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幼馴染同盟 ~Are you BEST FRIENDs?~  作者: アオハル
02.Cold-en weaks _Do you know?_
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零【ゼロ】話 どこから、この話を始めよう

 1年前の最初から読んでいた方々には既に思われているかもしれませんが、どこかで見た事あるような内容です。

 それでもお付き合いいただければ。

「なんで……?」

 無意識の内に、湧き上がった疑問符をそのまま浮かばせる。ほんの一言しか喋っていないのにその声は酷く荒んでいて、まるで自分のものだと認識する事ができなかった。流す事もなかった涙の代わりとでも言うように、喉はすっかり枯れ果てていた。

 おそらく相手も驚いたのだろう。一瞬目を見張っていたものの、すぐにその顔を見た事のある表情に似た何かで取り繕っていた。

「な、何しているんですか昭さん……」

 表情は取り繕えていたが、言葉は誤魔化せないほどに震えていた。

 侵入者は宇都宮鞠だった。

 今日は平日で、僕じゃあるまいし登校すべき時間なんてとうに過ぎ去っている筈だ。現に目の前の彼女は制服を着ていた。紺色のブレザーに赤のネクタイと白地のワイシャツ、赤と黒のチェック柄のスカートと、まごう事なく僕らの通う学校指定のものだった。

 なのに。

 なんで。

「なんで…………なんで鞠がここに…………?」

「なんででしょうね」

「今日は学校じゃ――」

「さぁ、なんででしょうね」

 僕自身の事を差し置いて、当然の疑問を口にする――その途中で鞠の震える唇から発されたそれに覆い被せられ、掻き消えてしまった。

「本当に、なんでなんでしょうね!」

 叩き付けるように。鞠にしては珍しく、いや聞いた事もないくらいに声を荒げていた。

「勝手に仲良くなったと思いこんでいて! 勝手に嫉妬していて! 勝手に落ち込んでいて! それで気付いた時には二人共いなくて! 二人共学校に来なくなっちゃって! 本当に私は、何をしているんでしょうね!」

 その台詞は、ハッキリ言って滅茶苦茶だった。

 一体なんの話なのかと、呆然と聞いてしまいそうになる。以前の僕だったら間違いなくそうしていた事だろう。

 だが。

 震えた声で、ひたすらに思い付く限りに怒鳴り散らす見た事もない宇都宮鞠のその姿を見て。僕は今更ながらに気付いた。

「昭さんだって苦しんでいたのに!」

 彼女の声が震えていたのは、怒っていたからなのだ。

 使われた言葉の意味は理解できないが、理由は当の本人が言った通りだろう。その他にも悲しんでいたり悔しかったりしていたからかもしれない。目は泣き腫らしたように真っ赤だし、くままでできていた。

「だから…………もし自分を責めるなら、まず先に私を責めて下さい……。お前は何をしてるんだ、って……この期に及んで何を違う事で悩んでいるんだ、って…………っ」

 僕が。千尋が。

 二人がいなかったから。だからそのSOSに近い叫びは、鞠は鞠なりにたった一人で悩んでいて、苦しんでいて、赦せなかったからこその言葉なのかもしれなかった。

 そんな中、僕は何をしていた?

 泣く事もできず後悔する事も自分自身で許せず、ただただ日々を浪費しておいて、結局僕は悲劇に酔っていただけなのか?

 アイツが最期に言った台詞を思い出せ。

『――――せめて鞠の事は大切にしてやってくれよ』

 いつものようにマリーと呼ばず、幼馴染みの目線から真っ直ぐに捉えてそう言った彼女が。

 彼女だけは唯一全てを理解し、知っていたのかもしれなかった。だからこそ無闇に触れず、だけれども見逃そうとはしなかったのかもしれなかった。寂しげだったあの顔が何よりの証左なのかもしれなかった。

 人の気持ちなんて、結局はどれだけ親密であると思っていても「解る」なんて決して言えはしない。推し量るなんて、そんな烏滸おこがましい真似が少なくとも僕に許される筈もない。

 でも。

「なんて言えばいいのかなんて、全然解りません……。私の言っている事が支離滅裂な事くらいしか、私には解りません……」

 いや。

「でも……、それでも…………私には以前のような昭さんとお話したいんです」

 だからこそ。

「何もできなかった私を、ただ俯いていた時に手を差し伸べてくれた昭さんと、また私は会いたいんです……」

 伝えなくてはいけない。

 大切な彼女に伝わるように。解るように、言わなくてはいけなかったのだ。

 きみに非なんて何一つないのだと。

 むしろ僕が責められるべきだという事。

 何より。

 きみが泣くなら隣で一緒に僕も泣きたいよ――――という事。

 支えられ、支えたかったという事を。

 正直、自分は今まで不幸に酔っていたのかもしれない。哀しみで感覚を麻痺させては独り部屋に篭もって腐り落ちようとしていた。

 忘れてはいけなかった。

 幼馴染みは、友達はもう一人いる事を。どちらも大切な友達だという事を。

 『当たり前』なんて言葉の陰に隠れていて、目が眩んでそんな大切な事実をすっかり失念していた。目の前で涙を流す幼馴染みを見て、ようやく世界にピントが合わさった。

 今の僕なら、言える筈だ。

 ヒロインのように目の前を照らし出してくれた二人のためにも、今度は僕が動く番だ。

「――――、」

 枯れ果てていた筈の喉で、必死に僕は紡ぐ事にした。



 この日。

 僕の短くも長く感じていた、単調で腐りかけていた日々が快復するきっかけが生まれる事となり。

 僕は、何年か振りに泣く事となった。

 書いていて思ったのは、鞠の口調が捉えづらいなという事。

 稚拙な文章まがいのものしか描けない自分としてはもっと掘り下げて書くべきなのかなとも思いましたが、「これはこれ、それはそれ」で。

 つまりは「それ書くなら本編書こうZE☆」というわけでして、ええ。

 なので明日から本編()、始まりまーす。

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