【祝一周年】それさえも最高で最低な、彼の一番長い夜・01
結構あっさり目。
そんな超々短編形式の、極めて平常運転ではありますが、これでも1周年。
「…………………………は?」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔というのは、多分今の俺の事だ。
我ながら随分間の抜けた、オブラートに包み隠さず言えばかなりアホな反応だ。……でも違うんだ、聞いてくれ。いや確かに俺はアホの代名詞と言っても過言じゃないくらいアホだがとにかく今はそういう事じゃない。
「……どこ?」
さっきまで俺はてっきり自分の部屋でエアコンをガンガンかけて完全熟睡マンしていた筈だ。夏場に最適なタオル生地のシーツ、寝苦しさを助長しない水色の毛布、肌触りの良い黄色のタオルを掛けた首が痛くならない柔らかな枕。そんなお値段以上の超快適空間で惰眠を貪っていたワケで、当然湿気も日中の暑さの残滓とも、ましてや寝苦しさにも無縁な状況だった筈なのだが……?
「っ……なんだ、これ…………エアコン壊れたか?」
一つの可能性としてはあるかもしれない。だが、それは引っ越して来る直前に直してからまだ半年しか経っていなくても起こりうるものなのだろうか。
「……見てみるか」
面倒だし、素人目で見て理解できたり修理したりする事なんて殆どないのだろうが、やってみない事には何も始まらない。不測の事態だったからか寝起きにしては割と冷静な頭でそう考え、俺は起きる事にした。
「……っ、と」
――ギシッ。
目を覚ましたばかりで真っ暗闇で何も見えないが、取り敢えずはと横になっていた身体を起こす。寝起き特有の身体がポキパキと鳴る中にベッドの下から何か金属質な、どこか不安になる音が聞こえた気がした。
「それに……、」
両手を使って起き上がった際の手触りがタオル生地のものではなくツルツルとしたそれだった。別に今日からシーツを変えた、なんて気まぐれは生憎と起こしていない筈なのだが。
ワケが解らず気になり、必死に調整の間に合ってない目を凝らして周囲を見渡そうとした――そのタイミングで、丁度近くの窓から光が差し込む。今日は一日曇りだったので、ようやっと雲から月が顔を出したのだろう。窓の外から届く綺麗な月明かりに照らされた視界は……って、窓?
「いや、いやいやいや……」
いやいやいやいやいや、おかしいおかしい。
今日みたいな天気を見越して、あるいは最近の熱過ぎる西日対策に敢えて遮光カーテンをしていた筈だ。一応は日光用とは言え、月明かりでさえももう少し抑えられてなかったら遮光の意味がないではないか。
というかこれはなんだ?
確かに自分が今の今まで寝ていたのはベッドだ。窓の位置も同じ。だがベッドはとても簡素で真っ白で、何より独特の潔白さがある。それに窓だってさっき言った通り、遮光のしの字もない、ただのガラス張り。肌色のカーテンがあるものの、端に束ねられているだけで、まるで戸締りで窓だけ閉めて帰ってしまった感がある。
それに、どこからか漂うツンとした医薬品由来のような香り。窓とは正反対の右手側を窓付近にあるのと同じカーテンでこちらはキッチリと区分けされている点。
「嘘だろ……」
いや、まさか。そう思う心とは反対に、やけに冷静な頭がこう結論付けていた。
間違いない。
ここは、――――学校の保健室だ。
何もかもが寝る前の自分の記憶と、そして自分の『いつも』とは全く違うものだった。
いよいよ意味が解らなくなってきた。
「……本当にどこなんだここは」
『がっこうぐらし』じゃねぇんだからさぁ……。
そんな事を考えながら笑おうとしたけれど、俺の顔は全然笑えてなかった。
泣きたくて笑いたくてと気まぐれんな感じの拙作が、一応はここまで続けられたのは皆さまのおかげです。
本当に、ありがとうございます。
できればこれからも宜しくお願いします。




