015とにかく!
強いな……
ヴィオラこと『僕』は思う。
お母様のシャラに気絶させられた僕は我が家の屋根の上に座りながら思案した。
屋根と言っても大木の枝だが……
この世界には色々な種族が存在すると長老様から教わった。
エルフのシャラに勝てないようだと僕はこの世界で生きていけないかもしれないな。
弱肉強食。
それがこの空想世界みたいな世界の理。
だから死なないように強くならなければならない。
僕はその思考に気付くと、苦笑する。
前世では自殺したのにな。
この世界に生まれてからストレスが無かったといえば嘘になるが、それでも生きたいと無意識に思った。
何故だかは分からない。が、今はそれに従おうと思う。
そのためには誰よりも強くなる必要がある。
だからいつも、魔力の制御訓練は欠かしていないし、実践訓練もシャラに頼んで行っている。
村の外には大人になるまで行けないが、強くなる努力はしているつもりだ。
そして強くなる訓練と同時にエルフの文字や、人間や魔族、ダークエルフの言葉と文字や文化など、『敵』の情報も習得した。
エルフはこの世界の人間よりも賢い、と思う。
敵の言葉、文字、文化などの情報はいつでも欠かさないし、敵の強さの情報も事前に調査する。
この世界の人間はそんなことはしない、らしい。
これだから人間はずる賢いだけのゴブリン扱いなんだな、と納得する。
ちなみに人間の言葉は英語とドイツ語が混じった変な言語で、魔族のは無駄に発音が良いアメリカの標準英語だった。ダークエルフはイギリスのRPで、一部の魔物は黒人英語のような片言の英語又はドイツ語だった。
なぜそんなことを知っているかというと、長老様が教えてくれた。というか、殆どのエルフは喋ることはできないにしても理解することができるくらいの教育が行われるらしい。
まぁ、方言もあるらしいから喋ることはしない方が良いと長老様が言っていた。
諜報員はその辺の方言も話せることが出来ないといけないのだ。
前世の幼少時代はアメリカ西海岸にいたのでダークエルフの言葉は完全に出来る。
長老様にダークエルフの言語を完璧に喋ったら「絶対に皆の前でその言語を喋ってはならぬ。ダークエルフかと疑われる」と言われてしまった。
イギリスのRPも一応真似ることは出来るんだけどね。
ちなみに獣人の言語はイタリア語とロシア語、又はラテン語が混じった言語で、ドワーフのはロシア語とスペイン語が混じった言語だ。
『悲劇の戦い』の影響もあると思う。
人間達の貴族などの上位層はドイツ語又はオーストラリア英語も出来るらしい。
前世の僕はロシア語、フランス語、スペイン語、英語を習得していたのでかなり楽だった。
エルフは大人になる前にこうしたモノを学習し、優秀なら戦闘技術を学んでから諜報員として敵の陣営に送られるらしい。
何とまぁ……可哀想に……
というか、僕も候補らしい……




