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幼馴染同盟 ~Are you BEST FRIENDs?~  作者: アオハル
00.ProtoType――試行錯誤(中途)
28/143

第十八話 「変動」

 また風邪をひいたっぽいです。

 

 ずずーっ。

 通称、『かみさくら』。

 入学式のシーズンに美しく花を舞わせて、景観を賑わせている『桜大通り』のメインでもあるその巨木は、根元にこの土地の土地神らしき石碑が存在している。

 いつからだか、その石碑に眠る『かみ』と近くに建っているかみヶ崎高校の『かみ』を掛けて現在の名で親しまれているのだと言われている。

 ……だとか有紀先生が授業中に解説していた。お前の専門は世界史だろうが。

 

 

 

 閑話休題。

 兎にも角にも、そんな歴史ある(っぽい)巨木・『かみさくら』の下。

 待ち合わせでもするかのように立ち止まり、佇む少女――大山智香チカがこちらを振り向いた。

 

 

 

   # # #

 

 

 

 既に散りきった筈の桜が周囲に再び散り始めた気がした。

 …………………………。

 ………………。

 …………。

 ――ゴスッ。

「ぅぐっ!?」

 呆然とする俺の我を取り戻してくれたのは、隣を歩くのぞみの肘打ちだった。

 思わず妹の横顔を見れば、心なしか普段は出さない冷気を感じた。自分の部屋で起きた密室事件に気づいた瞬間より怖くなった。

「……兄さん」

「……ハイ、ナンデゴザイマセウカオゼウサマ?」

 ゴズッ。

 固まりながらす尋ねると、肘打ち一丁入りました。そこ骨だから結構痛いんですケド……。

 俺が声を出さずに呻くのもお構いなしに、マイペース・のぞみは俺にコソッと耳打ちをしてきた。

「自転車は私が押して行きますから兄さんは行ってあげて下さい」

 ポンッ。

 そんでもって俺の背中を先程とは打って変わって優しく前に押し出すように叩いた。

 俺は軽くよろけながらも、チカの所へゆっくりと歩き出した。

「はぁー……」

 妹の溜め息が聞こえた気がした。

 

 

 

   # # #

 

 

 

 近づいていく内に解ったが、今、目の前にいる少女チカはいつもの棘のある雰囲気が全くと言って良い程になかった。

 三歩、二歩、一歩。

 顔を上げると乙女の表情が俺の目に映る。綺麗に潤む漆黒の瞳も少し朱に染まった端正な顔も見えてしまった。

 ……………………あれ?

 あれれー?おかしいなー?

 脳内で『〇akemagic』が流れ始めた。

 マジでku ku lucy。

 ちょっと待て。落ち着いてるか俺。ひとまず冷静になろうぜ。

「ひっひっふー」

「女性の前でそれは最早セクハラよ」

 いつもの批難気味な声が俺の耳――から頭に届いた。

「ああ良かった、いつものチカだ」

「……どういう意味よ」

「いやー、一瞬大人しめな美少女だと勘違いしちまったぜ。あぶねーあぶねー」

「ホントにどういう意味よソレは!!?」

「うお、危なっ!!?」

 思いっ切り声に出していたようだった。

 右のおみ足から一閃、俺のこめかみ目掛けて蹴りが放たれた。俺は慌てて右手でやって来た足首を受け止める。

「え、あ、ちょっ、」

 チカも掴まれるとは思わなかったのか、やや体勢を崩しそうになって――――

 

 

 

 あ。

「パンツ見えてる」

 細やかな刺繍の入った、ちょっぴり大人な青いパンツ(ここはパンティーと言った方が良いのか?)が赤と黒のチェック柄のスカートの中からこんにちはしていた。こんにちは、今日も良い天気ですね。

「――――――――――!!!?」

 また声に出してしまったようで、右足を支えているチカの顔が蒸気を発しそうな位に真っ赤になる。シュボッ!って音も聞こえて来そうだった。

「は、離しなさいよ――――っ!!!?」

 突然の羞恥にチカが慌てて右足をジタバタし始め、体のバランスが俺諸共揺れた。

「ちょ、動く――――」

 警告も遅く虚しく、俺らは舗装されている硬い歩道に転がり倒れた。

「うぎゅ」

 何かに顔をぶつけた事によって喉から変な声が絞り出された。

 痛たたた……。

 膝を勢いよくぶつけてしまった。

 鼻にも鋭い痛みが奔り、思わず目をつむってしまう。だが幸いにも顔は柔らかいものに包まれたから本当に痛い思いはしなくてすんだよ……うだ?

 ん?

 ヤワラカイモノッテナンダ?

 顔全体に柔らかく、そしてやけにツルツルした肌触りがあったのだ。ちょっと良い匂いもしたがさておき、その触感は布地のようであった。

 全力で嫌な予感がした。ソースは四月の俺。

 恐る恐るといったていで俺は反射的に瞑っていた目を開いた。

 

 

 

 目を開くと、視界いっぱいに青が拡がっていた。

 ならば、今、俺が顔を押しつけている部分っていった――――

「……兄さん」

「は」

 俺は、考えるのを止めた。

 

 

 

   # # #

 

 

 

「兄さん何ですかそのT〇 LOVEるでダークネスな感じは。それは私に(以下略)」

 等々と妹が意味不明な説教きょうじゅつをしている近くで、蹲って羞恥に震えている幼馴染みの前で俺はその場で土下座をしていた。

 言われなくても解ると思うが俺が顔を突っ込んだのはチカのスカートの中だった。……後は察してくれ。

 ちなみにそこから慌てて顔を離した俺はその後、さっきぶつけたのがきいたのか鼻から真っ赤でO型なあの液体を流してしまい、更に追求される事になった。

「本当にスイマセンでした大山智香様」

「……………………」

「――って、聞いてますか兄さん?」

 そんな中、

 キーンコーンカーンコーン。

 と、何のひねりもない聞き慣れた高校のHR開始チャイムの音が聞こえて来たが、俺らの混沌カオス極まる状況下には無意味な合図だった。

 

 

 

 俺は、いや俺達は、完全無欠に遅刻した。

 

 

 

 (正に一線を)かくして。

 この出来事というか、「転校生と『雪女』が一緒に遅刻して登校して来た」という事実、は新学年にして第二の事件となって噂が伝播していく事になる。

 その後、俺は『転校一週間で口説く男』という(比較的(・・・)外向きな)肩書きと、

「週マッハ」

雪女の男(スノーマン・イーター)

 なる馬鹿丸出しな仇名を同級生クラスから頂戴するのだが……この時の絶賛DOGEZA☆中な俺含む三名はまだ知らない。

 ついでについでに、教室のミサがいまだに来ない俺達を心配してオロオロしていた事も、なんだかんだあって二人一緒に登校してきた時には教室の端で密かに気を失っていたりする事も、俺は知らない。

 

 

 

 ……「週マッハ」って何だよってか誰だよ言った奴!出てこいや!!

 お読みいただきありがとうございました。

※誤字脱字表現の誤り等がありましたら感想にてご連絡ください。

 随時修正致します。


 引き続き、『おさどう』をよろしくお願い致します。

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