第四話 『時間』と「事態」
信じられるか?
コレ、(物語開始から)未だ数時間しか経ってないんだぜ?
という事で第四話、START!
「お邪魔しま――……トールくん?」
おっかなびっくりチカの家に来たのは、他でもない。
三咲可憐――――ミサ。
栗色の……おさげとでもいうのだろうか?詳しくは判らない(何かフワフワしてる)が兎にも角にも似合っていることに変わりはなかった。お人形さんというか御伽噺のお姫様みたいな可愛らしい顔に小柄で小さな体。手足は柔らくも余分なものがない肉付きで、――
――また巨乳か。
コレが七年に少女時代を挟んだ幼馴染みの……
…………ゴクリ。
何だろうねココの巨乳率、特殊な地脈が通ってたりでもするのかね?ちょっと不憫過ぎるのでウチの妹と向こうにいる『アイツ』に分けてやってくれよ。
全体的な雰囲気が何か『はたらく〇王さま!』の〇ーちゃんみたいだ。マスコットと言うか保護欲がそそられゲフンゲフン。こちらもチカ同様、紺のブレザーに赤チェックのスカートが印象的だ。
閑話休題。
「ひっ、久し振り?」
ラフに接しようとして、久しく会っていなかったからか緊張して声が軽く擦れてしまった。だが向こうも似たようなものなのか何か俺の方を眺めてポーーーーッ、としていた。口から魂とか出てそうな感じだ。
訳が解らなかったので、取り敢えず周りの奴ら――後ろの三人しかいないが――に視線をやると、一人は微笑みもう一人は目を合わせて舌舐めずりして最後の一人はポカンとしてらっしゃるだけ。あ、ちなみに解ってくれていると思うが順番に友花さん、希、チカだ。……何にせよ、誰も事態の回復に努めてくれないようだ。
俺は思考停止したミサに声をかけた。
「え…………お、おーい」
反応なし。
目の前で手を振ってみても反応はない。
「ミサ!」
俺は勢い良く柏手を打った。
するとビクビクビクッゥ!と小動物のような反応をして(ちょっと可愛いとか思ってしまった)、慌てて我に返ってくれたようだ。
「ひゃっ、ひゃいっ!!?」
「おおっと落ち着け。正解だよ、明日葉透、トールだ。七年振りだな、ミサ」
顔を覗き込むようにして――――、って、え?
何か今度はアワアワし始めたぞ?
「――――――――ッ」
「お、おい」
「――――――――――――ッッ!!?」
シュボッ!とかいう音が聞こえてきた気がした。
彼女は急に顔を蒸気でも噴き出さんばかりに真っ赤にすると、
「お」
「『お』?」
「――お邪魔しましたぁああああああああああっ!!!!!!」
言うが早いか、全力疾走で敵前逃亡されてしまった。
えー…………、何故だし。
唖然とする俺と他女子三人。
「兄さんっていつからこんなだったのですか」
「いつも何も何の話さ」
「何にも話さず行っちゃったわね……」
「あ、あぁ……」
「で、今のとおるクンはミサちゃん見てどう思ったのかしら?」
「その獲物を狩る目で見るのは何ですか止めて下さい」
かくして、本日の課題だった「御近所挨拶・バージョン俺」は、お昼の数時間で怒涛の勢いで終了した。
…………何故だし。
# # #
そんなイザコザがあった後、俺達明日葉ブラザーズは大山家で昼食を摂らせていただき(チカ母特製ミートソーススパゲティマジうめぇ)、『幾つか』話をして、家に帰ることとなった。
いつの間にか空はオレンジ色に染まりかけていた。未だ三時なのに早いなぁ……。もう四月なのにね……。
そんな感慨に耽りながら、俺は妹の方へ向く。
「そーいや希、お前荷物整理は終わったのか?」
「もうとっくですよ。後は兄さんの部屋へ突撃するだけでしたし」
「何だかさっきのドタバタで助かったようなそうでないような……」
そんな当たり障りのない話をして、隣の我が家のドアを潜る。
「ただいまー」
「ただいまです」
「あらお帰り」
待っていたのはいつもニコニコ・マイマザーだった。
「…………なぁ、母さん」
