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幼馴染同盟 ~Are you BEST FRIENDs?~  作者: アオハル
02.Cold-en weaks _Do you know?_
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第04話 えんたく

 ――――という、夢を見たんだ。

「――――、」

 まるで水底に沈んだかのように重たげな意識を引き起こす。ボンヤリとしながらも揺れる水面いように段々と落ち着きを取り戻し、呼吸も安堵のそれに移ろいで行く。

 いやに魘されたような、そんな夢を見た気がした。見た夢の内容は全く思い出せない。ただ「悪い夢だった」という感想はなく、ただただ脱力感というか、学校行事の面倒臭い作業が終わった時のような疲労感というか。同時に懐かしさもあったような、なかったような。そんなものが滲み出たような夢、を見たような、見てないような。

 …………まぁいいか。

 それからいつものように掌を握り、開こうとして、

「……っわぁ…………」

 気持ちの悪い汗が滲んでいた事に気付いた。それもよくよく気付けば掌だけではなく、脇やら背中と正直誰得でしかない部分にもだ。特に背中に湿気を帯びて貼り付くシャツの感覚には思わず苦虫を噛み潰したような顔を作ってしまったくらいだ。……ホント、男の汗とか誰得なんだよ。

 それらに嫌気を覚えながらも周囲を見渡す。

 室内はほぼほぼ真っ暗で、起きてから晒し続けた目が慣れていった事で物の配置が大雑把に把握できる程度だった。窓も多分妹だろうが――いつの間にだかカーテンで閉ざされていて、差し込む光も家の前にある街路灯のもののみとなっていた。普段の癖で枕元に置いてあるデジタル時計を拾ってみれば、時刻は七時も半刻を過ぎた辺り。つまりは前起きた時から一、二時間は寝直したようだ。大分暗闇に対応した目で見渡しても、今度はおしぼりも水を張ったボウルもない事が時間の経過を教えてくれる。

「……って、そんなボンヤリしてる時間じゃないだろ」

 そこまで辿ってから、俺はようやっと我に返った。今の時間帯、いつも明日葉家では何があるかを。

 そう、夕食だ。

 ……とはいえ作るの俺じゃなくて母さんか希なんだけどな。それでも日常的にやっている事をしていないとなぜか罪悪感に苛まれてしまっている俺がいた。一応は病人だったのに。将来は社畜になりますよっていう予兆か何かなのかな? あり得そうだから困る。やめてくれ。

「とはいえ……。流石に治ったし、手伝いくらいはやれるだろ」

 そんなアホな事をつらつらと並べ立てながらも結局やるのが明日葉透、お兄ちゃんクオリティである。自分の体調を再確認するように首や肩を回して、俺は一階に下りる事にした。どうせ今日は休日、というかゴールデンウィーク真っ只中だ。それに今の時間なんて家族くらいで寝汗を掻いても気にしなくちゃいけない相手なんていない。そのままリビングへ向かってしまおう。

「いや、希だけしかいないなら逆にシャワー浴びに行った方がいいのか……?」

 主に俺の身の安全のために。希なら「兄さんの汗の匂いクンカクンカスーハースーハー(以下略)」なんて奇行に走りかねない。ガチで。そういったものって異性の近親者相手には通常だと生理的に嫌悪してしまう匂いに感じられるらしいと聞いた事があるが…………この妹だけはなんとかしなきゃいけないと改めて思いました、まる。

 そんな嫌過ぎる懸念に身震いしそうになりながら階段を下りて行くと、段々と美味しい香りが漂い、鼻腔をくすぐる。

 それから、

「?」

 誰かと誰かの話し声が自分の耳に入ってきた。テレビのバラエティ番組かと思ったが、希はそもそも淡々と――黙々と好きな事で日々を過ごすタイプの人間だ。とするとニュース番組で最近見かけるようになった特集かな? あの『外国人が~』系、面白くはあるんだけど扱うテレビ局や時間帯が多くて被ってるのがなーなんて思ってしまうのは俺だけですかね?

 そこまで考えてリビング、そこから台所へ手伝いに行こうとして――――



「あ、起きましたか」



 ――――ひと昔前のギャグ漫画のようにスッ転んでしまった。

「…………は、はぁっ!?」

 なんでお前が――水無瀬幸サチがここにいるんだよっ!? と叫びそうになった。なった、というのも喉を伝って言葉にするすんでの戸頃でつい一、二時間前の事をまるっと思い出したからだ。

 そんな驚愕と納得の矛盾した表情を張り付けているカオスな俺の顔を、当の本人サチは不思議そうに見つめていた。

「どうしたんですかそんなバカみたいな顔して。豆鉄砲を喰らったワケでもないでしょうに」

「い、いや、そ――」

 そこまで言いかけて、俺の呼吸諸共全てが一時停止した。

 言えない、言える筈がない。

 冗談でも「あっ、実はー、あなたの事忘れちゃってましたー☆」なんて言ってみろ。その瞬間記憶に空白が生じてしまう『何か』が起きるぞ。ソースは引っ越す前の俺。マジで記憶がないから一度起きてしまったら傾向も対策もなく『何か』をされてしまう。……ぶるぶるぶるぶる。

