【番外編?】いつかのおはなし(for the prologue―B)
スイマセン。
わざわざ予約機能を解除してまで、少々追加をしました。
これはある夜のおはなし。
その時、少年は気付いていた。
「――――!?」
「――――!!」
後部座席からその小さな身体を捩じらせて覗いてみれば――運転席に座る男性が怒号を吐き、助手席に座る女性が悲鳴を上げるように叫ぶ姿が見えた。見えてしまった。
意識をそちらから離せば――風どころか空気を掻き切るかのような異常過ぎる音、それから目を疑うような速度で過ぎ去ってゆく真夜中の景色。それらは無慈悲にも事態がもう既に手遅れだという事をその少年へと教えてくれた。
「…………、」
家では毎日前に座る二人の喧嘩で夜も碌に寝れないどころかいないもの扱いで、学校に行っても同級生達がヒーローの必殺技を叫んでは暴力を振るってくる――そんな、ひとりぼっちの日々だった。
「――おまえはなんでもかんでもすぐにあきらめているな」
ある日その現場に立ち遭ってしまった担任に。その同級生達への説教が終わって、あとから一人呼び出されて質問攻めをしてから――締めくくりとしてなのか、そんな事を言われた。
そう、諦めているのだ。
だから。
――――少年はいつものように諦める事にした。
(……ああ、)
ようやく二桁になったばかりの年齢で、僅かな人生をまるでアルバムでも眺めるように思い出してゆく。決して幸福ではなく、むしろ最期の最期まで曇りしかなかった人生だった。
でも、もう諦めた。
(あきらめなかったら、なれたのかな……?)
……そのはずなのに。
そんな仄暗い記憶の中にも、ひとつ。
それは朝、たった一人で眺めるように見ていた戦隊ヒーロー……ではなく。
二人の玄関での喧騒で眠れなかった時にたまたま点けた、『アニメ』だった。
その『アニメ』は、正直その少年の歳じゃちっとも理解できないおはなしで。なんだかよくわからないままに肌色が画面を躍っていたような記憶があった。悲鳴もあったし女の子からビンタもされていた。ヒーローみたいに必殺技で悪者を倒して正義を体現してたりなんかも、全然してないじゃんとも思った。
けれど。
その主人公は学校のみんなが大好きなヒーローとは違って、決まって周囲の人達を笑顔にさせていた。
時には、少年でも解るくらいの敵でさえ仲間にし、笑顔にしていた。
そうしてみんなで幸せそうな――そんな世界を創り上げていた。
もし。
(もしも。『このさき』があるのなら、)
決して、叶いはしないだろう夢だけど。
(――――つぎはじぶんにも、だれかをえがおにさせられるのかな?)
もう、諦めなければ。
幸せに、できるのだろうか?
そして――――。
少年のあまりに短過ぎる生涯は。
突如視界を照らし出した莫大な光に当てられた――その一瞬の後に、確かに幕を閉じた。
……はい。
なんで誕生日なのにこんな暗い話を書いたのかと言うと。
…………、なんでなんでしょうね。
正直この番外編、この話を投稿するのに躊躇していたのはココの部分なんですよね。書いてる自分はこの手の内容はてんで読めない人間ですし。だからこそ(確かに追加はしているけれども)投稿に1時間遅れが出たというか。いざとなって――でも晒してみるか、と。
そして言っておきますが、これも「もしも」のおはなし――たらればの世界です。……なんかたらればとパラレルって似てますねってうわ何をする止めるんだうがががが――――っ。
そうそう次は『本日の』正午、正午です。
……今度こそ守れるといいのですが――いや守る!
そんなこんなで私の誕生日なのでした。
以上っ!!




