【番外編】Trick or treat! "jack-o'-lantern"
短め。
「仮装大会?」
「ですです」
朝食時の事だった。
朝からかぼちゃの天ぷら、かぼちゃの煮付け、それからじゃがいもの代わりにかぼちゃを四角くブロック状に切って投入した豚汁と。かぼちゃのオンパレードな献立が埋め尽くさんばかりにテーブルに並べられている眼前の光景に目を剥きながら尋ねると、俺の茶碗にご飯を山盛りにしながら希が首肯した。
「学校行事の一つらしいです。第二の文化祭的な位置付けみたいな存在で、学校の校舎貸し切りで朝の8時から夜の7時まで自由登下校で仮装したりお菓子作ったり……パーティーみたいな感じの内容となってます」
「ほぉー……」
治安と呼べばいいのか、盗難など問題を全く起こさない学校だからこそ許される学校行事なのだろう。
……なんか面白そうじゃん。
「そうそう、ここに来る前のパンフレットにもそう記載されてましたよ?」
「……マジ?」
「です」
「ですか」
「はい」と妹に渡された茶碗を、こんなに食えるかなと首を傾げながら相槌を打ちながら受け取る。
「んで、希はかぼちゃ頭のアレに仮装して行くのか。……えっと」
「ジャック・オー・ランタンです」
パッと思い浮かばずにいると、妹がすかさず補足してくれる。
ちなみに現在は頭にリアルかぼちゃは被っていない。というか発見した直後に強制撤去させていただいた。一応洗ったらしく髪の毛とかにかぼちゃは付着しないらしいが、重みで首痛そうにしてるというアホな事になってたので。
お兄さんはあなたの事が心配です、まる。
「兄さんが望むならあの格好で登校するのも吝かではありませんが」
「……いや、止めておこう。ってか止めて」
ここらは人通りが少ないとはいえ、衆人の目がない訳ではない。むしろ七年前よりもこの住宅街の人口も一軒家もずっと増え、最悪朝の散歩から始まる井戸端会議のネタ投下にもなりかねない。割とご近所の付き合いと妹の事を大切にしたい俺としては、その提案は取り下げだ。
「あ、そうです。流石に生徒かどうかは確認の必要があるみたいですので、学生証は忘れないで下さいね」
「了解」
味噌汁に舌鼓を打ちながら、俺は答えた。
続く。