014報告の続き
マリアはそんなことは気にも掛けずに続ける。
「魔族勢力のドゥンケルハイト魔王制国家は魔物を配下に加えつつ、人間勢力に向かって北上しております。進軍方向にあった国家群は既に滅び、現在はクルシオ連合国家と睨み合いの状態が続いております」
「魔族の規模は?」
それまで黙っていたグレンハートが口を開いた。
「魔物や人間、獣人や我が同胞、その他の種族も捨て駒として用いられると考えられるため、最終的な兵力は予測不能です。ただ、少なくとも数百万単位の勢力になるのは確実でしょう」
「…………」
その現実離れした兵力に皆、口を噤むしかなかった。
「……有り得ぬ!」
全員が呻く。
魔王国軍が北上を続ければいずれエルフの森林連合とぶつかることになる。
そうなったら勝ち目はない。どうすれば良いのだ……
皆は絶望的な気持ちになる。
「……数年前にグレンハート様に重傷を負わせた魔族は恐らく魔王国の諜報員でしょう」
マリアは話題をすり替えて重い雰囲気を払拭しようと試みた。
「何故かな?」
評議院長のヴァルトフェーラは敏感に反応する。
「調査したところ、あの血液の奇形魔の変異種は普通では持ち得ない魔法を覚えていました。あの火の魔法もその一つです。それも上級の。あれほどの強力な個体がこの近隣で育ったとしたら情報が全く入って来なかったのは異常です。それに通信魔石と呼ばれる非常に魔力が込められた代物を持っていました。あれは人間はもちろん、魔力の低い者では作れません。我が同胞、あるいはダークエルフなら可能かもしれませんが」
「そうか……全力で魔王国の脅威に対抗せねば、な」
「ダークエルフのラクスメール帝政国家の報告に移ります」
ここでこほん、と咳払いを一つ。
意味は別にない。
「ラクスメール帝政国家に今のところ、動きは見られません。しかし、水面下で何やら起こっているようです」
「どういうことじゃ?」
ヴァルトフェーラはマリアに尋ねる。
「詳細は全く分かりません。もうしわけありません」
「それでは何で分かるんじゃ?」
「端的に言うと動きがきな臭いのです。罠かもしれません」
「分かった、もう良い。ご苦労」
「最後に龍族、及び竜人の報告が残っているのですが……」
「どうせ、静観じゃろう?もうそんな無駄な報告は知らせずとも良い」
「はあ……」
「次じゃ、次!」