丁度いい。『幾つか』の話を母さんにも聞いてもらおうじゃないか。
「どうしたんだ?」
自分の部屋で未だ荷物整理中の(多分最も嵩張っているのは仕事関係の資料とかそこらへんだろう)我らが親父が段ボールの山を掻い潜っているのだろう、ガサゴソと音を立ててリビングにやって来た。
埃が少しついた顔をこちらに向け、
「――――え?」
固まった。
「ちょっと待って、何で透と…………母さんが変な空気を出しているのかな?」
冷や汗を滝のように流し、頬を引き攣らせながら尋ねてきた。
「あら、何でとは」
「言わせねぇよ?」
「ですです」
何か一人調子に乗っている奴がいるが、この際無視する。
「え、何で僕が四面楚歌なの?」
「親父、…………聞いたぞチカから」
「あ、智香ちゃんと会ったん――」
「明日、始業式なんだってな」
「――だね、って、え?」
「明日から学校なんだとさ」
「……えっとぉ、それがどうし」
「アンタ、向こう出発する時、「学校は着いてから一週間後かな?」とかほざいてたよな?」
「えーっっとぉ……」
「聞きましたねぇ」
「ですです」
もうちょい喋れや妹。
「で、俺らの制服は?」
「…………」
「せ・い・ふ・くは?」
「兄さんは制服フェチですか」
「何でそうなる」
そんな事を言ってる間にみるみる顔を青褪めさせていくヒゲ。
沈黙を数秒挟んでから、
「…………申し訳ありませんでした」
土下座を敢行した。家主の貫録/ZEROである。
「……よし殴るか」
「あら、こんなところにW〇i-Uが落ちてますわね、オホホホホ」
「酷くね!?ってか母さん、それは落ちてないし新しく買ったばっかだから――っ!!?」
判決(物理)が下された。
# # #
ふぅ……。いい汗かいたぜ!
長い、私刑執行だった……。
さて。何だかんだでそろそろ早いところなら夕飯時だ。
そこで倒れてるヒゲを放置して(Wii-Uは俺も使いたかったので何とか壊さずに済んだ)、夕方なので他三人で夕食の麻婆豆腐を作っていた。
とは言え俺は火が苦手なので皿洗い担当なのだが。
……実は小学校の理科の授業でアルコールランプを使う時に、マッチを擦る際、勢い余って手をぶつけ倒してしまった。しかも運が悪い事にマッチには火が灯っていた。…………後はお解りいただけるだろう。新調した筆入れとノート(どちらも自前)を燃やし、授業は大混乱。担当の先生どころか教頭にも怒られてしまった。それからというもの、火と理科目がてんで駄目になってしまった。モル計算とか訳が分からないよ…………。関係ないね。
その分家庭科の調理実習とかでは皿洗いを率先してやった為、いつの間にか『洗浄の魔術師』などという有り難くない異名を頂戴してしまった。
そんなこんなで俺は目的のものを全て洗い終え、使えないとは解っても、妹と母の調理風景とレシピを頭にメモする作業に入った。まぁ、麻婆豆腐はもう憶えてるんだけどね。憶えていてもどうせ薀蓄語る時の引き出しにしかならないだろうなぁ。
しばらく経って、夕食が完成した頃。
親父がやっと復活したので「お前の飯ねぇから」と伝え、俺達は夕食をかっ込み始める。
「いただきます」
「お替わりは各自ね~」
「今日も丁度いい辛さに出来ましたよ兄さん」
「ホントにないのかよ…………」
知らないったら知らない。
……実はさっき新しい制服が届いたけど、知らないったら知らない。
偶にはカップ麺の味でも噛み締めていればいいんだ。
両親は休みだろうけど兄妹は明日から学校なんだぞ…………。
ちなみに希は『プ〇コレ』(略称)のこ〇かのような性格を目指しています。勿論R指定な要素な除外しますが。
ブラコンって良いよね!
お読みいただきありがとうございました。
※誤字脱字表現の誤り等がありましたら感想にてご連絡ください。
随時修正致します。
引き続き、『おさどう』をよろしくお願い致します。




