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幼馴染同盟 ~Are you BEST FRIENDs?~  作者: アオハル
01.APRIL _Something to know_
54/143

【番外編】菓子の貯蔵は十分か―b

 自分で自分の文章に吐血しそうになりながらのまさかの投稿PART2。

 ついでに全開の部分を修正。

 良かったら見返してみて下さい。

【修正箇所】

・番外編自体のタイトルの変更。

・希に関する描写の追加。

…>初見さんでも大体の特徴が掴みやすい(?)かな、と。



 それではどうぞ。

   #03



「よーするに明日葉くんは夢を語るのが好きなタイプなんだねー」

「そんな恥ずかしいヤツ扱いなの俺!?」

 教室にて。胃がもたれそうな朝食もといチョコ食をある程度(カロリー的にはおにぎり二個分ぐらい?)摂取して、日課と化している書店への朝通いをこなしてからの登校だった。欲しかったライトノベルは既に購入済みだったので今日はざっと書店のラインナップ全体を見回しただけだったのだが、なんでもその書店の店主にさえ心配されるほどの顔色だったとか。

 ……いや別に不味かったワケではなくそれはそれはとても甘くて美味しかったのだが、如何せん朝はあまりお腹が空かない派の俺にとっておにぎり一個以上も食べた時点で満腹なのに更に献立がチョコチョコチョコときたワケで。確かに自分自身今でさえ口から甘い息を吸っては吐いている気がするし、胃の中に重油が溜まっているような苦しささえ感じられた。……そもそも大抵の人は朝からチョコレートを食べさせられたら気分は優れないと思うのだが…………。

「隣の席の人間がそう思うくらいにはそーなんだろー」

 そう俺の心にメスを入れてくるのは新キャラでも何でもなく、右隣の席でおなじみの井上(いのうえ)実夏(みか)だ。

 黒髪のショートカットで橙色のカチューシャを付けており、それにより幼そうな顔つきを覗かせていた。体躯は小柄でほっそりとしていて凹凸の機微がほとんどないようにも見えるが、特技として泳ぐ姿を見る限りあの二人(・・・・)と比べるとアレだがそれなりにはあるようである。

「とにかくー、少なくともその話題は学び舎の敷地内では零さない方が身のためだねー……ふぁあぁぁぁ…………」

「……ああ、そもそも話した戸頃でただの不幸自慢だからなぁ」

「その発想が既に危険だと思うんだけどなー」

「?」

「ふぁあぁぁぁぁぁ…………眠い」

「寝るな、そろそろホームルームの時間だぞ」

 言わなくても解るくらいに眠た気な彼女は『眠り姫』、または得意の水泳とかけて『スイマー』なんて呼ばれていたりもする。俺の人生の中で最もパジャマが似合う女の子第一位でもある。多分みんなもそう思ってるはずだ。

「…………うーん、あともうちょっとー」

「不味い、それは非常に不味いぞ」

 先程までしっかり(?)会話していたはずなのに、あれよあれよという間に完全に黒い目がとろぉーんとしていらっしゃった。このままだと『鉄壁』(顔を机に突っ伏して更に光が差し込まないように両手で顔を囲うようにガードしてしまう事)に入ってしまう……っ!

 何としてでも阻止せねば、と割とどうでも良さ気な抵抗を決意しようとした戸頃で。

「…………んー、」

 睡魔に完全敗北一歩手前の彼女が可愛らしく呻きつつ身じろいだ……と思ったらなにやら右手で机の横に引っ掛けた彼女自身のカバンを漁っているようだった。

「?」

「……あったー、んじゃほーい」

 彼女らしからぬイレギュラーな行動に頭の上に疑問符を浮かべていると、彼女がこちらに何かをゆっくりと投げつけてくれた。反射でその小さな物体を右手でキャッチする。本当に小さかった。

 (てのひら)で受け取ったその物体を見ると、

「ち、チロルチョコ!?」

「んー……、そーゆー事ー…………」

 そう言った直後、顔を突っ伏したままの彼女は『鉄壁』に入ってすぐにスースー、と静かな寝息を起ててしまっていた。再び信じられないものを見るような目で手のチロルチョコを注視すると、その特有のパッケージには彼女のカチューシャと同じ色のコンビニのテープが貼られていた。シールの綺麗さからおそらく、今日学校に来る時に寄って買ったのだろう事が窺えた。

 いや、例えそうでなかったとしても。

「……ミカンさん」

「スー…………、スー………………」

 貰えるとは思っていなかった相手から貰えたという事実は、中々に嬉しいものだった。

 なら、言う台詞は一つだった。

 彼女が始業式のあの日に名乗ったあのニックネームと共に。

「あり――」

「さてホームルームだぞー、今日の欠席者は――って明日葉! 隣の井上しっかり起こせ!!」

「…………………………、はぁー」

 すっかり『眠り姫』を起こす役に初日から依頼されていた俺は、時刻通りに入室して教卓に立つ担任に、なぜかとばっちりをくらった。

 ……なんでさ。



   #04



「んじゃ俺は購買と自販機行って来るわー」

「はいはい」

「あっ、行ってらっしゃい!」

「ん」

 時刻もお昼時。

 基本この学校は月々の第一・三土曜日に登校日が設けられている。のだがそれは午前中で授業は終わり、後は野となれ山となれ――部活の人は各部活動場所で部活、自学の人は各教室ないし図書室で自学、帰宅の人は特筆する事もなくただ帰宅……のはずだった。しかしなぜか今日は丸一日授業、詰まる所六時限みっちり学生しなくてはいけない日になっていた。

