表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスパレードでデスパレートな異世界ライフ  作者: 蒼穹
第一章 最低状況からの成り上がり編
7/18

     第七話 スカート捲りはくじ引きである

「お、ぶ、つ、は消毒だああああ!」


「なのです!」


 朝からテンションMAXで店内を掃除している可愛い妖精達ことネネとノノ。

 

 恐らくこの世界でハードロックが流行ったら、先導者はきっと彼女達だと思う。


 間違いない。


 そんなブラックフューチャーを思考から振り払いながら、俺のダークサイドに落ちかけた心をそっと落ち着かせる。


 何でもいいけど汚物という言葉を言いながら俺を見るのは止めて欲しい。


「う、わ、き、死刑ええええええ!」


「なのです!」


「勤労は罪!」


「・・・・・・馬鹿なのです!」


 どさくさに紛れてデモクラシーを起こそうとしたルリルリ。真面目なネネが乗る筈はない。


「ねえねえハルハル、状態異常回復薬のストックが無いよう?」


 パタパタと飛んできたナナが眠たげな顔で俺の背中に抱き付く。


 おおおお。ふくよかな胸が気持ちいい。

 

 

 ふにゅん、かぷ、CHUUUUUUUU



「おい、どさまぎで人の血を吸うな」


「いいひゃひゃひへふひゃ(いいじゃないですか)」


 ぶんぶんと振り回すも一向に離れようとしないナナだったが、背中の弾力感の消失と共に突然軽くなる。


 マリーナが首根っこ掴んで外してくれたようだ。


「ナナ駄目。妊娠する」


「ふえ、本当! ぽ。私とうとうハルハルの奥さんになるんだあ」


 そんな簡単に妊娠しないからね! 人を全身生殖器みたいな扱いをするのは止めて欲しい。


 デレデレと顔を緩めるナナを無視して、俺が店の棚に置いてあった在庫表を取ろうとすると、今度はマリーナに抱き付かれる。


「ハル様。首から血が垂れてます」



 物静かな声でそう言いながら舌を這わせ始めるマリーナ。


「あ、ちょ、っとくすぐったいというか」


「動かないで。もう少し・・・・・・ハァハァ・・・・・・んちゅ・・・・・ちゅぱ」



 いや、これはもうイカン! 俺の生まれたての息子が早くも暴発する!



 心なしかマリーナのスーツのワイシャツの胸元がいつもより大きく開いており、クリスタブランドの黒レースの下着がこんにちわをしていた。


「おはようございますハルベルトン様」


 超冷徹な蔑視の視線を向けて来るアリア。もう冷ややかすぎる。


 未だ止めないマリーナ。


「なんでスケルトンと名前が被ってるんだよ」


「気のせいでは? スケベトンなんてちっとも思ってないですから。ハルエロトン様」


 名前の原型が最早崩れてるんですけど。


 いい加減こっぱずかしいのでマリーナを無理やり引きはがす。


 どこか残念そうな顔を浮かべてくれるのは嬉しいが、TPOを弁えて欲しい。


 そして、店の奥で“浮気者ハルの浄化運動賛成に清き一票を!”“なのです!”とネネとノノがヒートアップしているのは聞かなかったことにしよう。



「ところで他のメイド達は?」


「現在朝食の準備と自宅の掃除を行っております」



「そう。ルリルリは在庫チェックお願いね」



「またあ? 僕あれ苦手なんだよね」


「ルリルリ様、最近員数に間違いが多すぎますので私が一緒にチェックをします」


「・・・・・・ええ、てか、なんでスリッパ? それもう定着決定なの?」


 ルリルリが間違えたら叩く気満々らしい。すっかりスリッパがお気に入りのアリア。



 こんど誕生日プレゼントでゴールデンスリッパでも送ってやろうかな。誕生日知らないけどさ。


「良かったな。じゃあ取りあえず俺は朝食食べたらオーダーされた分作るから、何

かあったら工房来てくれ」


「畏まりました」


 アリアがルリルリの首根っこを掴んで地下倉庫の在庫チェックに向かう。


 この在庫チェックとは日別でちゃんとつけており、日付やその日のブランベルク国内の状況などを細かく記した日報表にまとめていく。こうしてデータを残しておくことで、物が売れていく状況や売れなかった時の状況を深く分析する能力を養わせることができるのだ。


 それを理解しているのはナナネネノノのトリオとアリアとマリーナである。


 他の従者9人は理屈は理解しているが勉強中である。


 商いとは意外と難しいのだ。

 


「ハル様、今日の朝食はご希望のベーコンエッグとバタートーストで御座います」



 銀毛狼人種の女性従者のフェリスが慈愛に満ちた笑みで俺を出迎えてくれた。


 俺とは毛色が少し違うが、彼女の毛並みは少し灰色っぽい輝きのストレートヘアー。真ん中わけの似合う美人であり、胸もスタイルも俺のドストライク。

 

 先日添い寝をお願いしたらアリアに止められたけどな。

 

