【番外編】08/31(4)
昨日・一昨日の突然の晴れ模様などなどによる激しい寒暖の差でか、断調が崩れ気味だったので帰宅後即仮眠のスタイルをとらせていただき、更新が(日付的に)1日空けてしまいました。申し訳ありません。
悔しいので本日付でもう1話くらい投稿があるかも。
「うわあああああ、もう無理いいいいいいいいいい!!!!」
はい無理。もう無理。
どこかに『リタイアする』って選択できるメニュー画面とかない?
俺はアホな事を妄想しながら、そんな客観的に俯瞰すればあまりに痛々し過ぎる頭を抱えた。この場にチカやミサがいなかったら絶対そのままの勢いで発狂しながらリビングを転がり回っていただろう。
「ただでさえ湿気が酷いんだから叫ばないでよ……」
「もうシャーペンを握る手が痛いんだって……」
「……まだ三時間くらいしかやってないじゃない。今は夏休みも最後の土壇場でしょ? そんな弱音吐く時間があるなら目の前の現実に向き合って頂戴」
「……いえっさー」
多分今の俺が鏡を覗けば、どんよりと死んだ魚のような目をしているだろう。人間が人間として生活していく中で必要不可欠だろう生命力というか……輝き? そういった大切な目に見えない何かが欠けて失われている姿がそこに映るのだろうと見ないでも予想がつくくらいに俺は疲弊していた。
朝の八時か九時に緊急招集をかけてからまだ三時間しか経過していないのに、だ。
まず素早く消化できそうなものからという事で、古典の現代語訳から始める事にした。社会科目や理科目の外部模試の解き直しと迷ったが、チカとミサの常に上から数えて五本の指で済む優秀さに補助してもらえるのなら古典の方のが速いと思ったのだ。その思惑は見事に的中し、その勢いのまま教えてもらいたい英語の長文冊子に着手し始めれたくらいのハイスピードぶりだった。
なのだが……。
自分の事ながら、どうして俺には忍耐力というものがないのだろうかと俺自身虚しくなった。ずっと休まずシャーペンを握った手だって痛みよりも攣る一歩手前のような感覚で、目の前の新たな白紙のページに書き込む事よりも今すぐにでも接着剤でくっついたようなその筆記用具を手放したい衝動に駆られていた。
「二人共大丈夫かな?」
「ん?」
炒めた野菜よりしんなりしていた俺の肩をちょんちょんと優しく突かれて振り向くと、そこにはミサの笑顔があった。見た者を癒してくれそうな柔らかく温かいその表情に、幾分か憂鬱さが薄れた気がした。
が、
「ち、近いって……」
「あっ」
輝くような栗色の前髪が俺の頬を擦りそうなくらいの息も当たりそうな距離にあって、つい後ずさりして目を背けてしまう。
「えーっと……えへへへ」
背けた目を再びミサに向け直すと、ミサも視線を逸らして困ったように笑って頬を掻いていた。心なしかその顔がほんのりと赤かった。
「コホン」
思わず時が止まったかのように見蕩れていると、後ろから棘のある咳払いが耳に入り、慌てて俺は尋ねる事にした。
「あ、こ、こっちは大丈夫だから! そ、そうそう! ミサの方はどうしたの?」
ミサもミサで俺が分からない部分を優しく丁寧に教えてくれていたのだが、気が付けば途中から台所の方へと姿を消していたのだ。
料理関連で妹と何かしていたのだろうと推測していると、
「二人共そろそろお昼の時間だし、お腹空いてないかなーって思って」
「取り敢えず兄さんが集中している間にこちらは昼食を作っておこう、って話になりました」
「……マジか」
意識した途端、確かにお腹が空いて来た気がした。
「チカ……」
「そんな仔犬のような眼差しで見ないでよ……流石に私もそこまで鬼じゃないわ。それに気分転換も大切で――」
その言葉は最後まで続かなかった。
直後に、可愛らしい音が誰かさんの腹部周辺から発生したからだ。
「…………………………、」
「……だな。気分転換は必要だよな、っと」
「ちょ、ちょっと! 何よその微笑ましいものを見る眼差しは!! さっきと百八十度違うじゃない!!」
「じゃあミサと希も、一緒に食べるか」
「分かった! じゃあよそって持って来ちゃうね」
「あいあいさー」
晴れやかな笑みを咲かせたミサと起伏の薄い表情でその実結構ノリノリな敬礼をした希が台所へと再び向かう後ろ姿を見て、夏休み最後の今日もなんだかんだ騒がしく、楽しくなりそうだと思った。
「……にしても可愛らしい音の上げ方してたな」
「もういや……忘れて」
最近右目がやけにぼやけるように感じます。
病院行った方がいいんですかね……。