第十三話 「悩乱」
お盆明けちゃったよ……あぁああああああああああ……。
そんなテンションを無理矢理上げようと、音楽をランダム再生したら『〇をかける少女』の『〇わらないもの』が流れて……。
はい、始まります……。
「失礼しまーす」
教室のドアを開けると、総勢二十二名の女生徒の下着姿が拡がっていた。
白、白、ピンク、紫、白、黒、白、ピンク、水玉etc……いやちょっと待て何の話だ。
時間停止する俺&二十二名。気分はいつだかの〇十九遊馬のそれだった。
意識が早く現実に戻って来たのは俺の方だった。
「……失礼シマシタ本当ニゴメンナサイ」
迅速に後退し、速攻でドアを閉めた。
瞬間。
「「「「「「「「「「きゃぁああああああああああ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
スピーカから響いたような悲鳴(?)が轟いた。
通りで大勢の男子とすれ違うし今この廊下の人気がゼロだったんですね。思わずドアに手をついておサルさんの反省のポーズをとってしまう。
しかしお構いなしに目の前のドアが開かれた。
「ストップです、兄さん」
「「「「「「「「「「「兄さん!!!? 」」」」」」」」」」」
ハモってしまった。
まさかの向こうからの再邂逅だった。
ってかウチの妹だった……下着姿の。
「ちょ、希、その恰好で廊下に出るんじゃありません!!」
着替え中に入って来た俺の言う台詞じゃねぇけどな!!
ここで白の清楚感が似合いますね!なんて言ったら実刑ものって言うよりもさっきの俺の登場が既に犯罪ものだったので、これ以上の棄損は御免こうむりたい。覗き魔も嫌だがシスコンの汚名も相当嫌なのだ。余談だが下着ソムリエは褒め言葉だ。
なので起こす行動は。
「兄さん私に何の――――むぐっ?」
俺は妹の顔を傷つけず痛みを与えないように掴み、右手に持ってきた折り畳み傘を押しつけ、そのままの勢いで妹を教室に押し込んだ。そして急いでドアを閉め、二年三組に走って帰る。断じて敵前逃亡なんかじゃない。
……様々な思いがないまぜになって、何だか色んな意味で泣きそうだった。
要約すると。
「ゴメンわざとじゃなかったんだ一年一組の女子本当にスマンかったありがとう」
……廊下に人がいなくて良かった。
# # #
兄さんが逃げてしまいました。ぶー。
思わずフグみたいに膨れていると、三つ編み眼鏡の委員長御園あかり(あーちゃん)が声をかけてきました。ピンク良いですね。
「あ、あの……さっきの人が希ちゃんのお兄さん……?」
「そうです愛しの兄さんです」
私は胸を張って言います。えっへんです。……ない胸を張るって結構凹みますね。
一方のあーちゃんは「愛しの」という言葉に反応したらしく、顔を朱くしてモジモジしています。小鹿みたいです。私が男の子だったら食べちゃってますね、性的に。
私の思惑に気づかず、あーちゃんが呟きました。
「ぇ……兄妹でそーゆー事は……」
「後は兄さんの了承で解決です」
「だから、その、兄妹じゃ……」
「愛の前に法律などどうとでもなるのです」
そんな話をしていると、
「そんな事より。アンタの兄貴、思いっ切り覗いてきてたんだけど……」
そういうのは我がクラスの清涼剤(≠癒し)こと笹野小雪が冷気と共に割って入ってきました。「そんな事」ではありませんよ、これは女の幸せの話です。
「私の兄さんはそういう体質なのですよ」
「どんな体質よ」
「ラッキースケベです?」
「それって要するに女の敵よねっていうか私に訊かないで頂戴……」
思わずといった調子でこめかみを押さえるゆっきー。一見クールな人の困り顔って結構可愛いですね。黒の下着が似合います。
入れ替わるようにして別の女の子が私に質問してきました。
「ねぇ、――――」
そしてクラスの混乱は私を中心にさらに加速していきます。
# # #
「はぁ~~~~っ…………」