 畜生。彼女オールオッケーだったのに。

 

 そんあ美人さんが準備した朝食を、食べ始めていた従者達も笑顔を向けて来る。


 彼女達は最初こそ先にご飯を食べることを躊躇っていたものの、俺が熱心に説得したことで徐々に肩の力を抜き、今では緊張することなく今の生活に慣れていった。



 何せ商業とは忙しい時は忙しい。休める時には休み、ご飯を食べる時にはちゃんと食べる。



 それが俺の家のルールである。



 そして俺は毎朝恒例のスカート捲りを行う。


「フェリス=クラウドが黒のレースでストラックアウト!」


 アリアがいないので大胆かつ慎重に。


 だが。



「ふふふ残念でした。外れですハル様」

  

そう。これは所謂スカート捲りクジである。


 捲った相手がスパッツだった場合はその場で朝のスカート捲りは終了。


 次の日まで捲ってはいけないのである。メイド達もちゃんとルールを守り、9人中3人までしかスパッツを穿いてはいけない。



 これは互いに尊厳と欲望を賭けた正当な戦い。



 うん。明日は必ず当ててやるけどな。



「今度こそフェリスだと思ったのに」



「ハル様は最近フェリスのスカートしか捲ってないじゃないですか! たまには私のも捲ってくださいよお」



 竜人種族のオリカ=ルッカが顔を膨らませベーコンつついて猛抗議。


「だってオリカはいつもボクサーパンツじゃん。わかりきってるしボクサーじゃ俺の心は熱くならない」


「ちぇ、今日は紐なのに」



 ぴく・むく・どくどく。



 今日もバッチしだね。



「じゃあ明日は確実に」



「ハル様」



 フェリスが困ったような顔で俺を指さす。はて俺が何かしただろうか?



 その意図に気付き後ろを振り返った瞬間。ブルーブロンドの髪が視界に入ると同時に、防御無視の衝撃が頭へ走る。



「ぐはあああああああ」



「朝からお盛んですねクリスタ君。女性のスカートはむやみに捲るものではないの

だけれど。おわかりですか?」



 ヴェロニカが何故ここに? いや、俺の醜態になんでこの人が激怒?



 いや無表情で無感情な声だから今一わからないけどさ。



「えと、これはスキンシップの恒例行事で」「その恒例行事は現時刻を持って廃止します」



「じゃあ年に3回。盆暮れ正月とか」「この国にそのような風習は無いのだけど」「神は死んだ」

「神ならいます。変態に正当な裁きをくだす神なら」



 そんな殺伐としたやり取りを横目に、従者達はとうとう食事を終わらせ持ち場に戻って行った。



「ヴァレンタイン様も朝食はいかがですか?」



 ただ一人残ってくれていたフェリスが朝食を勧めると、ヴェロニカも小さく頷いた。



「頂くわ」



「紅茶とコーヒーは?」



「コーヒーを頂けますか?」



 畏まりました。そう言ってフェリスは丁寧な手つきでコーヒーを入れ始める。


 彼女の物腰もまたどこか気品があり、彼女に聖女衣装を纏わせたら似合いそうだった。



 俺はヴェロニカの横でひたすらトーストを食べ、お代りをする。



「美味しいわ。素朴なのに美味しく感じられる」


「それは良かった。ところでここには何で?」


「下着を買いに来たのよ」


「マジ? 言って貰えれば俺が直接商品持って聖女教会に」


「ハル様、変な意味で商魂の方向性を間違えますとアリアに殺されますわ」


「そうね。うちにも歯止めの聞かない人が数人いるから気を付けた方がいいわ」


 二人して。俺の方向性はいつも美女に向かって求婚まっしぐらさ。松田さんちの翔太君並みにだてにスリッパで殴られてないぜ。


「冗談はさておき、営業前に来るなんてどういうことですか?」


「私は以前からドーナス商会の裏を探っているのだけれど、どうやらその裏で繋がっているのがアンドレ=レーゲン侯爵、彼は商会から献金された金で、王国の数人の貴族を派閥に取り込んでいるのよ。聖女教会にも数人いるようで内定を進めているのだけれど、もしドーナス商会とことを起こすなら慎重になって欲しいのよ」



「要するに聖女隊の邪魔をするなと?」



「できれば関わらないで欲しい。違う意味で。ドーナスが危険な存在なのことに変わりはない。もし叩き潰すなら不正な癒着の証拠などを押さえてから、でもそれは危険だから止めて欲しい。それだけ言いに来たの」



