第十二話 「平時」
アレ、いつもより時間がサクサク動いてるぞ?な今回。
とにかく開始!(前書きが浮かばなかった)
こんなゲームをプレイした経験はないだろうか。
(臨場感を出す仕様なのだか詳しく判らないが、)主人公の名前が決まっていなくて、事前に用意された名前か、あるいは自分で入力した名前をつける事が出来るゲームを。時には性別どころか顔なども自由に自分の好きなように変換出来得る、そんなキャラクターメイキングのあるゲームを。
――――自分は臆病者だ。
マンガの主人公のように枠線の中で大暴れする事も出来なければ、アニメの主人公のように躍動感たっぷりに心を震わせられる名言を届ける事も出来ない。周囲の人間に恵まれている自覚はあるがそれは自分の力ではない。大抵の人間なら自分と立場が入れ替わっても十全、いや十二分な活躍をして今以上の「何か」に変えられるだろう。
だからだろうか。
時々、まるで自分がその用意された中で選ばれた名前のような気分になるのだ。
# # #
入学式から早一週間。大通りのもそうだろうが週明けで桜は散りきっており、気温と南中高度の上昇により早くも春が過ぎ去ろうとしている。とはいえいまだ少しは肌寒いので厚めなブレザーは脱げないのだが。
空を見上げれば青一面の中に幾つかの白が浮かんでいた。テレビの天気予報でアナウンサーが何か言っていた気がするが忘れてしまった。
俺は最早体の一部のように感じられる緑の自転車を漕いで学校へ向かう。何処か錆びついているのか時々ガチャガチャと金属質な音がする。朝の涼しめな空気が顔に纏わりつく。すっかり切り忘れていた髪を少し億劫に感じた。
ちなみにチカとミサとは朝の登校は別にしている。それは単に俺が本屋に寄りたいからだ。本屋に着いてしまえば俺は我を忘れてしまうという事を俺自身よく解っているので、最悪遅刻間際になり二人に迷惑を掛ける可能性を考えて断念したのだった。
溜め息を吐き出しながら俺は思いを馳せる。
勿論、週の初めに告知されるおすすめ本についてだ。
# # #
何だかんだ言いながらも、結果を見れば遅刻したのは始業式の日一日だけ。普通はそこを一番遅刻いないように心掛けるのだろうが。
本屋から全力疾走で駅前の桜が散った桜大通りを通過する。そのまま駐輪場に突撃せんばかりの勢いで向かい、本当に衝突する前にブレーキを掛ける。スタンドと施錠をしっかりし(今の戸頃この学校で盗難の類の話は聞いていないのだが)、南校舎の昇降口へ走る。
急いで上履きに履き替えて教室に辿り着く。時計を見やると朝のHR開始の十分前を指していた。
俺は先週ですっかり慣れきった窓際の自分の席に座り、鐘の音がなるまで隣に倣って寝る事にした。
自分の席に足を運ぶ途中で――毎朝恒例のものと化している――複数の視線に気づく。
自意識過剰を疑いながら見ると今日も廊下側に最も近い列の先頭のミサと俺の席のある列の最後尾のチカと目が合った。前者は微笑みを返してくれ、後者はバツが悪そうに顔を逸らしてくれた。何でしょうねこの(温度)差。まぁチカは『雪女』(笑)だも――ッ!?……冷凍ビームを彷彿とさせる視線を感知したのでこれ以上は止めておこう。俺はいつもの景色へ近づいていく。
目的の席に着き、椅子を引いて座り、机に突っ伏す。本当に慣れた動作だった。
瞼を閉じて視界を暗くしてから、俺があの二人以外のクラスメイトの視線を頂戴したのかようやく解った。
……俺、教師が出入りする方でナチュラルに教室に入ってきちゃってたのか。どうでもいいけど。
俺はまどろみの世界へ沈み込んでいった。
# # #
HRで有紀先生が「先週も言ったと思うが」という枕詞と共に曰く、今日は授業の入れ替えがあるらしい。全教科(課題に必要なもの除く)を置き勉している俺に抜かりはなかった。
一時間目は数学。
担当はあのネチネチお小言をお送りする小姑学年主任だった。最初に知った時は何か納得してしまった。
肝心の中身に関しては、はっきり言って教科書を見てれば無視して構わないものだった。まるで論文の発表かと思えてくる解説に参考書から抜粋したかのような例題を出席番号順で指名してくる。現時点では皆正解を当てているが間違えた暁にはねちっこく言われるのが目に見えている。それゆえか渾名はそのまま「小姑」だった。一応言うと主任は中年の銀行員みたいな男だ。『〇沢直樹』のエキストラにいそうな感じだ。
「では一番の明日葉、この展開式におけるエックスの三乗の項の係数は?」
指されてしまった。俺はすぐさま黒板の式を見、少しの逡巡の後に言った。
「はい。百六十です」
「うぅむ……」
何だよその本物の骨董品を見た鑑定士のような唸りは。正解かどうか言ってくれよ。
やっぱこの人小姑だ。しかも前世は明治時代くさい。
・
・
・
そ れ よ り も 。
「すぴー」
気持ち良さそうに寝ているお隣さんは注意しないんですかね?
