【祝一周年】それさえも最高で最低な、彼の一番長い夜・05
【建前】
・1000字程度の超絶短編形式なら、みんなもサクッと読めるから良いよね!
主人公・明日葉透は、夜中の学校――その保健室で目を覚ます。なぜここにいるのか、そもそもここは本当に自身の知る場所なのか、それさえも解らないまま同じようにそこにいた幼馴染み三人(大山智香・三咲可憐・水無瀬幸)と自身の妹・希と出会うのだった。
彼らは各々の状況をある程度確認した後、一致団結して暗闇に沈む学び舎を探索する事に決定した……。
「――解説雑過ぎだろ」
「そうですかね。こんなものかと思いますけど」
そう言って、サチははてと恍けるように首を傾げていた。サチも寝苦しさに悩まされていたのか、上は白のタンクトップに下は薄地で黒のホットパンツという出で立ちだった。涼しげなサチにはピッタリの見た目だと思う。
「いや結構雑だって。というか自分が痛い目に遭ったシーンが丸々カットされてるじゃねーか。……特にチカにビンタ貰った部分とかな」
「わ、私だってあんな恰好でこんな状況に陥るなんて予想してなかったのよ!」
「それに、補足するなら貴方が痴漢魔一歩手前だった部分も併せて付け足しませんとね」
「申し訳ございませんでした」
「と、取り敢えずみんなが一ヶ所に集まれたって事でいいんじゃないかな」
「それもそうね」
「ホラ兄さん、土下座してないで立ち上がって一緒に行きましょう」
「……じゃあ今背中に下ろしてる腰を退けてくれ」
というかなんでお前はネグリジェ姿なんだ。痴女か。
しれっと俺を椅子扱いしてる希に下りてもらってから、俺達は人気のない廊下を歩くのを――夜の校舎の散策を再開する事にした。
知らなければいけない。
なぜ俺達が突然ここに来ているのか。
なぜ俺達が、このワケわかめなシチュエーションに選ばれたのか。
「もしかすると生徒会室に寝泊まりするようになるんですかね……」
「別に他の生徒もいないし窓ガラスも割れてないから、それはないだろ」
「そんな、それこそ雑な感じに話を進めちゃって良いんですかね……。ノベルゲームだったら絶対セーブする戸頃ですよ」
ああ、俺だったら更にクイックセーブもしてしまう臆病プレイかますだろうな。
とかゲーム脳な会話(?)をしていると、前を歩く幼馴染み三人衆の一人、ミサが首を傾げてこちらを窺っていた。彼女はゆったりと言うか、彼女の特筆すべき大きな胸の輪郭を判別させない白とピンクのチェック柄という可愛らしい色合いのパジャマを着用していた。ご丁寧にピンクのナイトキャップまで被っており、この中じゃ最も少女らしさがあってかなりの目の保養になる。
「? トール君が言ってるのはなんの話?」
「アニメの話、かな」
あまりアニメの話題に明るくないミサに、なんて説明したらいいか……。
どうでもいい話かもしれないが、俺はあの伏線と言うか、思わせぶりかつ話数が進むにつれて少しずつ変化するOPのアニメは大好きだ。連続でミリオン再生突破も肯ける面白さに、ゾンビものが苦手な自分もついつい視聴してしまっている。……たまに「ひぇっ」とか悲鳴を上げてるのは内緒だ。
「そうです、兄さんがビビりながら観てるアニメの話です」
「ちょっ、おま――」
お前はなんでそう簡単にあっさりとバラしちゃうんだよ馬鹿! とか言おうとしたけれど、止めた。理由は簡単、ドツボに嵌りそうだったから。
……もう遅いのかもしれない。いや、最早手遅れだった。
「……なんだよお前ら」
前を歩く三人が立ち止まった気配がして右隣の希から視線を移すと、幼馴染み三人が滅茶苦茶ニヤニヤしていた。
何か可笑しそうに。
何か微笑ましそうに。
何か格好の獲物を見つけたかのように。
「へぇ……、あの透がねぇ……。へぇ…………」
「トール君って、なんて言えば良いのかな……結構可愛い所あるよね、えへへへ」
「これはアレですか、ブラフですか? 誘ってるんですか? いやはや、貴方の貪欲なまでのマゾ精神は驚愕の一言に尽きますね」
「きゃああああああああああああああああああああっ!!?」
真夜中の学校に、耳を劈くような悲鳴が響き渡る。身体中を掻き毟りたくなるようなむず痒さが襲って来たのだ。
考えてもみてくれ。
幼馴染みで自分で言っちゃあアレだがある程度気心も知れた、それこそ今みたいな理不尽かつ解釈放棄を余儀なくさせる状況に叩き込まれても一緒ならなんとかやっていけそうだと思える仲だ。正直親戚よりも俺に詳しそうなメンツに、まるで黒歴史が発見されたような感じなのだ。誰だって本棚の奥にある秘蔵本を家族会議に掛けられたり、「コイツ昔ここで」はないだろう? ……そういう事だ。
「お前らマジ覚えとけよ! ホント覚えとけよな!!」
「ええ、覚えてくわ」
「覚えました!」
「格好の餌だという事は覚えましたとも」
俺が苦し紛れにギャーギャー言っても、彼女達はその笑みを絶やさない。羞恥で暑さとは違った汗がふつふつと湧き上がるようだった。
「……むしろ覚えてたから言ったのですよ?」
「いいからお前は何かその恰好を隠すものを纏ってくれっ!!」
そんな文句というか内輪揉め(?)でキャンキャンと静かで真っ暗な廊下に反響させながら、俺達は進む。
例えその先に――――『最悪』が待っているとも知らずに。
【本音】
・こんな感じでコツコツ少な目に書いてくのが性に合ってるだけですたい、はい。




