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幼馴染同盟 ~Are you BEST FRIENDs?~  作者: アオハル
00.ProtoType――試行錯誤(中途)
20/143

≪夏熱≫【extra】

 時間には勝てなかったよ……。

 なのでスイマセン、一話だけです。

 その代わりですが、いつもよりちょっぴり長くて群像劇な内容です。文章能力?いつもを参照で。

 ……やっぱり勿体ないし、夏限定で消すのは止めようかなぁ……。

 

 じゃ、始まるわよ~!(友花風)

「ルールは二十五点一セット限りでジャンプしてのスパイクはあり、と言う事でどうだ!!」

「何でやる事が決まったみたいな口振りなんですかね……ただ条件は貴方が提示したにしては良さそうなので付き合いましょうか」

「俺を何だと思ってるんだ」

「色情魔」

「よし決めた俺が勝ったらお前に今までの名誉棄損を謝ってもらおうじゃねぇか」

「……そうですか」

「何そのちょっとの間。凄く怖いんですけど……やっぱ勝ってから決めるわ」

「!!…………そ、そうですか」

「だからその間は何だよ!?」

 

 

 

 かくして。

 俺&ミサVSサチ&チカ&希のチーム編成で、蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

>水無瀬幸side

 

「……大丈夫かしらねこの勝負」

「……どういう意味でしょうか?」

 大山さんの呟きに私は問いかけました。

「だってアイツがもちかけた勝負でチームの編成もアイツが決めたのよ?」

「そうですね……しかし失礼ながら三咲さんにそこまでの技量はないはずです……よくて私位のポテンシャルだと思いますね」

 先程までのプレーを見ていてそう思いますね。

「ちょっと待って下さいです」

 ここで明日葉……の妹さんが手を挙げて割り込んできたので言葉で先を促す。

「何でしょう?」

「先輩達は三つ、兄さんに関して重要な事を忘れています」

「「?」」

 妹さんが親指・人差し指・中指を順に立てながら言う言葉に私――と大山さんが揃って疑問符を浮かべていた。

「まず」

 中指を折り畳む。

「兄さんは自分で決めた勝負事……いえ約束事には全力を注いできている筈です。『どうあろうと叶える』。その姿はお二人の記憶にも新しいと思うのです。一つ目はその点です」

「「確かに……」」

 その話を聞いて思い出すのは『あの時』。そうだ。彼は大事なところではいつもと違う、油断も隙もない真剣さを纏って私を助け…………コホン。

 隣に視線を送ると大山さんも似たような経験があるのか、記憶の世界から慌てて戻ってきて「そ、そうね」と言っていました。……私も同じ顔をしていたのでしょうか?

「次に」

 真剣味を帯びた表情で親指を曲げて、妹さんは告げる。

 

 

 

「私が兄さんを愛している、という点です」

 

 

 

 ……………………はい?

「「え、えぇっと……」」

 またもや揃って声を上げる。思考が何処かへ旅行に出かけてしまった。

 そんな私達を敢えて無視するように妹さんは小首を傾げながら――爆弾を投下してきた。

「はて、先輩達は違うんですか?」

「「ゴホッ!!!?」」

 あんまりな発言に吐血しそうになりました。

「い、いえ、そういう事ではなくてですね……」

「なな何をイキナリ……」

 い、以前から思っていましたが明日葉希、この人は私の天敵だ。間違いない。確かに彼には――――

「「そういう事じゃないのよ!!?」」

「さいですか」

 ハモりツッコミをあっさりとスルーして妹さんは説明する。

「という事はですよ、私は先輩達のチームにいながら兄さんの味方である工作員スパイとして機能するかもしれないという事なのです」

 そうだ。妹さんの彼へのあ――忠誠心は尋常なものではない。だとすると。

「兄さんはその事も考えてのチーム編成なんでしょう。チカさんと組まずにミサさんと組んだのも私達に一方的な攻撃への罪悪感を持たせる為でしょう」

 汚い。流石彼は汚い。確かに三咲さんへ集中攻撃はオーラ的な何かでしづらいかもしれない。

「…………ホォ――――、」

 ……隣から冷気が漏れ始めました。

 妹さんも何か感じたのかブルッ、と肩を震わせて話を逸らすように続け出します。

「そして三つ目ですが、」

 ここで私にビシィッ!!と効果音が聞こえてきそうな位の勢いで私を人差し指で指さし、……私を?

