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デスパレードでデスパレートな異世界ライフ  作者: 蒼穹
第一章 最低状況からの成り上がり編
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     第五話 スケルトン店を出す

 一日目が終わり二日目の改築工事。


 別に休息をまたいでの工事では無く、ほぼぶっ続けなのだが、地下10メートルから3メートル上ったところをコンクリートで覆い、配管を設置しながら思考内の設計図の間取り通りにコンクリート床と天井と壁を造り上げていく。


 こうして地下3階が出来上がり、各階にそれぞれトイレや水道が完備されるわけだが、一応地下3階には工房と配魔力盤を設置。これは絶え間なく水を循環させる設備を造り、そこに特殊な術式を刻んだ水車式歯車を組み事で、この運動エネルギーを魔力に変換。



 それをストッカーと呼ばれる設備に魔力を蓄え、そこから配魔力盤に繋げることで、家の中でも魔力設備の恩恵を受けられると言うことだ。


 更に屋根にはソーラーパネルを設置し同様に魔力を生み出す。


 その術式の配線を各部屋に這わせるので二日目が終了。


 三日目になると、今度は魔導錬金で外装の改造がメインとなる。



 一応、夏は涼しく冬は温かく、湿気に強い家を作る為に石造りでは無く、圧縮加工した木と魔晶石を合成し、術式を刻んだ木魔材を開発。骨組みにこれを使って、更には有り余るクロムオリハルコンとコンクリートを混ぜた外壁を建造。これにもとある術式を刻んでいる。



 こうして出来上がった家は、外観は他の家と大きく異なるだけでなく、内装も白を基調とした綺麗な仕上がりになった。



 まるで大理石をふんだんに使ったようなピカピカの床。


 これも石灰を混ぜて綺麗に仕上げたクロムオリハルコン製の頑丈な床だ。


 天井にはこの世界では最先端科学のような魔導式の埋め込み型の照明。ガラスケースやカウンターも石である。


 壁にも綺麗でおしゃれな商品陳列棚。


 いずれは様々な商売を展開する為の基盤をここから始める上で、実に素晴らしい始まりの場所と言えた。


 さて今度は住居区画である。二階建てを三階建てに改造した店舗兼住居。


 部屋数も多くなり、俺の前の世界でいう近代的な螺旋階段を採用。更には外の光を取り入れる為の天窓も入れたことで、住居スペースは実に素敵な物となった。


 まるで貴族が利用するような小さな別荘より豪華さ。


 これはいつも綺麗さを維持する為にメイドを雇うべきだろうな。ルリルリに家事能力を期待するのは無駄かもしれない。彼女には店番などをしてもらったりするべきだろう。


 他にも人手が欲しいな。


 そこで思いついたのがピクシアの存在だった。使用人にあのピクシア達を雇うか。


 賃金は必要なさそうだし。


 まあそれは追々として、当初1階に造る予定だった食堂などは全て1階に移し、1階は商談を行う為の応接室や給湯室などにする。



 地下1階の魔導具商品保管庫は誰でも入れるようにする。どうせここには安物しか置かない予定だし。



 ちなみに寝具などは一度買いに行ってからアイテムストレージの中で加工し、寝心地のいいものに作り直して設置した。


 家具なども気に入ったものが無いので、全て再加工して色を塗り直した物を設置。



 そこで考えた。



「もし使用人を雇ったら部屋が足りないな」



 再び考え込んだ俺は、即座に家をでて隣の民家を訊ねた。


「すみません。家を売ってください」


 大胆にも交渉を始める。突然見知らぬガキが家を売ってくれと言って来れば驚くのも頷ける。



 そこで俺は金貨3枚を差し出す。



「今すぐ売って欲しいので必要な物以外置いて行ったままで構いません」



 流石にいい家ではないので、家主は金貨3枚出されて上機嫌に二つ返事で家を譲ってくれることになった。家財道具をほとんど置きっぱなしにしたまま、そこの家族は衣類などを持ってそのまま家を出て行ってしまった。



