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幼馴染同盟 ~Are you BEST FRIENDs?~  作者: アオハル
01.APRIL _Something to know_
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第09話 「意中」―B

 ちょっと修正箇所があったので休み時間の合間に再確認して1時間ずらしての投稿。……合間に何してんだろ、私。

 時は、来た。

「――――ついて来れるか」

「……兄さんはどちらかというと理想を抱いて溺死する方です」

「??? なんの話かしら?」

 妹と母さんに幾つかの話をして、そんな会話を繰り広げながら、とうとうここまで――親父の部屋の前までやって来る運びとなった。別にリビングで当の本人が来るまで待機、でも良かったのだが……なんだか母さんの雰囲気がガラリと変わったので即座に決行する方を選ぶ事にした。

 気遣いは無用、元より情け容赦も不要。俺は遠慮も配慮も一切かけずに、ノックもなしにドアノブを捻る。ガチャリ、という金属の擦れ合う音がした直後には、押す力によっていとも容易くそのドアは開いてゆく。

 中に入ると、未だ荷物の整理整頓に忙しいのだろう――圧倒的な段ボール箱群が散乱していた。幾つかに関してはテープさえ剥がされていなかったものもある。奇跡的にか考えがあってかは知らないが、俺達のいるドア周辺を除くと、ほとんど人ひとり分しか通る事が出来ないような面積の床しか見えなかった。多分に、俺同様に必須だった仕事関連らしい資料・書籍らを詰め込む本棚や家に仕事を持ち帰ってきた時に使うのだろうデスクが容量を割いている所為もあるのだろう事が見てとれた。

「んー? どうした……ってアレ? もう夕飯の時間かい?」

 その段ボールやら本棚やらに目を向けていると、奥の方からやけに呑気な声が届いた。ヒゲ――いや親父だった。何かを盛大に勘違いしているらしく、自らの危機をただご飯を報せに来ただけだと思っているらしい。思わずして、邪悪な嗤いが声もなく零れた。

「……? なになにどうしたのさみんなして」

 返答がなかったのが不思議で仕方がないらしい。親父はまだそんな呑気な事を言って、ガサッゴソッとなにかに擦れたり「痛っ!」ぶつけたりしながら俺達の様子を見に来た。

 …………来た。

「どうしたの三人とも黙っちゃっ――…………………………え?」

 同時に、親父の方も何かにようやく気が付いたらしい。正直見たくもない顔を見てやると、完全に頬の筋肉が硬直し、引き攣っていた。冷や汗もかいていた。

「……えっ、え? なになにみんな急にどうしたのかなー? なんてアハハハハ…………」

 イイ台詞だ。感動的だな。

 ――――だが無意味だ。

「あら、『なんで』なんて言葉は」

「言わせねぇよ?」

「ですです」

 なーんかこの流れに乗るついでに調子にも乗っちゃってる奴が一名ほどいるが、この際は無視を努める事にする。

「をいヒゲ…………チカから聞いたぞ」

「ですです」

「ちか? ……ああ! 大山さんの娘さ――」

「明日、始業式なんだってな」

「ですです」

「――んだね、って…………え?」

「だから、少なくとも俺は明日から学校行かなくちゃならないんだてさ」

「ですです」

「…………え、えっとぉ、」

「で、だ」

 一呼吸置いてから、言ってやった。

「俺と希の新しい制服は? たしか違かったよな?」

「ですです」

 幸か不幸かチカが着替えをしていた時に見たのを覚えている。チカが着ていたのはどうみてもブレザーだ。後から来たミサも着ていたのはブレザーだ。どうみてもそれは他の県立と同様のものではなさそうだし、実際にチカに尋ねてみれば男子も所謂『学ラン』ではないらしかった。ってかとうの昔の一ヶ月前に親父の手から渡されたパンフレットをさっき再確認してみれば、ガッツリ記載されていた事が判明した。自分の部屋にまず寄ったのもその確認のためだった。……まさか妹が全裸で俺の布団に包まっていたとは流石に思わなんだがな。

「そう言えばアナタ、以前『学校が始まるのは着いた日から見て次の週だ』……なんて事仰いましたよねぇ…………?」

「そういやそんな事も言ってたな」

「ですです」

「…………………………、あー」

 一気に袋小路に入ったヒゲ……を見てると、動揺した時の行動と発言が俺と似てて地味になんか嫌だった。つーか妹、お前はもうちょい喋るか黙るかどっちかにしてくれ。

「で、俺達の制服はいつ届くワケ?」

「…………………………」

「制服は?」

「兄さんがまさか私の制服姿がそんなに見たいとは……制服フェチだったんですね」

「なんでそうなるんだ」

 妹が寝ボケた事を言ってる間にもみるみる内に顔を青褪めさせていくヒゲ。

「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」

 どれだけ沈黙していただろうか。

 すっかり傾いてしまった夕日の光が、この部屋にただ一つしかない窓から差し込んでくるようになった頃だった。

「…………………………申し訳ございませんでした」

 とうとう下手人が自白し、白旗を上げる事となった。

「……さて、殴るか」

「ちょっと待ったひどくない!? 今謝ったよね!!?」

「あらあら、こんな所に丁度良い鈍器がありますわね」

「か、母さん!? それ鈍器じゃなくてプレイステーション4だから!! まだ『Call of Duty』の最新作も開封してないんだから止め――――!!?」

 判決が物理的に下される瞬間だった。

 判決はディナーの前で。

 そして次回で第09話後編です。

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