第七話 「暴挙」
音速の二倍のスピードはおろか、第七位でもありません。
でも『〇電磁砲』の大〇星祭編が素晴らしかったので本家の方でリスペクト。
第七話、行くでガンス!フンガー!!(コレは酷い)
直後、彼女のとった行動は至って単純だった。
自己紹介が終わって(苗字故に一番前の)席に座ろうとした俺の元へとカツッと踏み込み、その襟首を掴んで、連行する。
但し、
それら一連の行動を、全力疾走で行うとどうなるか。
比喩表現抜きで息が止まった。
ズルズルと、なんて表現は生温い。ズザザザザーッ!!と埃が舞いそうな音と共に廊下を引き摺られる。何か焦げ臭い匂いでも立ち上ってきそうだ。時々段差――というか階段だ――がゴスゴスと体に当た、って痛い痛い痛い!!
流石に抵抗しようとして……体に力が入らない。というか苦しい。頭がボーッとして来た。
そしてその苦しさも段々と心地良くなって来た。え、俺ってMだったの?
そんな衝撃(物理)の事実に愕然としながらも緩やかに遠くなってゆく意識が今まさに途絶えそうになったところで、拘束が解かれた。
# # #
「ハアッ……ハアッ……」
肩で息をするチカを見て、解放され横に転がっている俺は言った。
「パンツ見えてるから足は閉じよブフーッ!!?」
「~~~~!!!!」
注意したら腹を思いっきり踏まれた。栓を開けた浮き輪のように口から息が吐き出された。ついでに他にも何か出ちゃいそうです。朝ご飯とか魂とか。
そんな事も露知らず、チカは口を開いた。
「最ッ低!!!!」
「ゲフッ、ゴハッ……いや注意しただけだろ。というかそんな顔すんな。折角の美人が台無しだ」
「よくもまぁそんな気障な台詞が吐けるものね!!」
何か阿修羅に進化してしまった。
あれ、こう言えば「え、あ、そう……?」とかなるんじゃなかったの?ちなみにソースはラノベ。
「というか、アンタ、何でウチの学校にいるのよ!?」
「え、いやだって、俺の転校先だし?」
「そんな事昨日言ってなかったじゃないのよ!!」
「だって訊かれてなヘグッ!!?」
「~~~~!!!!」
スタンプラリーが開催されました。……本当に止めて、出る、っていうか吐きそウップ。
俺が必死になって床を叩きギブアップを示すと漸く解放してくれた。オエェッ……。
こりゃ蹴ってる間もガッツリ大人な黒パンが見えてましたよ、なんて懇切丁寧に説明しない方がいいな。
「フーッ、フーッ」
「……少し落ち着くんだ、どうどう」
「私は牛か!?」
「で、」
閑話休題。脂汗を流しながら俺は今一番訊きたい事を尋ねた。
「本題は?」
「……へ?」
「だから本題は?唯でさえ窒息死一歩手前まで陥りながらも人気のない所に連れてかれたんだ。何かあるんだろ?まさかそれだけじゃないはずだ」
チカを見つめながら俺は考える。
俺だって黙って流されるようにしていた訳ではない。人前で言えない件でもあるのだろうと、何か重大な連絡でもあるのだろうと、そう推理していたのだ。……というかそうじゃないと割に合わない。本当に(意識が)流されそうだったし。
と、チカが急に口をアワアワさせていた。視線もキョロキョロと忙しない。
…………え。
「……おい」
「ヒェッ!?」
「「ヒェッ!?」じゃなくて、本題は?」
「え、ええっとぉ……」
目がこっち向いてない。心なしか震えている気がする。
ま さ か。
「……もしかして本当にそれだけだったのか?」
「…………」
「ヲイ」
「………………」
「オイィィィィイ!!!!!!」
嘘だと言ってよ〇ーニィ!!そんなん後でやれ!!!ってかマジかよ、俺の推理(笑)形無しじゃねえか恥ずかしいわ畜生!!!!うわー、うわー、うわぁああああああああああ……。この発想はなかった……。穴があったら入りたいでござる。何が「俺は黙って流されていた訳ではない(キリッ)」だよ。誰だよこんな馬鹿な事い言った奴。お前だよ。もう誰か、いっそ笑ってくれ。笑ってくれた方が幾らかマシだ。笑え、笑えよ。
ちなみに俺は既に片腹痛かったりする。胃に穴が開きそうで。
こんな時、どうすればいいんだよ。
…………戻るか。HR途中で出て来ちゃったし。どうせ俺が怒られるんだろうなー。お冠な姿が容易に想像出来る。
「ハァ……。なら戻るぞ。HR無視して来ちゃったしな」
「……うーっ……」
顔を真っ赤にして俯いていたチカは先程までが嘘のように大人しく肯き、スゴスゴと俺を先導していった。そんなんならやらなきゃよかったのに。
辛いものだな、若さ故の過ちと言うのは。
かくして、実際は目撃者多数(廊下を音立てて通り過ぎたんだからそりゃそうだ)の、後に「『雪女』の逢引事件」と語られる一連の出来事は、こうして幕を閉じた。
……愛が倒錯的過ぎるわ!