風とかで不可視の状態にしてたりするのかこれは。まるで俺にしか見えていない、幽霊のように授業が進むのが空恐ろしい。……いやでも幽霊でさえちゃんと認知されているしな(ソースは〇地蠟花)、本当に結界とか張ってあるのかもしれん。
そのくせ指名された時には起きており、眠たそうにしながらも(それに関しても周りはノータッチ)しっかり正解を答えるのだから凄まじい。ちょっとカッコイイとか思ってしまっていたりした。
俺もそんな特技(?)が欲しいぜ……。
進みゆく授業を風景のように捉えながら俺はそんな事を考えていた。
# # #
三時限目の終了を告げるチャイムが鳴った。
「うむ、ここまでか」
残念美人・東有紀子はそう言うと、手を振って早足に教室を出て行った。……アンタ、絶対購買早く行きたいだけだろ。俺もだがな。
そう思って立ち上がり廊下に出てふと何気なく窓を見ると、どんよりとした雲がこちらの上空に近づいていた。
「あっ!ねぇトール、――」
あぁ、今日は雨が降るかもなんだっけか。
「あ、あああのさ、お昼なんだけ――」
天気予報を思い出した俺はある事を思い日頃からリュックに詰め込んでいた折り畳みの傘を持って購買スペースへと駆けて行った。
「って、ねぇアンタ聞いてるの!?」
俺たちの戦いはまだ始まったばかりだぜ!
「ねぇ、って、ちょ――――私の話を聞きなさいよーーーーっ!!!!」
# # #
激戦の末、大人気の『男爵じゃがと牛肉のソースコロッケパン』と『パン屋さんのえくれあ』(平仮名の『えくれあ』が重要)を獲得した俺は、ついでで寄った自販機で購入した『〇菜生活』のパック版にストローを刺して飲みながら一年一組へ向かう。無論、ナンパではない。確かに入学式を見たらレベル(少なくとも俺の目は最近のミスコンの基準よりは上の筈)が高い可愛い女の子が結構いるしな。三つ編み眼鏡とかいいよな、昔のサチを思い出す。……いや決してロリが好きなんじゃない、ロリ「も」好きなだけなんだ信じてくれ。
閑話休題。
兎に角、妹に先程から持っている傘を妹に届けに一年一組に来たのだ。
……でも何か嫌な予感がビシビシするんだよなー、一年一組……。
俺は不安なまま教室のドアを開けた。
あ、また前のドアから入っちゃった……。
昨日の『花〇語』良かったですね!〇地蠟花Changが可愛い!!
私は〇コ動に一般で齧り付いてました。一回も追い出されなかったという奇跡。
〇良々木クンを見てると自分の変態性理論はまだまだだなと思いますね。(どんな感想だ)
完全に余談ですが『傾物〇』が一番好きでその次の次に好きだったりしたのでこの映像化は嬉しいです。……二番目に好きな『傷〇語』はいつなのでしょうか、私、気になります!
お読みいただきありがとうございました。
※誤字脱字表現の誤り等がありましたら感想にてご連絡ください。
随時修正致します。
引き続き、『おさどう』をよろしくお願い致します。




