零【ゼロ】話 どこから、この話を始めよう
感想欄にて。
「体調管理には気をつけてください!!」
……こんな自分にもそう言って下さる方がいるという事実に、思わず目から涙が溢れました。気付くの遅くてごめんなさい、そしてありがとうございます。
反応が遅れるかと思いますが、感想、どしどし待ってます。
前兆も予告もなく、不幸というものはただ平等に、不公平に訪れる。
これは、そういうどうしようもない結末のおはなし。
「だから売り切れ。明日の入荷時には人が落ち着いて残ってると思うけど」
「…………………………本当に?」
「だから――」
「すいませーん」
「――じゃあ、お客さん待たせたらいけないからこれで」
結論から言えば、この日彼は目当ての本を手に入れる事が叶いませんでした。
いらっしゃいませーとカウンターの方へと戻ってゆく白髪頭の店主を尻目に、彼は店を後にしてこちらへ戻って来ていました。来ていましたと言いますのも、私達には戻って来た事に気付けなかったからです。「あ、終わったのかな」と思って店の入口へと視線を向けた時に、まるで亡霊のように呆然自失といった状態で佇む彼の姿が突然現れた――そんな感覚に、私達は驚きの余り思わず数歩後ろへ下がってしまったほどでした。
暑さに負けて近所のコンビニで購入したアイスバーを二人して落としそうになりながら、あまりの変貌ぶりの彼に駆け寄りました。流石の私達も、この時ばかりはからかう事も茶化す事もせずに、彼を落ち着かせるように事情聴取していきます。
結果。
「はぁぁぁぁぁ…………………………」
「き、気にするなって」
まるで一等が当たっている宝くじを失くしたかのように絶望している少年と隣で肩を叩いている女子高生の姿がそこに誕生しました。更に一人は憐憫の眼差しで静かにその少年の背中を見ながら後ろを歩いていました。
「さっきまであったのに……、目の前で最後の一冊が…………」
「ま、まぁ、明日入荷するんだし」
「いつもあの店じゃないのがいけなかったのか……」
「ちょ、ちょっと? もしもし? あーきーらー」
虚ろになった瞳でどこか遠くを見つめ始めちゃってる彼の顔の前で彼女――千尋ちゃんことちーちゃんが手を振って意識をこちらに戻そうとしている姿を見て。
「……、」
私――宇都宮鞠はその光景に微笑ましさと、少しの寂寥感を覚えました。
二人とは、小学校の時初めて出会いました。
私の家柄もあって、当時は誰もが――大人でさえもあまり近寄らなかった中、二人だけが私に声を掛け、手を差し伸べ、一緒に遊んでくれました。高めのお洋服を泥や草で盛大に汚してしまって両親に激怒された時も、一緒に怒られに行ったり……いやこれは当然なのかな?
そんな二人に振り回されている内に話し掛けてくれる人も増えて、あれよあれよと持ち上げられて、今では同性のみなさんに囲まれ、より多くの方々と楽しく賑やかに世間話もできるようにもなりました。
中学校に上がった頃からはすっかり昭くんには辺りが強い形になってますけど、それは一種の照れ隠しみたいなもの。とにかく二人には感謝の気持ちでいっぱいです。
……ですが、
「わーったわーった、明日一緒にまた買いに来てやるって、な?」
「……そうするか。…………はぁ」
「……ったく。美少女が一緒に買い物に行ってやるってんだから、ちょっとは嬉しそうにしろっての……」
「…………、」
最近になってでしょうか。
当人、とりわけ昭くんが理解しているのかは定かではありませんが――いつも一まとめに扱われがちな私達三人の中でも、彼とちーちゃんの仲は別格でした。私自身何を言ってるのか、なぜそんな風に思ってしまうのか謎ですが、それでも。
それは二人が保育園からの仲で、私だけ小学校からの付き合いだからでしょうか?
それとも――――。
「…………、」
「? マリーどうしたの?」
「いや……明日はちょっと丸林さんのお誘いを受けようかなって」
「あー、あの娘ね。うん別にヘンな事にはならなさそうだし、いいんじゃない?」
どーせコイツの本買うのに付き合う程度だし、と言って昭くんの頭を後ろからガシガシと乱暴に撫でて悪戯っぽく笑うちーちゃん。
その顔を見た瞬間、グサリと心に何かが刺さったような気がしました。
ですが私はその棘を無視して、俯きそうになる顔を笑顔と呼ばれるそれで取り繕って、二人の会話になんて事ないように参加しました。
――――本当はこの時、嫌われてでも止めるべきだったのに。
一回一回の分量とクオリティの話はさておいて、休暇が取れた途端のこの更新率である。
自分、なんだかんだ書くのが好きなんだなぁ……。
ふと、カレンダーを見てそう思いました。
な、ナルシストちゃうわ!・。・;