【番外編】菓子の貯蔵は十分か―c
フリーズ貴様ぁああああああああああっ!!!!
(直接投稿をしようとしたら再起必須状況に陥り最初のデータが消☆滅させられた作者の憤怒)
自分は筆が異常なまでに遅いので、用事がない昨日の夜から今日にかけて一睡もせずにA・Bパートを書いておりまして(つまりあのいつも以上?なウザさのネタは深夜テンション)、それで8時頃に書き終えたと思いましたら一気に眠気が……目が醒めて時計を見れば午後の4時ですよ奥さん。しかしまだ時間はあるさと途中まで書いていたのを、と思ったら18時にPCフリーズががが(ry
なのでC部分はA・Bと比べて短め(ただし即興や手抜きではありません)です。と、言う事は――――?
…はい、ではどうぞ。
#06
「どうぞ~」
ノックをしてすぐにドアの向こう側から返事があった。若くて、高くゆったりとした聞きやすい女声だ。俺はその声に甘んじて「失礼します」と最低限の文句を言いながら、スライド式のそのドアを開けた。
「あら~、とおるクンいらっしゃ~い」
開くと奥のデスクから挨拶され、視線を向けると目が合った。
――――大山友花。
それがその声の発声源でありこの保健室の主のフルネームだった。
姉妹共通なのか黒く美しい艶のある髪は肩ほどで揃えて切られてありながらもふんわりとした印象を含んでいる。潤いたっぷりの唇に、声以上におっとりしながらも端正で綺麗な顔つき。そんな『大人』な雰囲気を持った彼女に微笑まれ、慣れてはいてもドギマギしてしまう。
勿論容姿を見れば一発だが彼女は声通りの若さで詰まる所は現役大学生だ。確か教育実習というか何かよく解らないお題目でこの場所にいるのだとか。まぁ、そのおかげでスーツに白衣を着た姿がとても似合う事を知ったのでそれはそれで良かったのかもしれない…………ある一点を除いては。
「で~、何かお姉さんにお願いでもあるのかな~」
事務用の椅子に上品に座る彼女はからかうように、悪戯めいた微笑みを浮かべた。
そう――これがその一点だ。具体的には説明しづらい感覚的なものなのだが、とにかくこの人のぬるっと俺をからかう部分が、まぁ、その、あれだ…………悪魔だ。
「まぁ……用があると言えば用があるんでしょうが」
もっと言い方ってものはないのかと俺は――ああ、この女性にそれを求めるのがそもそもの筋違いだったか。
「今ちょっと失礼な事考えたでしょ~?」
「……足首を痛めたんでコールドスプレーやらテーピングやらお願いします」
謎の察知能力の高さについては敢えて無視していくスタイルで俺は一気に本題へと踏み込む。
「あ~、そう言えばとおるクンってば中学の時バレー部だっけ~?」
「ええ、まぁ」
ここまでくれば言わずとも解りそうだが目の前の女性――大山友花さんとはただ生徒と保健室の先生というだけではない。と言ってもただ今のご近所さんであり、それでいて七……そろそろ八年も前になるが、その当時親交があった年上のお姉さんなポジションなワケだけど。
「でも――取り敢えずは一回まずは私に診させて頂戴。もう少しだけ歩いてもらえるかしら?」
「え、……あっ、はい」
俺が肯くとすぐさま彼女は最寄りのベッドへと誘導する。ならば早速と痛む片足を上げつつ一本足でジャンプするように向かい、俺は倒れ込むようにベッドに腰掛けた。座る際の衝撃が足首を襲わないようその足を上げていると、優しく彼女が両手を使って支えてくれた。足の皮膚越しに、彼女の白い肌の柔らかさと体温が伝わった。それから彼女はあらかじめ準備していたのか――ベッドの下から『救急箱』と書かれた金属製の小さなアタッシュケース型の箱を取り出した。
しかし……いやだからこそと言うべきか。だからこそ、今みたいに突然語調が間延びしたものではなくなったりすると無駄に気が付いてしまう。そう言った切り替えの部分でも尊敬するし、同時にもっと素のいつもの友花さんらしさを出してほしいと思ってしまう俺が情けなかった。……とはいえ別にもっと弄ってほしいだなんてマゾい思考回路は形成俺としてはもう少しマイルドでお願いしたい。
「…………、」
一瞬で仕事と私情を切り替えられる友花さんの姿。それがとても眩しくて格好良く感じた。多分、これが『大人』なのかなぁ……と誰視点なのかも解らない感想を抱いていると、
「? どうかしたかしらとおるクン?」
「いや、なんでもないです」
というか真面目モードでも自分の名前の発音は変わらないんですね、とは流石にこの真面目な状況では言えなかった。友花さんも友花さんで「あら、そう?」と言ったきり静かに、だが優しく俺の足首を観察したり触診したりし始めてしまった。……至極当然の話だが、彼女のこの状態の親切さは来る人みんなにそうなのだと思うと…………虚しい気持ちになった。ひょっとすると…………この考えはよそう。
それより…………………………正直、気恥ずかしい。主に色々と。
しかしここは我慢、我慢だ俺……とそのまま数十秒が経過すると、
「うーん、あんまり冷やし過ぎると悪化する場合があるから……取り敢えずスプレーだけでもしとこうかしら?」
「……あー、お願いします」
「じゃあ痛いかもしれないけど、ちょっと膝を立てる感じで……そうそう、その体勢で」
ムズ痒い診察から解放された俺は次のステップとして膝を立てる形で関節を捻った足をベッドに乗せる。片足だけ体育座りしている感じだ。
「…………あら?」
「? どうしました?」
「……ゴメンちょっとスプレー切らしちゃったから取って来るわね~」
ちょっといつもらしさが滲み出るそんな台詞と共に友花さんは立ち上がって取りに行く。
その瞬間だった。
――――突然、世界が揺れた。
原因はこの日本に住むにあたって逃れられない災害である地震だった。つまりは比喩ではなく事実として揺れているのだが――いやそんな事よりも!
今回の地震は中々――以前の東北の震災とは比較にならないが、思わず身体が強張り焦燥を感じてしまうには大きいものだった。
なにより――――、
「――えっ、嘘っ――きゃっ…………!?」
「――――っ!?」
ベッドに腰掛けていた俺でさえそう思うのだから、丁度立ち上った直後の友花さんに限っては更に影響を受けたのか、身体がよろけて――俺の方に倒れてきてしまった。転んだと言った方がいいのかも解らない勢いでベッドの俺に覆い被さる形で倒れてしまった。足首が悲鳴を上げるが俺は友花さんが怪我しないように両手で抱えるようにキャッチす――押し潰されるだけで精一杯だった。
そして、
「……痛――――っ、」
「……い、今の――――!?」
時間にして数秒、振動が終息を迎えた頃だろうか。
俺達はそこで互いの状態を気にかけるように見合わせてから。
「「――――ぁ」」
気付いた。
気付いてしまった。
Next(#07)
……>23:59




