【番外編】雨天決行・b
実は書いてる途中ですが、今日は回線やらPCやらが重いので、保険として予約投稿しておきます。
「――まだ止まない、か」
午後の授業が始まっても降る雨は留まる事を知らず、時計の針が動くにつれて勢いを強めていった。そろそろ六時限目が始まるというのに教科書の用意もせず、帰りが面倒だなと他人事のように窓をぼんやりと眺める。
昔から、雨が苦手だった。
あんなにも美しい青空を覆う灰色に濁った雲々が。
温かい時は熱気が、寒い時は寒気が増長されるジメジメと肌に気持ち悪くまとわりつく湿気が。
漂う哀しげな気分になる雨の匂いが。
それら全てが混ざり込んで、晴れ晴れとした胸の内を同じように曇らせ、掻き乱すかのようで凄く嫌になるのだ。
我ながらここまでキッパリと何かに嫌悪感を抱くのは珍しいと思う。
いや実際は過ごす日々になんとなく、ありふれた「イヤだ」を俺は見つけてしまっているのだろう。誰もが目にして耳にして感じてしまう不快感や嫌悪感、それを俺の場合はこの雨という天気で余計に膨らませてしまうってだけなのかもしれない。
憂鬱に染まりかけた胸の内からマイナス思考を吐き出すように、俺は重苦しい溜息をついた。あれからいまだ幸せそうに眠る隣が少し羨ましくなった。
「あ」
授業が終わって改めて意識が外の天気に向かったからか、ふと思う。
妹は朝、傘を持って家を出たっけかと。
「……持ってないだろうなぁ」
学校じゃなかったら頭を抱えたかもしれなかった。
おそらく妹は持ってないだろう。俺自身が念のため折り畳み傘をバッグに放り込んだ記憶しか、ない。兄としてそれはどうなのだろうか。
「まだ、時間はあるよな」
黒板の上に掲げられている時計を確認すると、次の授業の開始時刻まであと五分の猶予がある。一学年下の妹のクラスまではこの校舎を一階下に降りるだけだから、十分に次の授業まで間に合うだろう。五分だけど。
別に俺だけなら雨に濡れたって構いやしないし、
「……届けるか」
後ろ首を摩りながら、俺は立ち上がった。




