第07話 きしょう・a
正直に言います。
なんとなく同時に書き出してたら、こっちが楽しくなって気が付いたらこっち書いてました。テヘペロ(をい)
明日こそそっちの話で更新しますから……っ!
つまりはまさかの2話更新が微レ存。文字数少ないけども。
「――――ッ!!!?」
危うくティガレックスの大咆哮にも勝るとも劣らない絶叫が喉から迸るところだった。クラウチングスタートを決めて口から飛び出そうになった悲鳴を必死の思いで口元を押さえる。
危なかった。危うくその勢いで意識も吹っ飛ぶところだった。
だって。
朝目を覚ましたら、眼前に見慣れた少女の顔が拡がっていたのだから。
「…………ぅ、……すぅ」
寝る前にちゃんと眼鏡は外していたらしく、掛けていない彼女の顔をこうしてはっきりと見るのは随分と久し振りな気がする。
瞑った目から伸びる長い睫毛や白くもほんのりと健康的な紅さも灯った綺麗な肌に見蕩れていると、温かそうな額が今にも触れそうになる。規則的に微かな吐息が桜色の唇の隙間から聞こえ、麻薬のようなその声が耳をくすぐり、身体がぞわぞわとする。
ふぅーっ、と絶叫の代わりに深く息を吐いて、吸う。
沸騰しそうになった心臓を落ち着かせて、静かに上体を起こす。同様に静かに布団、続いてベットから脱出してチラリと確認するが、睡魔に心地良く誘われたその気持ち良さ気な彼女の顔を邪魔する事はなかったようだった。安堵して、俺はベッドから離れた。
薄いカーテンの掛かった窓から外を覗くと、昨日の呪いたくなるような灼熱の快晴とは打って変わって、灰色に曇った空からしとしとと寂しげに雨粒が降り注いでは路地を濡らしていた。
「これじゃ洗濯物とか無理だな……」
捲っていたカーテンを元の状態に戻し、未だ眠り姫のサチをそっとしておいて俺は部屋を出た。
階段も音を立てないよう降りて洗面台へと向かう。学校に行っている時と同じように顔を洗い歯を磨いていると、リビングに明かりが点いている事に気付いた。昨日寝る前に消した筈だし、いつものように妹が先に起きてきていたのだろう。
歯磨きを終えリビングに入ると、すっかりお馴染みの香りが鼻腔をくすぐる。
「おはよう」
「あっ、兄さんおはようございます」
台所に向かうと、エプロン姿の妹が鼻歌を歌いながらコトコトと温めている味噌汁を優しく混ぜていた。ピンクと白の水玉模様のパジャマ姿のまま羽織った赤のチェック柄のエプロンを揺らしながら奏でる、聞いた事のあるその鼻歌に耳を傾けながら、湯気起つ味噌汁の中身を見ると、一ついつもと違う部分が見てとれた。
「お、今日は白味噌か?」
「そうですね丁度今朝変えた戸頃ですよ。よく分かりましたね」
「伊達にお前が作ってる味噌汁の香りを嗅ぎ慣れてないし、見慣れてもいないからな」
「それは希が正式に嫁として認知されたと受け取ってよろしいのですか?」
「どこをどう受け取ったんだよ……」
目頭が熱くなりそうだった。主に頭痛のせいで。
連休でも変わらず朝から悩ませるのはいっそ才能だと改めて思う事にした俺だった。
最近の「3歩進んで3歩下がる」ような天気に悩ましく思います。
洗濯物ェ……。