012戦闘の訓練
長老様が死にかけた―――――というか実際死んでいる―――――事件から2年が過ぎた。
アレンとアルフさんは事後対応に追われたようだ。
村のエルフ達は最初こそ気味悪がったが、いつも通りに日常を過ごしていると皆も気にしなくなった。
ただ、この時、村内での居心地が良くなかったのも事実だ。もう気にしていないが。
長老様はあの後、死にかけたとは思えないように元気になった。
そして現在、長老様は森林連合の幹部として他の村にある評議員に出向いている。数か月に一度、議会があるようだ。
僕はと言えば……
「【破壊の魔光】!」
僕の杖から銀色の閃光が走る。
「【防ぎなさい】!」
母、シャラは僕の放った魔法を容易く防ぐ。多大な魔力の籠った一撃を……
一言言わせてもらおう……Ma mère est très dangereux.
まぁそれは置いといて……僕は戦闘訓練の真っ最中なのだ。
「凄いわねぇ~、ヴィオラ?」
「お母様の方が凄いと思います。私の魔法を簡単にいなすなんて……」
「いや~、ヴィオラに言われると照れちゃうな~」
シャラは悪戯っ子のように舌をペロッと出して紅くなっている。
大人がやるとイタいだけの気がするが、お母様は可愛いので許す。
かわいいは正義だ!
と、いう名言の通りだな、とつくづくそう思う。
お母様は魔法銀の防具を身に着け、魔法銀の剣を腰に差し、魔法銀の杖をこちらに向けていた。
魔法剣士というヤツだろうか?
てか魔法銀飽きたよ!
「じゃ、今度は私から行くよ、ヴィオラ!」
「いつでもどうぞ」
余裕に返す。が、実はそんなに余裕があるわけではない。
僕の魔力の制御力は確実に精度が増してきているが、長命なエルフの膨大な経験には及ばない。
単純な魔力の量なら既に勝っているんだけどね……
身体能力を強化して油断なく待ち構える。
「【気絶の放光】!」
眩い白い閃光が迫る。僕は魔法の盾で防ぎつつ、反撃に転じる。
「【暗黒の魔玉】!」
闇魔法の最上位だ。対象が引力で魔玉に引き寄せられ、重力で圧死するという凶悪な魔法だ。しかし、
「【絶対防御】よ!」
黒い球体を囲むように透明な膜が張られた。
お母様は防御魔法の中でも最上位に近い魔法を普通に使って見せた。
……この世界はどうなっているんだ?もしかしてここには強者しかいないのか?
と、いう僕の疑問はお母様によって放たれた魔法が強制的に排除した。
「【気絶の放光】!」
華やかに炸裂した魔法に僕は為す術もなく意識を手放した。
『用語辞典』
【破壊の魔光】
破壊の上位魔法。
【魔法盾】
防御の中位魔法。
【気絶の放光】
状態異常の中位魔法。
【暗黒の魔玉】
闇の最上位魔法。
【絶対防御】
防御の最上位魔法。




