第11話 「介入」―A
おっほう!
つい今日が奇数日だって事を忘れてました。すいません。
(というか平日に休めたからってなんで20時間も寝てんだよ。ってかソレ寝てるじゃなくて気絶してるって言うんじゃね?)
さてさて。
前回の下書き分は既に書き終わってますがそれは後ほどとして、早速本編(?)へ。れっつらごー。
「お、おお…………」
俺達三人は、ようやくにしてそこに到着した。
あの桜色の狭間から見た雰囲気を拡張したような景色、世界観がその敷地内にはあった。赤褐色の煉瓦で組み上げたような校舎にイギリスで見かけそうな舗装が施された地面。本当に大学のキャンパスみたいだった。……これが県立かよ?
ちなみに。見えていた時計塔はらしきではなくそのものだったようで、時間帯が早く人が少ないながらもその大半が顔を上げその塔へと視線を向けていた。他にも、僅かに見受けられるソメイヨシノに目を奪われていた生徒もいた。
――――ここが、新しく俺が通う高校か。
不思議と、納得した気分になった。
「じゃ、私達はクラスの方行くから」
「え? 俺は?」
「と、取り敢えず職員室なんじゃないかな?」
「…………だとしたらなんで急にそんな早足なのかなアナタ達は?」
「クラス発表があるからに決まってるじゃない!」
「だ、だったら俺もそっち行――」
「トール君は来ちゃダメなのです! 職員室直行なのです!!」
「ええっ!? ちょ――ちょっとぉおおおおおおおおおお!!?」
閑話休題。
唐突に昇降口に辿り着いてすぐに彼女達とは別れる事となり、俺はたった一人、自力で目的の場所まで新天地を進んでいった。見慣れぬ校舎を探索すれば探索するほど、学ラン姿の俺が浮いているように感じた。実際そうなのだろう。周囲の怪訝、いや好奇の視線がダイレクトに感じ取られ、俺は胃が握り潰されるような感覚を味わう羽目になった。
目的の場所に来た時には、既に俺の心はプレッシャーやら何やらでグダグダになってしまっていた。正直、あの二人にはここまで着いて来てほしかった……情けないかな。
「――」
深呼吸。
「……よし」
俺は意を決して『職員室』の札のある扉をノックした。すぐに「どうぞ」との声が内側から聞こえたので、扉を開いた。
しかし、扉を開けた傍からだった。
「おっと」
「あっ、すいません」
丁度職員室から出ようとした先生にぶつかりそうになった。慌てて謝ろうと相手の顔を見る。するとその人物は一瞬だけ驚愕を露わにするが、瞬時に何かを理解した表情に変えた。
「――――転校生というのは君だね?」
今度は俺が驚く番だった。
咄嗟に声が出ず、ただ視線だけを合わせて首を縦に――振ろうとして、やっぱり最初は挨拶からと考え直した。
「…………は、初めまして。転校生の明日葉透です」
「初めまして、明日葉透君」
微笑ましくこちらを見つめるその人を改めて注視する。
サラリと俺の名前を言ってのけるその人物は、所謂『大人の女性』と言える存在だった。
「県立上ヶ崎高校が教師、東有紀子だ」
彼女――東有紀子先生は美人だった。チカやミサなどの『美少女』ではなく、どちらかと言えば友花さんのような『美女』と説明した方が良いだろうか。
最早働く女性と言われればすぐに思い浮かべてしまいそうな見た目だ。明かりによって茶髪にも黒髪にも見えるやや長めの髪を綺麗に後ろで纏め、艶やかにうなじを見せつけている。また服装も細く長くと針金のような体躯に合った白のワイシャツの上にグレーのスーツを羽織り、スカートも長過ぎず短過ぎず見えず(最後はいらないか)。それに良い意味で彫刻のようなおみ足にはブラウンのタイツ。ワインレッドで細く縁どられた眼鏡もスタイリッシュだ。
それにどこか冷静で、落ち着きのある雰囲気も漂って見える。
美しくも可愛いではなく格好良い、まさに『大人の女性』――――それが彼女の第一印象だった。
「まぁまぁ、落ち着いて私のデスクの所で話そうじゃないか」
口調もハキハキと、男勝りな印象を与えるものだった。
職員室から(多分俺を迎えにだろうか)昇降口に向かおうとしていた彼女は、自分を見るやいなや自身の持ち場であるデスクへと足を運んでいってしまった。勿論俺もその後ろを着いてゆく。
「担当は数学だ。ついでに、これから君が編入するクラスの担任でもある」
着いてゆく。
……。
「と、いうワケで、私からは以上だ。困った時はいつでも声をかけてくれ」
「……よろしくお願いします」
…………。
「ところで、」
「なんだ?」
「いつまでグルグルとデスクの周りを回ってるんですか……?」
「――――むうっ!?」
質問に唸られてしまった!
