007英雄とは?
「英雄とは何じゃと思う?」
長老様はエルフの英雄について話し終えると僕に聞いてきた。
「強く、輝いている存在かな?」
「そうかもしれんの。英雄は強かった。輝いておった。ヴァイオラ様は人々に、エルフに希望を与えられた。ヴァイオラ様は強い誇りと、強固な意志を持って戦った。その勇ましいお姿に多くの人が魅了され、絶望から救って下さったことじゃろう。ヴァイオラ様が亡くなった後も、希望を持った人々は戦い続けた。どんなに辛くて、苦しくとも」
長老様は断言する。
「それはヴァイオラ様の最も偉大な功績じゃ。
死してなお、希望を与えたのじゃから。
儂は英雄とは魔性の力がある存在だと思っておる。それは時に暴力であったり、魔法であったり、人々の心を一つにする能力であったり。そして例え死んだとしても人々を救うことが出来る、そんな力もその一つじゃ。
ヴィオラ。お主はそんな存在になりなさい。エルフに希望を与えなさい。強い意思と、エルフとしての誇りを持ち、輝いた存在になりなさい」
まさか長老様がそんなことを言いだすとは思わず目を見張った。
「何で......そんなことを言うの?」
「お主は聡明で賢い子じゃ。だから教えよう」
長老様は目を閉じた。
「時は常に流動的じゃ。停滞は存在せず、在るのは衰退か……繁栄のみ。村の長としてエルフを衰退させるわけにはいかんのだ。儂はいずれ老いて死んでいくじゃろう。その頃には人間や魔族が攻めてくるかもしれん。無論、明日攻めてくるかもしれん。一つ言えることは絶対に悲劇の戦いのようになってはならん、ということじゃ。そのために何が必要か分かるかの?」
首を傾げて「分からない」と返す。
「優れた指導者と強い武力。英雄の存在が必要なんじゃ。人間はやがてエルフの領域をも侵略してくるじゃろう。それは避けられない事実じゃ。だから、エルフは勝たねばならない。この熾烈な生存競争に」
長老様は一区切りしてから言った。
「お主には英雄の素質がある」
「えっ?」
「ヴィオラはかなり聡明じゃ。だがまだ幼い子供じゃ。
今は分からずとも良い。いずれ分かる瞬間が来るじゃろう」
静けさが辺りを覆う。
一区切りして長老様が僕を降ろして立った。
瞬間……凄まじい魔力の変動が感じられた。
「長老様!」
「分かっておる!」
短いやり取り。長老様は立てかけてあった弓矢を手に取って叫ぶように言った。
「ヴィオラはここにいなさい!絶対に付いて来てはならん」
僕は渋々といった感じに頷いた。
長老様は屋敷から飛び出して魔法も使わずに20メートル近くある地面に着地した。
エルフの身体能力ってすげぇ~。
僕は大人しくエルフの優れた五感を使って何が起こっているのかを把握しようかな……
『簡単な世界観の説明』
所謂剣と魔法の空想世界。
様々な種族がいるが、生物としての格は存在しない。
魔族が人間に殺られることもあれば、エルフが龍族を軽くいなせるとしても何ら不思議なことではない。ただ、基本的な種族的な能力に差はあるので難しいことではあるが。
ともかく、種族としての上位下位は存在しないため、ハイエルフや神族なども存在しない。ついでに神も存在しない。