 さっきの寝汗なんて比じゃなさそうな、冷たくいやな水滴が頬を伝う中。俺は十中八九諦めの境地に入りながら弁明を弄しようとした。

「えーっとぉ……、そのぉ…………」

「――――もしかして」

 はい、できませんでした。

 ギギギ――と不意に顔を上げて窺えば、彼女がかけている眼鏡がキラッと光った気がした。ついでに彼女の後ろに雷が落ちたのも幻視してしまった。

「その驚きよう……もしかして今日から私が泊まるって言っていたのをもう忘れた、とか?」

「…………、」

「もしかしてもしかしてあなたは鳩ではなく鶏だと、そうですかそうですか」

「…………………………」

「あ、兄さん起きましたか。今日は唐揚げですよー」

 妹のいつも通り過ぎるそのマイペース具合に、場は更に混沌を極めた。

 ……ちなみにサチだが、顔はいつも以上に笑っていなかった。目も全然笑ってくれなかった。怖いよ。



 …………なーんて事があったのも、もう過去(ほんの数分前)のおはなし。

 希の「夕飯が冷めちゃいますよ」という鶴の一声で無事恩赦を頂戴した俺は、今ではすっかりサチと希の三人で食卓を囲んでいる。

 揚げたてホヤホヤならではのジューシーな鶏肉のこの柔らかさと肉独特の甘みと旨味、漬けた醤油のしょっぱさと少量の生姜によるアクセント。

 これは……。

「どうですか、兄さん?」

「完璧だ……」

「キャラが変わるほどですか……」

 それに、人の事をジト目で指摘しつつも、クールな癖に可愛らしくもきゅもきゅ頬張ってらっしゃるサチのその表情を見る限り、サチの肥えた舌にも好評のようだった。

「レモン持参しちゃってるし……」

 タッパに入れてまで持って来ちゃってるし……。しかもそれ、夏バテ対策とかでよくある砂糖漬けのレモンだよね? 甘くなっちゃうけどいいの?

「……あー、でもお前って和菓子系好きだもんなー」

「はい?」

「いや、お前が甘党だって話だよ」

 箸で唐揚げを掴みながらそう言って、口に放り込む。うん、美味い。やっぱ肉だけじゃ駄目ね。野菜もちゃんと摂ろう! いーや白く炊き立てのご飯が進む進む。その横におわすのは白味噌仕立ての豆腐と小松菜と油揚げたっぷりの味噌汁だ。

「あー、日本人最高! 万歳!!」

「何言ってるんですか兄さん? そんな事言ってる間に唐揚げ冷めちゃいますよ。あふあふ」

 謎の歓喜に打ちひしがれていると、点けっ放しのテレビが目に入った。ゴールデンタイムでお馴染みのバラエティ番組が『特集! 巷で話題のGWの過ごし方!!』みたいなサブタイトルで放送されていた。その巷ってどこだよとか、出端を挫かれた俺への当て付けかと言いたくないそうな内容だ。

「そういや、サチは最近どうなんだ? 学校とか」

 しっかり咀嚼しきってから、俺はふと対面し座る彼女に尋ねてしまっていた。

「特に何も。平々凡々と言ったところでしょうか。あなたも知ってそうな学校行事を順々に消化していってるだけで、私は変わらずです」

「そうか……」

 それは「良かった」と言っていいのだろうか。少なくともサチが今何かしらの問題に見舞われてはいないだろうという事には安堵するが。

 自分で尋ねておきながら、口から零れたのはなんとも微妙な相槌だけだった。

「……それに、」

「? それに?」

「…………。いや、なんでもありません」

「えぇぇぇぇぇ……。そう言われると気になっちゃうお年頃なんですが」

「まるで私が老けているかのような物言いですね」

「それは被害妄想だろ!?」

「そうですか。……とにかく、なんでもありませんから」

「はふはふ」

 言い澱んだ彼女のその頬は、揚げたての料理の熱気と美味しさからか、ほんのり紅く染まっていた。



 ……つーかこの妹、さりげなく俺の皿の唐揚げまで食べてやがるぞやめろそれは俺の分だろチクショウ美味しそうに食べやがって後でまた作ってくれよな。

 はい、というワケで飯テロ(?)回でしたー。

 というか『モンスターハンタークロス』発売ってマジオス? 自分なんか4GのGX装備のクエすら行ってない始末ですよ、まずいですよ! つーかアニメもどれもが1,2話程度しか見れてないとか暇なさ過ぎィ! ……あ、嘘です『血界戦線』だけは5話くらいまで見てます。アリギュラが原作以上に活き活きとしてて、こういうキャラがいるとアニメオリジナルも良いなーと思ったり。『Fate(UBW)』も『きんモザ』も見たいと盛り沢山。自分を10人くらいにしたい気分です。いやホント。



 ……そんなこんなで次回はポロリもある(予定)よ!

 では ノシ

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