004神童だね!
さてと……今のスペックを把握しとくかな。
辺りを見回すと、そこはログハウスのような樹に囲まれた香りがする。
起き上がろうとするが赤ん坊の身体では立つこともできない。
仕方ない……今のところは言語と魔法―――――たまたまお母様が使っているのを目撃した―――――を習得しよう。
言語はロシア語やフランス語を所々合わせたような、それでいて敬語とかもある非常に興味深い言語だった。まぁ、ロシア語もフランス語も習得してあるから結構楽なんだけどね。
魔法に関してはエルフの種族補正なのか、訓練すればある程度の魔力を操れるようになった。
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数年が過ぎると自分の置かれた文明の程度をはかることが出来るようになった。どうやら銃火器は開発されてないらしい。エルフの村だから人間達の領域の文明のほどは分からないが。恐らく魔法技術が阻害しているのだろう。
暦はあまり正確ではなかったが一応太陽暦だ。いや、正しいか正しくないかは僕には判断できないが……
農作業をしているエルフはいなかった。しかし食料の心配は無用だった。エルフ達は揃いも揃って弓の
達人だった。そして魔獣狩りをする。狩りに出かけないエルフは服や弓矢を作成する。それらをドワーフからは魔法銀の剣や、良質な防具、獣人からは希少な魔獣の素材と交換してもらうのだ。
ちなみに人間達とは断絶している。人間達はエルフやドワーフ、獣人を亜人と呼び、見つけたら問答無用で奴隷にしているから当然だが。人間達で言う“亜人”は人間をずる賢い子鬼と呼び、侮蔑している。子鬼をもっとずる賢くすると人間になるというのが彼らの持論である。
「ヴィオラ~、どこにいるんだ?」
この声はアレンだ……なぜ呼び捨てなのかというと気分の問題だ。僕は男は嫌いだ。特にあのようなイケメンフェイスは気に入らん。まぁ、呼び捨てにしているのは心の中だけだから良いんだけどね。
「どうしたの?……お父様」
僕の身体が女の子だと発覚した時は結構慌てたが今はもう慣れている。
喋りかたも女の子っぽくするのも。でも前世でも女の子っぽかったからすぐに慣れた。
「あぁ、そんなところにいたのか。早く降りて来い」
そんなところとは何だ!そんなところとは!
僕がいるのはエルフの住居があるさらに上に登ったところの細い枝である。たかが3歳の僕がここに来るには身体能力強化と並行して風の魔法を応用して空中歩行しなければならないのだ。そしていくら幼児の僕でも折れるほどに細い枝に座るには、重力を風の魔法で無視させるほどの莫大な魔力と、繊細な魔力調整と、相当な集中力を要する。なぜこんな面倒なことをしてまで上ったかと言うと、一つ目の理由は魔法の訓練、そして二つ目は景色が見たかったからだ。
最初はかなり大変だった。周りが煩いし魔法は上手くいかないし......それでも成功したのは長老様が教えてくれたからだ。
いや~こんな僕に魔法を惜しみなく教えてくれるなんて……長老様を天使かと錯覚してしまうところだった。
ともかく、ここから降りよう。
僕はフッと飛び降りた。地上から50メートルは離れている場所で。
アレンがいる場所からは20メートルはゆうに離れている。
ただし、心配は無用。訓練すればするほど増える莫大な魔力を巧みに使いこなしてパラシュートのように
ふわりと地面―――――正確には樹の枝―――――に降り立った。