「サチさんなら知っている筈です」

 私が知っている?

 

 

 

「兄さんは県大会まで行った程の『経験者プレイヤー』ではないですか」

 

 

 

 

 

>明日葉透side

 

「へっくしっ!!」

 先程から数えて三度目のクシャミ。

「大丈夫トール君?風邪引いちゃったの?」

「いや、暑いからそれはない筈だが……?」

 そう言いながら状況を改めて見てみる。

 ……ぶっちゃけ目が醒めて冷静になったら論理のすり替えどころの話じゃないよなこの流れ、って気づきました☆

 相手の言い分が怖いのでもうやりたくなかったりします、本当に。冗談抜きで奴隷以下の扱いをしてきそうだもんなー(俺限定で)。でもアイツら、何か話し込んじゃっていかにもな殺気出してるから「やっぱ止めまーす」なって言ったら。ブルッ。

「どう?勝てるトール君?」

「あ、あぁ……そうだな。ミサってセッター出来る?」

 尋ねると「ほえ?」と首を傾げてくれた。プルンプルンしてるぜおい。

「えっと、トスは上げられる?」

「あ、ああ!トスなら上げられるよ……ってどうして?」

「いや、アイツら絶対俺だけ責めそうだからな」

 想像が容易過ぎる。ミサもそうらしく、「あははは……」と苦笑。うん普通はそういう対応だよね。というか技術とか抜きでミサをこちらのチームにしたのには責める時に生じる罪悪感を減らす為だしな。経験者の俺が混ざっているんだ、バランスも丁度良いだろう。ってか視界の中でプルプルされたら堪らないいぞもっとや……ゲフンゲフン。

 とはいってももう勝負する事は決まっているのだから、大人気(子ども気?)なくても本気を出してやりますか。

 特に手首足首のストレッチを入念に行って、俺達はシートからサチのチームがいる砂場コートへ向かう。

 さて、

 『宵宮よいのみや中の〇向』と呼ばれた俺の力を出そうじゃあないか。

 ……二番煎じもいいところだけどね。

 

 

 

 

 

>大山智香side

 

 正直油断していた。言われても実感なんて全然湧かなかった。

 体育祭で応え……観戦はした事はあったけれど、まさかこれ程のものだとは思わなかった。

 そんな事を考えている内にも、

 ――――パァン!

 何の変哲もないビーチボール(税込六百四円)が銃弾が放たれたかのような音と共に私の横を通り過ぎていった。しかしこれは強く打ち過ぎたようでアウトだった。やっとの二点目だった。今のところ相手のミスでしか点数が入っていない。対して相手はもう十点だった。

 さっきから一応はブロックはしているのだが如何せん相手は経験者。どうしてもこちらのコートにボールは押し込まれてしまう。後ろの二人が何とか上げてくれるのでスパイクを打つのだが今度はブロックが堅い。まるで壁だ。

 ようやく現状を悟った私は水無瀬さんを見て、

 ――――ゴメン、流石にこれは勝てない……。

 そう、思ってしまう。

 

 

 

 

 

>三咲可憐side

 

 ふわぁああ……カッコイイですトール君。

 最初の私のサーブはあらぬ方向に飛んで行ってしまって相手に点をあげる形になってしまったのですが、トール君は「大丈夫」と言ってあっという間にもう十五点対三点にしてしまいました。

 ……ちょっとやり過ぎな気もしますが。思わず苦笑いです。

 でも、あんなに生き生きと真剣に頑張るトール君を見ていると思わず……。

「――サ、ミサ?」

「ひょえっ!?」

「ボーッ、としてたが大丈夫か?」

「だだ大丈夫!!」

「ならほら、次はミサのサーブだぞ」

「あっ、解りました!」

 よーしっ、今度は入れますよ!!

