【番外編】Trick or treat! -eve-
お久し振りです。
待ちに待った『血界戦線』もとうに終わり、気付けば『ルパン三世』『終物語』『ワンパンマン』のクールが始まって早一ヶ月。めっきり寒くなってきた今日この頃ですが、みなさんは大丈夫でしょうか?
そんなわけで(どんなわけだ)、久々の更新でいつもの番外編です。
まぁこれはその序章なので、軽く目を通していただければなぁと。
我ながら随分と朝に慣れて来たと思う。
意識に靄がかかる感覚はいつまで経っても慣れたものじゃあないが、そこから外界へと目を凝らし、現実の自分とやらを再起動させるまでへの時間がほんのちょっぴり――引っ越してきて間もない頃と比べたら格段に――違う筈だ。そういう意味では、これは慣れたというよりも変わったというものなのかもしれない。
そう、変わった。
生活環境は当然の事ながら、背だって幾らか伸びた。髪も伸びては床屋へ行くを数度繰り返した。筋肉だって多少の少ほどはついたと思う。
目に見える範囲だけでこれだ。目に見えない、あるいは他人から見える範囲でも、何かが変わっている筈だ。
自分では全然見えないのに「変わった」と断言できるくらいの何かが。
それは人付き合いってヤツなのかもしれないし、自分らしさと呼べる代物なのかもしれない。こちらに越して来る以前に読んだ小説の中で変わる個性なんてないと述べられていたが、今となってはその言葉へ抱く感想も全く異なるものと化していた。
……そんなワケで。
たった六ヶ月、されど六ヶ月の期間で変化を自負する俺こと明日葉透なのだが。
「…………………………寒い」
朝への順応に対しては変わったとしても、この時期のこの時間帯特有の肌寒さに対する耐性の弱さにおいては変わりがなかったのだった。なまじ朝早く起きれるようになってしまったからこそ、余計に冷え切った空気に晒されたくない思いが強まってしまうのかもしれない。
10月31日。
今の頁のカレンダーを破くのもあと24時間を切ったこの辺りになるとすっかり気温は下がっており、暦よりも先に冬の訪れを文字通り肌で感じるようだった。紅葉よりも落葉、気付けばつい二か月前まであんなに生い茂っていた街路樹達もなんだか物寂しい雰囲気を醸し出してしまっている。
学校の銀杏の木はさてどうだったかと記憶を辿っていると、
「へくしゅっ!!」
すぐにくしゃみが出てしまう。寒いだけじゃなく乾燥もし出しているのだ。こちらの学校ではまだ現れてはいないものの、『向こう』では早速インフルエンザで学校を休む者が出てきたとか。そんな部分も、いよいよ冬だなぁと実感させてくれる。
「……起きるか」
休日ならいざ知らず、平日にインフルエンザや低気温に怯えて布団に籠っていては学生の一日は始まらないわけで。俺は一度外気に晒しては完全敗北した己の肌を奮い立たせて、歯を食い縛ってもう一度布団を捲った。
「寒いっ! 寒いっ!」
あまりの外気にまたしても布団に転がり潜りそうになるが、慌てててその身体を諫めては根性が保つ内にとさっさと部屋を出て一階の洗面所へと向かった。
「おはようございます兄さん」
洗顔と歯磨きを済ませた俺がリビングに入った途端、聞き慣れた声が耳に入る。
妹の希だ。
「おはよう」
発声源はいつも通り台所から。
ただどうやら、今日はそのいつもとは違うらしい。妹の声に交じって――もしくはそれよりも大きな――パチパチという朝に聞いた事のない音までもが耳に入ったのだった。
「――って。うわ、凄いな朝から」
「?」
本人ははてと首を傾げるだけなので、俺の口から説明しよう。
飲み物を取るついでにと見てみれば、希がピンクの可愛らしいパジャマの上から羽織ったエプロン姿で天ぷらを作っている光景が眼前に広がっていた。びっくりだわ。
階段を下りると既にリビングのLEDが廊下を照らしていたから、もう起きているとは思っていたが……まさか朝から天ぷらとは。
「これは今日の弁当用です。あ、でも今食べたかったら言って下さい。その分も追加で作りますから」
なんて事なくそう言う妹だが、中途半端に料理を齧っている俺にとってみれば朝に天ぷらを作るという行為は中々にヘビーだと思うのだ。妹の作るものだから外れどころか美味いのは確かなのだが、いかんせん……。
「――でさ、」
まぁ、それよりもだ。
「はい?」
「いや、朝から天ぷらはご苦労さん、ありがとうと言いたいわけだけどさ」
またしてもすっとぼけている妹に、いい加減突っ込む事にした。
「その頭に被ってるカボチャは一体なんなのかな?」
流石にこれは、朝の寒さ以上に慣れない光景なのだった。
ってか、慣れてたまるかこんなの。
本格的な中身は明日投稿します。
午前0時か午後0時か。
……頑張ります。