やっぱりな! おかしいとは思ってたがやっぱり無意識かよ!!
「い、いやこれはだな……その…………」
「え……っと、もしかして」
もしかして先生も緊ちょ――
「緊張しているワケではないぞ」
「……さいですか」
「そうだ」
……どうやら今のは本気でなかった事にしたいらしい。ガラガラと、俺の中で目の前の女史の第一印象が倒壊していく音が聞こえる気がする。
とはいえ。
その後は落ち着いて自身のデスクに腰を下ろしては、俺の転校に際するいくつかの質問(通学方法や科目・体育授業内の選択の有無など)を簡潔に返答している辺りは流石だと思う。
「――以上だ。他に何か質問はあるか?」
「そうか」
あらかたの質問も終わり、後の憂鬱はクラスメイトとの対面くらいになった頃だった。
「では早速行くぞ」
「はい」
……って、はい?
ちょっと待ったちょっと待ってちょっと待ちましょう!?
「言質は取ったぞ。……まさか漢に二言はないよな?」
「それって差べ――」
「まぁ、なんでもいいさ。とにかくクラスの方へ行くぞ」
「え、あ、ちょっ!」
言うが早いか立ち上がると、彼女はその手で俺の手を引っ張り、早くも新しいクラスへと連れて行こうとする。
「……ん?」
俺が動こうとしないからだろう、振り返って首を傾げられてしまう。
「どうした?」
「……いえ、なんでも」
あまりにも純粋に彼女が首を傾げるものだから、つい「いやあなたさっき自分で言った事もう忘れてるの!? なんでさ!!?」なんて言えなくなってしまっていた。
最早諦めの境地に入ろうとすると、
「はっはーん」
嫌な予感のする擬音語を口ずさまれる。
「成程、成程なぁ。こればっかりはすっかり失念していたな」
何を――と言おうとするよりも、その台詞は速かった。
「あれだろ、私みたいな年増とはいえ女性――異性だと意識しているんだろう?」
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ちょっと。
本当にちょっとだけ、……コイツ頭おかしいんじゃないかと正気を疑ってしまった。
教師として云々というより女性として云々より何より、コイツは人としてアウトなんじゃなかろうかと。本気の本気で思ってしまった。
「あー、…………いえ違うんですが」
「いいさ誤魔化さなくて。そういう年頃なのだからな」
「じゃなくって!」
ああ面倒臭い!
本当の本当に気付いてないようなので、目の前の大人ぶった教師に現実を突きつける事にした。
「……先程、朝の職員会議があるから質問は短めに済ませようって言いませんでしたっけ?」
「あ」
彼女――東先生が気が付いた時には既に遅く。
周囲一帯には会議直前で集まったらしい他の教師陣の静かな、しかし確かに呆れが混ざった痛々しい視線が集中して突き刺さっていた。
どうやら転校先の担任は、胸だけじゃなく頭も残念なようです。
「今日って雛祭りだよね?」
はい、おっしゃる通りですし本来なら5000字で書いてありました!
……ですが直前で誕生日ネタは止めとこうと没に(その後作者の意識は20時間の旅へ)。
次回はちゃんと午前0時に投稿します! 多分!!(おい)