# # #
「そーゆー事だったのかー」
「全然信用してない口ぶりですね」
「いんやー信用はしてるさー」
「寝ぼけた顔で言わないで下さいよ」
そんなこんなで教室にて。俺は隣の席の彼女――井上実夏さんと顔を合わせていた。幼い顔つきで眠そうな女の子なのだった。小柄なのも合わさって、お布団とパジャマと相性が良さそうなのだった。外野から「あの転校生、今度は『眠り姫』と会話してるわ……!?」「何やねんな、あの『〇セコイ』ばりの優遇っぷりは」とか騒いでいるが気にしないのだった。というかこの教室は童話の世界か何かか。つーかエセ関西弁、五月蠅ぇ。
閑話休題。
あれから俺達が屋上から戻って来て、まず初めに待っていたのは有紀先生だった。青筋を立てた彼女から「なぁ、私の業務連絡は無視していいと思ってるのか。そうか、お前らはそんな奴だったのか」と半ば愚痴のような序文から始まったお小言を頂戴し、今度こそ着席しようとして……複数、いや同級生全体からの視線を感じた。幾らか殺気も交じっていたかもしれない。背筋に寒気が奔ったので俺は逃げるように隣に話しかけた。
それからこうして会話らしきもの(と言うのも、彼女、さっきから脳の電池が切れかけているのか寝そうになっており、対応が粗雑なのだ)を続けている内に、今日半日で荒れた心が和んでいるような気がした。彼女から漂う眠気とソプラノボイスでお送りする語尾の伸びがそう思わせるのかもしれない。ちなみに好きな物はミカンだそうで自分の事もミカンと呼んでいいそうだ。一応初対面なので俺は丁寧語でお送りしている。……何か俺も眠くなってきたなぁ、ふわぁあ……。
そんな欠伸をして目尻に涙を溜めたところで、
スポォーン、と。
何かが口に投げ入れられウゴッハ!!?
喉を直撃して本日何度目かの吐き気が込み上げ、思わず溜めた涙が決壊しそうになった。反射的に飛来した物を吐き出すと(自分でも汚いと思う)唾液に塗れた白いチョークが…………え?
思考が旅行に出かけたまま飛んで来た先を恐る恐る見ると、
「未だチャイムは鳴ってないぞ。……お前は私に恨みでもあるのか……?」
――――阿修羅の次は鬼神でしたとさ。この教室、本当にファンタジーだな!
というかコレ、昨今の風潮と教育委員会的に大丈夫なのか?
私、気になります!
……そんなどうでもいい事を考えているのを他所に、この後の行き先が職員室に決定した明日葉透だったとさ。てか俺だ。
先生激おこですね。実は作中最速で主人公をデートに誘っているのですがこのままだと消滅しそう……頑張れ主人公!
で、相変わらず作中の時間はサクサク進みませんね。
何処かのゴールデンな日々を送る番長とは大違いです。
お読みいただきありがとうございました。
※誤字脱字表現の誤り等がありましたら感想にてご連絡ください。
随時修正致します。
引き続き、『おさどう』をよろしくお願い致します。