 ヴェロニカはフェリスが用意してくれた朝食を上品に食べ終わると、ご馳走様と告げて静かに立ち上がった。



「ご心配ありがたいけど、こっちも売られた喧嘩ですしねえ。まあ危険なことには首はツッコむことはしませんけど、証拠なるものがあったら提出しますよ」



「そう・・・・・・やっぱりそういうところは変わらないのね。それと、さっきの話は冗談ではなく本気だったのだけれど」



 それだけ言い残してか彼女は食堂でて1階へと姿を消した。


 何の話だっけ? 俺がフェリスを見やると、フェリスを指さす。



「ふふふ。ハル様。お買い物ですよ」



 そこで俺の中で歯車が噛みあった瞬間、いつの間にか駆け出していた。



「黒のレースおすすめですよおおおおお」



 店の中の下着コーナーに突撃ダイブを敢行した俺。



「不浄なるスケベに鉄槌を!」



「なのです!」



 ノノとネネのクロムオリハルコン製ダブルハンドハンマーでぶん殴られた俺は、下着コーナーから見事場外ホームランさながらに吹っ飛ばされた。



 

 魔導錬金でオリハルコンの再錬成を行って、ココナに頼まれた剣を作成し、指輪を完成させた後、俺はオリハルコンの剣えを専用の鞘に収め、ケースに収める。

 

 試し切りした結果は上々だ。指輪も魔力や魔法が上手く付与されて指輪に馴染んでいる。



 あとは商品を渡すだけだ。



 商品を持って俺が1階に行くと、既に多くのお客さんで店の中は賑わっていた。



「どうやら忙しそうだな。アリア、俺ちょっとギルドに行ってくる。もしかしたら商品もそのまま届けて来るから留守を頼んだよ」



「畏まりました。ハル様」



 アリアに向き直ると、アリアが俺の身だしなみを直してくれる。



「ふふ。全くハル様は手がかかりますね。ちゃんとしてください」



「はいはい」



「気を付けて行ってらっしゃいませ」



 珍しく優しい微笑みを向けてくれたアリアに見送られ、俺はギルドに向けて歩き出す。



 平日とだというのにやけに人の数が多い表通り。そんあ人混みをすり抜けてギルドにやって来ると、久しぶりに受付に顔を出した。



「えと、クリスタ魔導細工店ですけど、レメげトンのココナさんに商品注文の件で伺いました」



「ああ、貴方ね。随分と羽振りいいみたいじゃない。ちょっと待っててイケメンさん」


 眼鏡美人の女性に色目を使われ思わず苦笑してしまう。残念ながら俺には眼鏡属性は無い。


 コンタクトにしてから出直してきてほしい。


 まあこの世界に無いけどさ。



 暫くすると眼鏡のお姉さんは書簡を持ってやって来た。


「品物はルノウ街裏通りに持ってきてほしいそうよ」


「わかりました」



 俺は礼を告げてギルドから南に向かって存在するルノウ街に向かったのだった。








 人混みの喧騒から逃れるように私はルノウ通りにやって来た私。




 本当にこの手で殺さなくてはいけない。本当は殺したくない。でも、殺さなくてはペンダントを返してもらえないし、そもそも私は弱みを握られている。



 チームレメげトンの罪を。



 だからなんとしてでも。



 私はお金の入った金を持ってルノウの裏通りにやって来た。指定されたこの場所であり、彼がここに来るのを待っていることになる。



 いつ来るかわからないけど、彼が来たら私は合図を送り、彼を賊達に襲わせ剣を奪うのが仕事だった。




 本当は来てほしくないのかも知れない。来なければ彼は来なかったと言える。



 だけど残念なことに彼は来てしまった。



「いやあ、随分物騒なところで待ち合わせですね」



「え、あ、はい。あの商品って」



「ちゃんと持ってきてますよ」



 彼はそう言ってケースを地面に置いて開いて見せてくれた。



 凄い。とても綺麗な剣だった。とても美しく心奪われそうな輝き。



 私は歩み寄り彼に金子の入った袋を差し出して剣を受け取った。



「凄いです。これだけの業物をたった二日で仕上げるなんて」



 彼は特に照れくさそうにするわけでもなく、私のことを見つめていた。



 何だかその瞳は不思議だった。まるで何かを知っているかのような。



「さて、そろそろ出てきたらどうだ? 隠れてるんだろう?」



 え? なんで? 気配を察知されないように隠れてたはずなのに。



「ち、この女、隠れて教えやがったな」



「ち、違う! 私は教えてない!」



「ならその剣でそいつを斬れよ。この場で殺して見せろ」



 うそ、やだ、なんで私が殺さないといけないの? やだよ・・・・・・



「言う通りにしないならお頭に伝えるまでだ」



 結局私には逃げ場所なんて無いのだ。



「おいおいマジかよ。そのオリハルコンで俺をぶった切るつもりか?」



 驚いた顔を浮かべる彼。



 こうなったら。


「ごめんなさい!」


 私は彼を袈裟切りにした。

 

 男達は目の前で血しぶきを上げて倒れる彼を、さぞ滑稽な物を見る目で笑っていた。




 私はそれと正反対に、涙がこぼれていた。




 とてもとても胸が痛かった。


スパッツはスパッツで当たりな気がしないでもないのは俺だけだろうか。

でもこんなくじ引きやってみたい。

そんなこと考えているから斬られるんですよねえ。

次回はハルベルトキレます。



パンツのゴムが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