 で、実はそれを俺は学校に来てから知ったクチだったので只今全速力で購買&自販機ブースへとダッシュしていた。気分の不調も時間の経過で問題にならない程度にまで収まっていたので大丈夫。寧ろ妹も昼ご飯を忘れてるので合わせて二人分が懸かっているので、無理してでも行かなくてはいけなかったりする。

 さて。

 現在俺がいる南校舎二階から北校舎一階までを最速で行くには…………っと。

 教室を出て北校舎への渡り廊下に来た俺はすぐさま渡り廊下の窓に走って近付く。窓を開けつつ()を確認して人が通っていない事を理解してから――――、



 俺は窓から飛び降りた。



 幸い一階差しかないので少々の怪我の可能性しかない。躊躇なく落ち――着地した。足首に微かに痛みが奔ったがそんな些細な事はお構いなしに俺は北校舎へと再びスパートをかけた。

 待ってろよ昼飯――――っ!

 ――

 ――――

「……と言う間もなく着いてしまった…………」

 意外と呆気なくと購買ブースへと辿り着いてしまった。そういう話じゃないのは解ってはいるのだが物足りなさが残り火のように燻ってしまっていた。とはいえ他の人――いや軍勢が到着するより先に目的のブツを購入しておく。俺のは男爵いものコロッゲパンとメンチカツ(どちらもソース付き)に自販機で購入した野菜生活100、妹の分は……うーん、どうしたものか。取り敢えず甘味のあるものは除外して、野菜が摂れるものにしておくかな…………。

「……この場合どうしたら良い?」

「え? 希ちゃんならみんなから弁当を大量に貢が――分けて貰ってかなりの量食べる羽目になってましたよ?」

「は――――マジで!?」

「マジです本当です真実です。現に私が仲裁に入ってなかったら大変な事になってましたから」

 そう言って話し相手になってくれているのは妹と同じクラスで学級委員長を務めている後輩・御園あかりちゃん。妹より一回りちんまりとしたサイズで黒髪で三つ編みで眼鏡と委員長属性ガン積みで、妹(いわ)く最早マスコット扱いとの事。確かに解らなくもないどころか物凄く良く解る。

「はぁ――つまりそっちの心配はなさそうみたいだね」

「そ、そうなりますね……」

 それとここに委員長さんがいるのかというと、彼女は学級委員長であると同時に購買委員であったりするからである。実に単純明快だった。

「あっ」

「どうした?」

「あ、あの先輩っ」

 言うが早いか、踵を返そうとしていた俺に、委員長ちゃんは何か真っ赤な箱状のものを突き出してきた。見ればポッキーだった。

「今日は一応バレンタインですからね」

「……あ、ありがとな」

「いえいえっ、……ただ一個ぐらいなら恵んであげてもいいかなって思いまして」

「…………………………ありがとな」

「え? どうして急に落ち込んだんですか?」

「いや、なんでもないさ……ホントにありがとね、あかりちゃん」

「いえいえっ」

 そう言ってあーちゃん(命名・妹)は綺麗なスマイルを見せてくれた。俺はしっかりとその笑顔を目に約付けて嬉しさを噛み締めてから、それに見送られるようにしてその場を後にした。

 …………直後に自然気象のような人のカタマリが購買ブースに殺到したらしいとは、後日に会った彼女から聞いた話だった。



   #05



 さてここで不思議に思った者も少なくないのではないのだろうか?

 例えば――購入シーンの描写がぬるめだったとか。

 例えば――後輩とのくだりがやけに短かったとか。

 実はそれにもちゃ――――んとした、れっきとした大切で深刻な理由があったからだった。

 それはつまり。

「…………………………足首超痛ぇ」

 着地した時の痛みが、ここに来て急激に増長し出したのである。いや痛い痛い……中学時代にバレー部に入っていたのでこの手の怪我については多少の知識はあるのだが、それでもその場で何もなしで治せるほどの万能さを身につけたワケではない。よって自然に専門の――保健室へと足を運んでいた。厳密には片方の足を引き摺っている感じだが。

「少なくともコレはコールドスプレーは必須なケースだな……」

 他人事みたいにぼやきながら、俺は購買ブースの真上である二階へと向かった。忘れない内にあの二人(・・・・)にもメールして置こうと考え、胸ポケットから所謂ガラケー型の携帯電話を取り出して、メールの文章を簡潔にポチポチ入力していく。

『足首痛めたみたいだから保健室行ってくる』

 そこまで打ち出して送信を決定させると、『しばらくお待ちください』と表示される。やはりと言うか、この携帯オンボロ過ぎる。

 そしてその画面が切り替わらない内に、気付けば目的の場所に着いてしまっていた。俺は携帯を閉じてポケットに入れ直してから、扉をノックした。



 ――――これがあんな事になるなんて。

 Next(#06)

 ……>20:00

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