だから相手が力を使うまで気が付かない、逆にマギアは探知に優れているから本の微弱なものも探知できる、フォティアを橋の下で感じていたのがその証拠か。 ならばフォティアも魔力使いの可能性があるな、魔力使いを理解して俺と会話をしたのも証拠になる、つまりフォティアが町に入った魔力使いらしき人物の一人、そしてもう一人はアゴーニなのは明白。最後の一人はまだ姿を見せていない、奴は負傷したからもう一人が二人分も頑張って俺らを探しているってとこか?
だけどこれからまだ町に侵入してくる可能性はゼロじゃない、その内増援を呼ばれたら不利になるだろう。ここまでは俺の仮説にしか過ぎないがあながち間違いではないかもしれない。
そこは源さんに訊いてみるか。
「源さんもしかしてその三人の一人って……」
「想像通りお主が匿っておる娘子だな」
「ならフォティア……あの女の子は魔力使い?」
「うむ、そう見て間違いないだろう……しかしあの子は妙だ、使い魔の映像越しに鑑定してみたのだが確かに微弱に魔力を感じたが……これは主観的だが感じ方が奇妙と言おうか」
要領を得ないな。
「どういうこと?」
「んーー説明が難しいが……そうだな、違和感がしっくり来るか。魔力使いは魔力を行使するまで力は外界に漏れぬのは知っているだろう? しかし本来は微弱ながら垂れ流し状態なのだ、それは微々たるもので優秀な魔力探知をできぬ限り感じれないものだ。魔力を使わずに肉体に内包している状態の漏れはほぼ一定量を漏らす……しかしあの娘子の漏れる魔力には波がある、時々少し多めに漏れ流したりしている」
「そうなっているとどうなるんだよ」
「つまり自然な状態ではないということだ、ああだが安心しろ日常生活には支障はない。だがあまり見ない状態であるのは確かだ……それが違和感となったのだ」
確かに一定量漏れている魔力に波か、確かに妙だとは思う。まさかそれがセルモクラスィア家が追う理由なのだろうか。
「一人で悩んでいても分かるものではないぞ? 儂の方も情報量が不足しておるのが現状でな現在も使い魔たちを働かせておるのだ。近況報告をすると三人の内お主を襲った者の魔力反応が完全に消えてしまっている、魔力を隠蔽したのかそれとも町を離れたのかは不明だ。最後の一人は現在使い魔に尾行させておる、町に被害を出す場合は手を下す、これも管理人の仕事だからな……だがあの娘子はお主が足を突っ込んだのだ、最後まで責任は取るのだぞ」
「分かってる、それだけは必ず成し遂げる」
「そうしろ。こちらは突き放した言い方をすれば関係ない赤の他人、娘子にまでの面倒は見れんそれは理解しておけ……じゃが、こちらもお主たちには随分と仕事を手伝って貰っておるからな、多少は協力はできる。ギブアンドテイクと思っておけ」
頑固な性格だけど人情味のある人だってことは分かってるよ、そうでなかったら俺とマギアなんて面倒をみようだなんて思うはずがない。
「源さんありがとう。なら早速だけどセルモクラスィア家のことを教えて欲しいんだけど」
「セルモクラスィアか、お主はどの程度の知識を有しておる?」
「えっと炎系統の魔力使いの名門ってとこまでかな」
「一般的な魔力使いならその程度の認識で通っておるのう、セルモクラスィア家は大昔……魔力が一般的だった魔力世紀からの家柄だ。炎は高温の青色であり他の炎使い達より秀でた魔力で他の炎の魔力使いを束ねる存在であったが衰退し今では旧家の名門に留まり権力などは殆どないに等しい。しかし魔力自体に変化はなく炎の魔力使いとしてなら一流だろう。仕入れた情報では最近当主が変わったと言う話しだ」
魔力世紀からの家柄だったのか、確かにマギアが言った貴族って言葉がピッタリか。
数百年前、世界に魔力が生活基準として認知されていた時代があった。人が当たり前に魔力を使い術を創作し繁栄していた。しかしある時魔力による時代は終わりを迎え新たな時代へと移り変わって行く、それが現在の新たな時代の幕開けを意味して新世紀と呼ばれている。その所為なのかは知らないが一般人は魔力の存在を知らない者が多い、科学の発展と共に魔力や魔術が廃れてたのも原因だろうが魔力は今も存在し続けている。
世界の影の中に。
「儂が知っているセルモクラスィアのことはこれくらいだろうかな」
「ありがとう何も知らないよりはだいぶマシになった」
「そうか。だがこれからどうする?」
