第06.5話 かいとう
はい、というわけでアナウンス(?)通り総集編チックな開幕から始まります――が、投稿直前にある事に気付きました。
ほんのちょっぴり話飛んでる――っ!!
なのでいつも以上に「ん?」って思う所があるかと。
あとかったるい感じの所があるかと。
……今更ですよね!
それでは、どうぞ。
五月二日。
所謂ゴールデンウィークという素晴らしき連休に、幸先の良いような悪いような快晴と猛暑の中で彼・明日葉透は妹の希の眼前で倒れる。
「兄さんっ!」
そんなエマージェンシーな出来事が全ての発端となる。
「――気が付いたかしら」
「サ、チ? ……なんでお前がここに」
目が覚めるとなぜか彼は部屋のベットで寝ていて、妹に看病されながらも目の前に突如として現れた幼馴染み・水無瀬幸に驚愕する。
「今日から私、泊まりますので」
「ええっ!? なんでさ!!?」
そんな彼の疑問を置き去りに、気付けばしれっと夕食や食後のテレビゲームに参加していて、同様にまるで家族のように風呂も――
「…………………………あー、えーっと」
「――」
そこでまた意識が断絶したと思うと、いつの間にやら正座と説教で時計の針が進む事になってしまった。
「では、あなたの部屋であなたと一緒に寝ましょうかね」
「ふぁっ!!?」
脳が処理を放棄するような台詞を平然と放ちながら、背中合わせに近い形で布団に横になると、遂に切り出される事となった。
「一体どうしたのですか?」
なぜこうも燻っているのか。
なぜ折角の大型連休を噂の二人と過ごしていないのか。
その理由は四月に遡る。
「アンタ、いつの間に右利きになったのよ?」
「とおるクン、その額の傷……どうしたの?」
純粋なそれらの問いにただ誤魔化しで逃げている内に、自然と、しかし不自然で不穏な空気が二人との仲に流れ始めていたのだ。
「……俺は何をしているんだ」
そんな自責の念に駆られながらも何から、どこからどうすればいいかも彷徨っている事を彼女に話してみる事にしたのだった。
……みたいな話だった筈。うん。きっと。
# # #
「……つまり、二人にはもう殆どバレているに近しい状態だ、と?」
「ああ……」
その通りだった。
彼女達には疑問符を浮かばせっぱなしで、自分だけが逃げてばかりという至極単純な事実に辿り着くのみだった。
「別に良いのではないですか? 寧ろ二人共真実を知りたいでしょうし」
「真実、か……」
真実を言うという事は、今までの嘘が嘘だと露呈するという事だ。
一度そう思ってしまえば、まるで険しい崖から遙か下の地表を見下ろすように立ち竦んでしまいたくなる恐怖に駆られる。
怖いのだ。
明日葉透が、――――実は××のような存在だなんて。
「――それが怖いと」
「…………っ!」
まごう事なき図星に、目を見開く。横になったまま後ろを振り返るも、暗闇に慣れた瞳では小柄な背中しか窺い知る事しかできなかった。
つい、正月の福笑いのように手さぐりでペタペタと顔を触って自身の表情を確かめてしまう。
「……顔に出てたか?」
「顔を見なくても。……あなたの苦手な言い方をしますと、雰囲気で『解る』ものがありましたから」
「あなた曰く、『見逃さない優しさ』でしたっけ」
「――、」
カァァァァァッ――と。
一気に。顔から火が出るように、全身が燃えるように熱くなった気がした。
「どうしました?」
「お前……絶対知ってて言ってるだろ」
詰まった息を苦しげに吐き出すように、今も背中に触れそうな彼女へ嫌味雑じりに言う。恥ずかしかった。超死にたい。何何いつの間に訊かれてたのもしかしてエスパーなの念能力の持ち主なの略奪で奪った異能でも使ってるのあうあうあうあ。
「安心して下さい。ちゃんと知ってますよ」
「……本人に知られたから恥ずかしい目に遭ってるんだが」
「でも、それだけでしょう?」
「?」
「真実を知られたって、恥ずかしく思うだけで済んでいるでしょう?」
「あなたは考え過ぎな以前に、ただ単純にプライドを第一に考えているだけです。良く言えば誇り高く、悪く言えば見栄っ張り。……この際は言わなくてもどちらなのかはあなた自身が一番気付いている事だとは思いますが」
「…………、」
言い返せなかった。
羞恥で無意識に強く握っていたシーツの掴む力が、少し抜け落ちる。
「……正直、口からダダ漏れだっただけですが。聞いた、いや『聞いてしまった』私の方が恥ずかしくて身悶えするかと思いましたよ。全く」
「止めてくれ……いや止めて下さいお願いします」
なんでもしますから。
そのくらい切実に、恥ずかし過ぎて弄るのを止めてほしかった。
そろそろ俺が恥ずか死んでしまいそう。
「ですが、それだけでした」
「……は?」
「私も恥ずかしいと思っただけで済んだのですよ。ならばあなたが今悩んでいる事だって同じような結果になるだけだと思いませんか?」
見過ごさない優しさが突き付ける。
果たして、それは酷く怯えさせられていた恐怖を解きほぐす程の効果があった。
「別に恐れなくても良いかと思いますよ? そもそも嘘盛ったあなたが悪いのですし、言って引かれてもそれが原因なだけであなた自身の話で引くなんて事はないかと」
言葉はどれも刺々しくて、ひんやりとしている。
それでも。震えるような寒さと心地の良い冷たさがまるで別物のように。
彼女を通すだけでこんなにも浸透するのだと。不透明な水面に明かりが差して透き通って見えていくように、詰まっていた栓が抜けるように、サチの言葉はストンと胸に入っていった。
「まず、引いてたら一緒に昼食を食べたり覗きを庇ったりしませんよ」
「そうかな……」
「そうでしょう。――…………ふわぁ」
と、頭越しに可愛らしい欠伸が耳に入る。
「……そろそろ眠くなりましたので、今日はこの辺りで」
「……ああ」
それは自身の発言か、それとも睡魔に誘われて零してしまった声の事か。
若干照れが出たらしく、早口でそう言うと布団を少しだけ自分の方に寄せる音が聞こえた。顔を合わせていたら確実に目を逸らされていた事だろう。
そこにクスッと笑ってから、俺は最後に一言だけ告げた。
「それでは」
「おやすみ」
というわけで前後しちゃいますが、明日はc-4をば。
マリオか艦これのマップかよ。
……とか言ったらガチ勢に怒られそうで怖い・。・;