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009長老の生死

長老は離脱しようとしたが魔族は彼の腕を掴んだ。


長老は焦るが魔族はその一瞬の隙で即死級の火炎魔法を使った。


至近距離から放たれた死の魔法は長老を包んだ。



直撃だ。


長老は濃厚な死の気配を感じた。


「かはっ」


乾いた音が聞こえた。


そして魔族は事切れた。





それまで展開が早すぎて付いていけなかったエルフ達は漸く(ようやく)我に返った。


「え?ちょ、長老様!」

「だ、大丈夫であられますか!?」

「すぐに薬師を呼んで来い!」





端的に言うと彼は生きていた。


かろうじてだが……




ここで気を失えば死ぬ。


長老は気を失うまいと尋常ではない程の気力を維持していた。




彼は確実に死の世界へと近づいて行く。




儂ももう終わりか……



たかが魔族一匹に殺されるのか……



数百年生きたこの英傑が……



この身も若かりし時のような無茶は出来なかった、ということか……



はは……ぐっ……!




「長老様!お気を確かに!」



耳元で叫ばれる声も長老には届かない。


もはや死ぬことは確定事項。



長老は最後に英雄になるであろう女の子の姿を思い浮かべた。




ヴィオラ…………



エルフを……



導いておくれ……



これが儂の最期の願いじゃ……



もはやこの生に未練は残っておらんよ……




彼は笑みを浮かべながら意識が沈んだ。



そして緩やかに、生命維持活動が停止した。




彼は死亡した。




「長老様!長老様!」


エルフ達にはどうすることも出来なかった。


くっ、と近くにいたエルフは悔し涙を堪えきれなかった。


「長老様……」




ヴィオラが長老のもとへ駆けつけたのはその直後だった。


「長老様っ!」


彼女は焦っていた。


彼が重傷だと聞き、慌ててやってきたのだが……


「手遅れなの……?」


立ち尽くすヴィオラを近くにいた女性は無言で抱き締めた。


カロナだ。


美貌の顔を悲壮感に染めながら背中を撫でさする。




「嘘だっ!」



ヴィオラはカロナを振りほどいて長老のそばに駆け寄った。



まだ生き返る可能性がある。



激しく動揺している自分にそう言い聞かせて。



ついさっきまでの温もりが冷たくなっているなんて悪夢だ。



ヴィオラはそう思った。そして……




彼女は今まで使ったことのない魔法の実行を即座に決断した。




もう手遅れかもしれない……が、それはやってみないと分からない


ヴィオラはそう言って、自身を落ち着かした。



それからまず、魔法で長老の細胞の動きを活発化させ、手動で心臓マッサージを行った。



「……おい?何をしてるんだ?」



ヴィオラは掛けられた声を無視して自身の行動に集中した。



そして初めての魔法、【復活の輝き(リザレクション)】―――――本人命名―――――を全身を包むように掛ける。


すると、何と内部損傷どころか外部の重傷をも回復させた。


それも醜い火傷やけどの痕も。



その際、柔らかく輝いた光が辺りを覆う。



「な……!?」



突然の光へのエルフ達の驚きの声は恐ろしく集中していたヴィオラには一言も聞こえなかった。



彼女は【復活の輝き(リザレクション)】で魔力の全てを使い果たした。



だが、ここで処置を一つでも間違えば全てが水の泡(パー)



自分の生命力を使ってでも生き返らせる、ヴィオラは覚悟を決めた。




と、その時―――――






『用語辞典』


復活の輝き(リザレクション)

傷の全回復。千切れた手足も治るが、死の状態から復活は出来ない。

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