【番外編】一方、部屋にて。 A
まーだ箸休めやつ。
あと最近の眠気が半端じゃない。
シルバーウィークの誘惑と相俟って、ずっと寝ちゃいそう。
バタン、としっかり閉じられてしまった扉の向こうで足音が段々と遠ざかるのが聞こえる。少しずつ下から聞こえてくる点から踏まえて、すぐさま階段を降りてリビングに戻って行ったのだろう。
「……行きましたね」
「そうですね」
「閉じ込められちゃいましたね」
「言いようによっては、そうですね」
「……つまり、兄さんは監禁プレイが好きって事ですよね?」
「……どこをどう聞いても、それはないと思いますね」
そんな勇気があったらまず人生レベルで違う事になってるでしょうし、と皮肉交じりに言うのは水無瀬幸。それを聞いているのかいないのか、一人うんうん唸って何か物思いに耽ってるのはかの少年の妹・希だった。
機器でのやり取りはあったとはいえ実際に合うのは一ヶ月ぶりの筈なのだが、まるで引っ越す前のように(一見無表情で)仲良く会話を繰り広げ始める。傍からその光景を見れば姉妹だと思うだろう。そんな雰囲気があった。
「むむ?」
犬だったら尻尾をパサッと振っていたかもしれない。何か良からぬ事を思い付いたらしい希はその思い付いた勢いのまま「そう言えば」と口を開く。
「サチ姉さんは今朝起きる時、兄さんの部屋は鍵掛けました?」
「いえ。……そもそも鍵を掛けるものなんですか?」
第一外から閉めようにも鍵がなくては無理な話だ。小説や漫画で馴染みのある密室事件じゃあるまいし、素人が外から鍵もなしに鍵を掛けるなんて芸当を咄嗟にできるワケがない。
「それなら、今は開いてるって事ですよね?」
「そうですね」
「きゅぴーん」
「? それがどうかしましたか?」
突然希が効果音のような謎の台詞を言い出すも、一つ年下の妹のような存在に慣れたように水無瀬は掛けた眼鏡の位置を調整しながら尋ねる。お互い他人行儀なですます調の言葉遣いだが、家族のような確かな意思の疎通があった。
「では、今がチャンスではないですか」
「なんの事ですか?」
「兄さんの部屋」
突飛なその発言に、水無瀬はドキリとした。
しかしそれを一切表情として出す事はせず、すぐにその話題の先を促してゆく。
「それが?」
「サチ姉さんも興味ありませんか? あの兄さんの自室には何があるか。今までは施錠という鉄壁の守りがありましたが、今は無防備」
「その施錠とやらは誰のせいだったんですかね……」
「それはさておいて」
「どうですか? 今なら見れますよ? 見れちゃうんですよ?」
なぜか。
物凄く下らないようなどうでもいいような気がする誘惑に、ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。
それが自分のものだとは、水無瀬は気付かなかった。
Twitterを始めようかなと思う事が最近多いのですが、しかしながらどうせPCからしかできないし、このPCじゃ閲覧すら重いのにどうすんだ状態だし、とネガティヴな思考ガガガ……。
こっちに呟いちゃうのはそんなところからだったり。
ご迷惑でしたら感想ででも言って下されば止めます。