第05.5話 おやすみ・a
申し訳ない……。
回線というか、無線LANが故障して直してました。買うより直す方向に思考がシフトしちゃう辺り、回線弱者感溢れてて、自分で勝手に膝から崩れ落ちそうです。本当に遅れて申し訳ないばかりです……。
そんなわけで突拍子もクソもない、本編()の始まりです。
今回は本編にしては短めなので話としてもAパート扱いで。
「もう体調は大丈夫のようですね……」
すっかり陽も落ち、夕食時も風呂の時間も通り過ぎて既に時刻は日付が変更するかどうか。エアコンの設定を除湿にし、ソファで深夜アニメでも観ようかと誰もいないリビングで一人、孤独にソファに座ってチャンネルを弄っていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。振り向けば、やっぱりサチだった。
ああ、と聞いてるのか聞いていないのか解りづらい返事をしそうになるが、
「……いや、本当に大丈夫ですか?」
「言うなら最後まで自信持って言ってくれよ」
首を捻られて、思わず横に倒れそうになる。
言ってる途中で首を傾げるのはどうかと思うんだ。そんなきょとんとした顔でまじまじと観察するなよ。俺がどう見られてるのかが途端に気になるわ。
「……それにしては行動が異常だったもので」
「はい?」
一体どれを指して言っているのか、サチ基準で判定されたら大抵がアウトな節しか思い当たらない俺にはわからず、つい条件反射で記憶を遡ってしまう。
「あ。…………………………あー」
ほんのりと上気した肌色。
撫でるように伝った水滴。
艶やかに張り付いた黒髪。
それらを微かに、しかし一度思い出すと次第に克明に再生されてしまう。この状況に置いては、最も思い出しちゃいけない代物だった。
「? どうしたんで――」
顔を覗くようにして尋ねられ、思わずサッと顔を背けてしまう。さっきのさっきで多大な被害を受けつつもようやっと許してもらったのに、また掘り返すような反応してみろ。今度こそ俺は拷問の果てに死にそうだ。
サチの言葉も急に途中で途切れ、罪悪感で沈黙が心苦しくなる。
「あ、あなたって人は……」
俺の顔が何かを語っていたのだろうか。カァァァァァと察してしまったらしいサチの顔全体に一気に朱が差した。逸らした目を合わせてしまった俺の頬も湯上りのような紅さが灯り、熱くなった。
な、なんでこういう時に限って希がいないんだ……っ!
頭に、あのダウナーな黒い瞳と不穏な笑顔が浮かび上がる。
「…………あー、お前はまだ寝なくていいのか?」
「少なくともあなたの部屋以外でお願いしたいですね」
「言われなくてもそうするわっ!!」
高校生の年頃で女の子を部屋に歓迎したがる男の子がいてたまるか。俺は生憎と発情期の猿じゃないんだ、そんなケダモノめいた存在に向ける軽蔑の眼差しを即刻取り消していただきたい。下手すると冷房より涼しいぞ、体感的に。
「ではどうしましょうね……失礼ながら他に空いている部屋はありますでしょうか?」
「えーと……」
そこは畏まらなくてもいいのにと思いながら、一方でザッとサチがぐっすり眠れそうな場所を考えてみる。
結果。
「……や、やっぱ俺の部屋?」
「…………、」
氷点下になった視線で一瞥して押し黙るサチ。すると何か思い付いたように玄関の方へ向かうと、ゴソゴソと何やら自分の持って来た荷物を漁って捜し物をし始め――
「ストップ!! ストぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉップ!!!!」
ソファから勢いよく立ち上がりすぐさま玄関まで急行すれば、丁度サチが携帯電話を取り出して、誰でも知ってる公共機関の電話番号をプッシュしかけている戸頃だった。
「通報すんなよ! 違うから!!」
「ヘンタイは静かにしていて下さい。今から大切な連絡がありまして」
「あっ、そうかゴメン――って、だから通報するなって! 違うから!! 別に邪な事は考えてないから!!!」
「ならどうしてそんな事を?」
「いや……考えたら妹の部屋か俺の部屋しかなくてさ…………」
親父や母さんの部屋を候補から外した理由は敢えて言わない。……察してくれ、俺の口から異性の幼馴染みにアレな事言いたくないんだ。
「はぁ」
何とも受け取れないからか、気の抜けた相槌が入る。サチ的な健全な解釈があったのだろう、その部分にホッと安堵しつつ、俺は話を続けた。
「で、妹は寝相悪いし……」
チラリと、二階にある現在就寝中の希の部屋へと目を向ける。あの妹は寝る時でさえも色々と規格外で、兄としても頭のネジが二、三本外れてるんじゃないかしらと疑ってしまうくらいのものなのだ。
それも追々説明するとして、
「そうすると俺の部屋しかないわけだが……俺はソファで寝るから。鍵も閉められるしで女性も安心、的な?」
この家には一般的な家屋同様にトイレと風呂場、あと二階の俺と希の部屋のドアに鍵が付いている。単純な理由だが、これだったらサチも文句を言わず、安らかに眠れるのではないだろうかと思う。
「部屋の匂いが気になるって言われちゃ妹の部屋一択だが……」
言いながら、部屋を臭いと言われた時の事を考えて、軽く心に風穴が空きそうになる。年頃の男の子にとって極論を言ってしまえば、キモいとかブサイクとか言われるよりも臭いと言われた方がショックが大きい。下手すると致命傷にもなり得る。
その事もあって、心臓をバクバクさせながらサチの返答を待つ。
口を押さえ黙って思考する見慣れたサチの癖を見ていると、自然と緊張で胃が痛くなりそうだった。
そして修理の時間で投稿の時間も執筆の時間も週1の買い物の時間も浪費してしまったので、明日買い物行ってきます。なので投稿は今日ほどとは言わなくても遅れるかもです。
執筆に対する意欲は俄然高いままなので、落とす事はない筈。