【祝一周年】それさえも最高で最低な、彼の一番長い夜/to the end.
今度こそ、終わる。
……まるで『呪怨』みたいな宣伝文句ですねw
――――コツッ、コツッ、コツッ。
ホラー映画でよく耳にするような、靴が床を叩く音が廊下全体に響き渡る。不安と恐怖に駆り立てるその硬質な音は、まるで何かのリミットを刻んでいるようでもあった。
そして。
その足音は、自分の背後でピタリと停止した。
「――ッ、」
息を呑む、とはこういう事だろう。恐怖による緊張で、喉が引き攣るような感覚がする。胃からせり上がる不安で、全身から冷たく不快な汗が噴き出る。金縛りのように全身が動かない気もするし、振り向こうにも足が猛暑の残滓で温くなった床に張り付いている錯覚にも囚われている。
でも、振り向かなくては話が始まらない。
「――――!!」
ゴクッと一息に全てを呑み込んで、俺は振り向い――、
「…………は?」
――振り向いて、今度こそ硬直した。
だって、
そこには。
「――何だ何だ。一体この時間に何をしているんだ明日葉は」
そこにいたのは、紛れもない――俺やチカ、ミサの担任である女性教諭・東有紀子の姿に他ならなかったのだから。
「……先生? どうしてここに?」
「むしろそれはこっちが訊きたい台詞なんだがな」
暗闇にすっかり慣れた瞳には眩い光を発する懐中電灯をこちらに向けながら、東先生は呆れた顔をする。見た目こそクールビューティーで取っ付きにくそうにも見える先生だが、実際はかなりの残念さで親しみやすかったりする。お陰でどこか落ち着いて会話ができている俺がいた。
いつものように「ユッキー」と言っておちょくる思考すら働かないくらいに、自分は感覚が落ち着いていないのかもしれない。
「……で、だ。お前のその制服、と手に持ったシャツからすると今着替えたように推測するのだが」
「…………あー」
少々その説明は面倒だ。
さてどこから説明するべきか――――
「……あ?」
ちょっと待て。
本当に目の前の教師は、一体どこから出現した?
「せ、せんせ――」
最後まで言いきれなかった。
それよりもまず先に
今度こそ終わる――そう言ったな。
あれは嘘だ。
というかデータ破損とかで一からやってたら時間に間に合わなさそうだったんですよ;ω;
ホントは時間でどうこうとか駄目だけど、一応は投稿時間を揃えたかったんで。……「とうこう」の変換を一回間違えた辺り、動揺が隠しきれてませんね。