これからのことを考えるとフォティアをいつまでも匿っていることは難しくなると思うなセルモクラスィア家はこの町に逃げ込んだことを知っているし俺らのことも知られてしまっているからどこかにいるとバレている、このまま見付からないでいると奴らも何かしらの行動に出るはずだ、一般人に被害が及ぶ事態になったら洒落にならない。
フォティアもしばらくは動かせないしずっと隠れ続けるのも不可能だ、家にある食料を買い足したり何かと外に出る機会はあるのでその時に見つかる恐れも可能性の一つに加えておかないと。
ならばここは……。
「源さんもう一人の侵入者の居場所は分かってるんでしょ?」
「ああ、把握しとるぞ」
「じゃあそいつの場所教えてよ、今から行ってそいつに直接訊きに行くから」
導き出した答えは長期的にこちらが不利、ならば打って出て彷徨いている敵から情報収集を行う、上手く訊き出せれば良いけどな。
「はっ、分からないなら直接訊くか、単純な発想だがそれが一番難しいぞい」
「そうだけどこっちも長期戦はきついからね」
「ふうむ……お主の戦闘に関しては問題ではない、上手く尋問できるかどうかの話しだ」
確かにそこは不安だな。
「やれやれ仕方がないな、儂に考えがある。要は分担すればよい、戦闘と尋問をな。応援を儂が呼ぼう、この町にはお主以外にも魔力使いは居るからのう。敵の尋問で得た情報は町の守護にとても有益である、つまり儂にも利点があるのだ。つまりこれは手伝いではなく共闘と思えば良い。今回の娘子のこともそいつにちゃんと説明しておく」
「……分かった、その条件を飲むよ」
共闘なら助け舟にはならないとの屁理屈にも聞こえなくもないけどな。
「で、誰を呼ぶんだ?」
「うってつけの奴がおるだろう、今から連絡するから下で待っておれ」
それってまさか、思い当たる人物は一人しかいない。
「嫌な予感しかしないけど」
「そこは我慢せい。場所は廃墟になった町工場が図書館の近くにあっただろ? あそこだ」
えっとここから北の方角で光芽市との境目だったな。
「場所は把握したよ」
「敵が動き出した場合はお主のケータイに連絡を入れる、マナーモードにしておけよ」
「了解……てか魔術師がケータイとかマナーモードとか言うと違和感だらけだな」
「何を言う、魔力通信などを使えば力を感知されてしまう恐れもある、終いには会話も盗聴される場合もあるのだ、科学技術万歳だろう」
確かにそうかも知れないけど源さんの年でそんな言葉が出ることが驚きだよ、流行りのスマホを使ってるし俺がまだガラケーなのを馬鹿にしてたし。意外に最先端を取り入れるの早いんだよな。
「そんなことはどうでもいいわ、早く行ってこい……気を付けてな」
「ああ、分かってる……あ、そう言えばえいなちゃんが昼飯早めに食ってくれってさ、午後から出掛けるんだって」
「分かったと伝えておけ」
「はいよ」
書斎を後にし一階へと降りるとえいなちゃんはまだ読書をしていた、一体なんの本を読んでいるのかと興味本位でさり気なく覗くとそれは雑誌でありタイトルが『魅惑の女への道も一歩から明日からは男どもは手の平の上』だったことに驚愕せざるおえない、まさかこんなところにもその雑誌の読者がいたとは。
「あ、神道くもう用事は済んだの?」
「まあね……源さんへの伝言は分かったって言ってたよ」
「ありがと、言わないといつまでも食べないんだもん何に夢中になってるのかな」
「あーーパソコンとか」
「そっか、おじいちゃんって最新のものを早く使いこなしちゃうからね、そこは尊敬するよ」
確かに、スマホ買ってから丸一日でほぼ機能を把握して軽快に使いこなしてたっけ。
恐るべしハイテクじいさん。
「ねえ神道くん突然だけど聞いてみたいことがあるんだけど」
「何?」
「あのさ……通い妻ってどう思う?」
それってあの雑誌に書いてあったことだろ?
「……どうしてそんな質問を?」
「あはは、この愛読書の雑誌に書いてあったからさ」
何故だろうその雑誌に悪意を感じてしまうのは。世俗に塗れる我が家のパートナーとバイト先の孫娘は同じ感覚を共有しているとでも言うのか、それとも雑誌に洗脳を促す効果があるのかと訳の分からないことに頭を抱え彼女の質問を差し障り無く答えてそれから派生する会話をしていると店外に人影を発見した。
どうやら共闘する人物が現れたらしい。話しを切り上げえいなちゃんに別れを告げ店外へ。
「お待たせしました」
と共闘者が話す。
「すいません迷惑を掛けてしまう形になって」
「いいえ、神道さんのお手伝いできるのは嬉しいことです」
柔らかく笑みを零し。
「では行きましょうか」
そう語る羽原あやめは颯爽と歩き出す。