 

 

 

 

 

>水無瀬幸side

 

「ていっ」

 可愛らしく三咲さんがサーブを打ちます。本人には悪いですが先程までの末恐ろしいサーブやスパイクと比べたら救いとさえ思えます。

 ……負けたら一つ言う事を聞かなくてはいけない……。

 もしかすると彼は私を…………。………………。

 ~~~~~~!!!!

「――っ、水無瀬さん!!」

「はい?――――ぁ、」

 気付いた時には遅く、二十点目のスパイクがコートに突き刺さってしまいました。

 

 

 

 ……私は何をさせられるのでしょうか。

 

 

 

 

 

>明日葉希side

 

 あっという間に二十点。流石兄さんです。

 このままでは私達は圧倒的大敗を喫してしまいますね。サチさんを見れば身体が少し震えている気がします。最悪の場合、彼女は【自主規制ピー】された挙句【自主規制】ですしね。

 ……ですが。

「させませんよ兄さん」

 兄さんの【自主規制】を【自主規制】したり【自主規制】するのは私の役目なのです!

 私は舌舐めずりをして二人にも話していない、『禁断の作戦』を実行に移す。

 

 

 

 

 

>明日葉透side

 

 あと五点。これで勝利だ。

 ……何か目に見えてサチの戦意が下がっているように見えなくもないが別に罰ゲームは実行する気はないのでこのまま勝ってしまおう。

 そう思いながらチカのスパイクを丁寧にレシーブしてミサに送る。ミサは拙いながらもやや慣れた動作で俺が送ったボールをトスで上げてくれる。

 おっし、ナイストス。

 チカがブロックしようとジャンプしようとする。

 同時、俺はボールに追いつくように踏み込んで――――

 

 

 

「――させませんよ兄さん!」

 その時だった。

 妹の声が聞こえたと思ったら、

 

 

 

 シュルッ……。

 変な布擦れ音と共に、ネットを挟んだ目の前に青の布地に隠されている筈の二つの肌色の塊が出現した。

 プルンッ!!とか効果音が聞こえそうな程に荒ぶる『それ』が視界に入った瞬間、俺の中で時が止まった。意味が解らず、上に下に震え揺れる『それ』の踊りから目が離せなかった。頭が凍りついている間に視界の端でボールは俺の頭上を越え、俺ら側のコートに落ちた。

 跳躍どころじゃなかった。本当に何が起きたかてんで理解出来ない。

 呆然とする俺を動かしたのは、鼻から流れたものだった。汗だと思って手で拭いてみるとそれは赤かった。鼻血だ。

「……………………………………………………え?」

 もう一度前を見て、ようやく脳が認めた。

 

 

 

 目の前のチカが上半身裸だった。証拠はいつの間にかチカの後ろにいた妹がこちらを見て青いビキニの紐を掴んだ手でピースするそれだ。何してんの?

「え?」

 スパイクした本人は俺がスパイクを打ちに来なかった事に疑問を持っただけで、事態に全く気づいていないようだった。いや、俺以外に気づいているのはいな――――

「ちちチカちゃんそそそそれ」

 ――――ミサも気づいたようだ。

「――――――――――はい?」

 サチも気づいた……のかなアレは?

 そして。

「え?」

 最初に皆が声を上げて固まっている現状に気づき、

「は?」

 次に俺が鼻血をおさえて自分を見つめている事に気づき、

「へ?」

 最後に上半身をおさえる何かがないと気付き、

「……っき、」

 ――――ようやくチカは事態を理解したようだ。

 

 

 

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 高級耳栓必須の絶叫を提供してくれた。

 その勢いに逆らわずに。

 チカは左手で胸をおさえ、

「こぉの…………っ、」

 右手で拳を握り。

「馬鹿ぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 全力の右ストレートをネットごと俺の鳩尾に叩きつけた。

「――――――――――――――――――――!?!?!?」

 声も出なかった。

 そのまま俺は意識をフェードアウトした。

 

 

 

 こうして。

 この勝負は犠牲者二名(内一名重傷)を出し、中止ひきわけという形で幕を閉じた。

 

 

 

 余談だが、帰り道は女性陣に一車両分間を空けられた上に俺とチカは二、三日会話出来なかった。

 ……何でさ。

 全然夏『休み』の時期じゃない件についてorz

 

 お読みいただきありがとうございました。

※誤字脱字表現の誤り等がありましたら感想にてご連絡ください。

 随時修正致します。


 引き続き、『おさどう』をよろしくお願い致します。

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