教室に生還する事が出来た俺は買ったパンを速攻で胃に押し込んで『野〇生活』で一気に流し込み、机に突っ伏していた。……何だろう、始業式の日位の疲労が数分で訪れた気分だった。
「んにゃー、どうしたのさー」
珍しく起きていたのか、轟沈していた俺に井上実夏が声をかけてきた。
……いや、ねぇ?「妹の教室に傘届けに行ったら女子が着替えてた☆」なんて言ったら流石のマイペースが売りのミカンさんにもガチで引かれる事間違いなしだろ。相対性理論のその先に行けば話は違うのだろうが、だったらオブラートに包んだ方が容易な話だ。
突っ伏した状態のまま、少しずつ眠気で働かなくなってきた頭で俺は言った。
「……いや……けしかりませんなのでタイムマシンが欲しいなー、と」
「ほえ?」
# # #
気がつくと俺は車の後部座席にいた。
前を見れば運転席と助手席にそれぞれ父さんと母さんが座っていた。夜の為車内は真っ暗で二人の姿はよく見えなかったが。
よく解らないが車の速度が段々と速くなってゆくのを感じた。
いや、この速度はおかしい。出し過ぎだ。
慌てて運転する父さんに声をかけようとして――――
まずいっ、という声と共に光が――――
「起きろっ!!」
頭に衝撃が走った。その勢いで何か硬いものに顔をぶつけた。
「ぁ痛っ!?」
鼻と頭を押さえて顔を上げると、
「……何だ、疲れてるのか?大方徹夜して本を読んでいるからではあるまいな?」
出席簿を持った東有紀子が呆れた顔をして俺を見下ろしていた。
どうやら完全に寝ていたようで授業開始の合図にも気がつかなかったようだ。
……しまった。今日は入れ替えで三・四時限目は世界史だったな。あちゃー。思いっ切り抜かりがあった。
有紀先生は溜め息を零しながら言った。
「とにかく、お前は今週は『一点』追加な」
そう、世界史の授業で寝ると週末の課題が一点(一つ)増えるのだ。
俺は大きな溜め息を吐き、頭を掻いてから言った。
「その一点はテストの点数に持ち越してくれませんか?」
言った瞬間、持っていた出席簿で思いっ切り叩かれた。
……叩かれながら今のご時世これはやっちゃ駄目じゃね?とか場違いな事を考えていた。
教室で爆笑が起きた。凄く恥ずかしかった(小並感)。
# # #
あれからは叱責されることもなく、淡々と授業と時計の針は進んだ。五・六限目は終わり、時は既にHRに差し掛かっていた。
そして、
「――……今日は豪雨の予報が出ているから特別活動はなしだ。雨が降らない内に気をつけて帰れよ。では、解散だ」
そのHRも、今終わった。
「さて、……」
俺は立ち上がり、リュックに少ししかない荷物(筆記用具+ノート+下敷き)を詰め込んで肩に掛ける。
予報は5時からとの事なので、四時の今からなら歩いてでも間に合うだろう。
チカとミサはいつものように校門で待ち合わせをすることだし、先に自転車を取って来ておこう。
そう思って教室から出ようとする俺の手を誰かが掴んだ。目の前の不幸どころか実在しないであろう異能の力にも対処出来ない右手を引っ張られ、俺はよろけながらも教室に留まらせられる。
振り向くと犯人はチカだった。
何だよ、と訊こうとする前に、チカは俺の耳元に顔を近づけってオイオイ顔が近いですよ智香さん!?
そんな俺の動揺はお構いなしにチカは蚊の鳴くような声で囁いた。
「……あのさ……っ、今日の帰り、ウチ寄ってくれない……?」
顔を朱に染めて上目遣いにそう言ってくる彼女はとても――――
――――――――――って、え?
ど う い う 事 な の ? ? ?
〇EXALの『〇スターピース』はテンション上がりますね!
かっとビングだ、オレ!!!!
そんな私は〇フン三積み≪〇星≫デッキ!……普通三積みですよね。
お読みいただきありがとうございました。
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随時修正致します。
引き続き、『おさどう』をよろしくお願い致します。