 元の家族が出て行ったところで俺は休むことなく改築工事を続けた。ちなみにルリルリの食事に関しては、前もってお金を渡しているので恐らく問題はない。



 こうして二軒の家をくっつけて新しく改築した家は、新しく購入した家を丸ごと住居スペースとして使い、2階と3階が廊下で繋げた。



 まあ使用人も住まわせるには広くなりすぎたけど、まあ問題はないだろう。



 こうして俺の店舗兼住居は完成したのである。




 ◇





「わあ凄いね! まるで貴族の家だよ」



「まさかここまで造りかえるなんて。しかも取っ手を捻っただけで水が出るぞ」



「ええ。これほどの設備。どこを探してもここだけでしょう」



 屋敷が完成した後、早速ルリルリを迎えに行き、聖女教会にヴェアトリスを迎えに行った。



 そこで何故かヴェロニカも一緒にいて、ヴェアトリスが誘ったので一緒に来ることになった。



 彼女は最初俺の姿を見た時大変驚いていたが、一応ヴェロニカには俺がスケルトンだったことは伝えていないらしい。



 ここでは俺は旅から戻って来たという設定になっているのだ。



 その話にはどこかヴェロニカは納得していない様子ではあったが。



「本当にここで魔導細工店を始めるのか?」



 男勝りな口調に戻っているヴェアトリス。


「できれば魔導細工以外にも色々と売ろうかなって。塩や綺麗な水をね。他にはこの魔晶石をはめた魔導具かな」



 俺は一度原子分解して再構成し圧縮製法で造った魔晶石を見せた。これはジュードにも見せた同じものである。



「こ、これは! これが魔晶石だっていうのか!」



「・・・・・・確かに魔晶石のようね。でもかなり高純度でしっかりした物。天然ものでもここまでの物は滅多にないわ」



「それを販売する。まあ高すぎて売れないだろうけどね。魔晶石一つで3000万ベルクは下らないし。まあ客寄せの飾りだな」



「確かに。それだけ値が張るものはおいそれと手が出まい」



 そう言って頷くヴェアトリス。



「でも旅に出てこのようなものを手に入れて来るなんて凄いわ」



 無表情かつ無感情な声のヴェロニカ。本当に凄いと思っていてくれるのかどうか不思議だが、彼女に褒められることは正直嬉しい。



「さて、続いて住居だね」



 俺は自慢の住居を見せた。



 まず、店舗フロアから螺旋階段で上がり、見せたのは通路から壁一枚を隔てて姿を現したシステムキッチン。



 さらに磨かれたように輝くようなコーティングが施された家具や魔導器具の数々。



「ハルっち! 凄いこれなに! 開けると滅茶苦茶涼しいんだけど!」



「冷蔵庫だ。食べ物を冷やして置いておけるものだな」



 ルリルリが尻尾をぶんぶんと振って喜んでいる。



「クリスタ君、これは?」



 魔導コンロの下にある引き戸を開くヴェロニカ。彼女もまた興味が尽きないのだろう。



「オーブンだ。色々と焼いたりできる窯のようなものだな」



「凄い。これは?」



「瞬間湯沸かし器。ヴェアトリスみたいなもの」



「どういう意味かな?」



 殴られた。答える前に殴るなんて酷い! 



「瞬間的に沸騰させる・・・・・・ああなるほど」



 得心したようにヴェロニカが頷いた。どうやら理解してくれたみたい。



 そして俺は再び殴られる。



 だから瞬間湯沸し器って言われるんだよ。



 続いて三人を案内したのは二軒繋げて広くなったことで、造りかえた風呂だ。これは隣の家の地下に丸々大浴場を造った。32畳分の広さを誇る大浴場で、脱衣場

には飲み物とかが常時置いてある冷蔵庫完備。



「もう住みたい」



 そう一言漏らしたのはヴェアトリスだが、ヴェロニカも右に同じと言わんばかりに頷いている。



 流石にここまでの設備を備えた家などどこにもないだろうな。



 いくら貴族の家でも住みたくない。何せ建物だけが綺麗で大きくても設備が古いし。



 二人に魔導ウォシュレット付きのトイレを見せた。更にトイレットペーパーはこの家を造った際に余った木材の一部を加工して造ったもの。



 彼女達は試しに一人づつトイレを使ってみたら、感動のあまりトイレが欲しいと言ってきた。



 上下水設備の整っていない家では使えないと言ったら、悲しい顔をしたのは言うまでもない。



 まあこの中で一番勝ちほこった顔をしていたのはルリルリだ。何せこの家に住めるのだから。



「ふふふ。今日からここが僕の家なんだね」



「その代り働かせるけどな」



「それくらい問題ないさ。僕に何でも言いつけてくれたまえ」



 自身満々に言い放つルリルリ。そう言ってくれるのを待ってたよ。俺は厚さ50センチにも及ぶ紙の束を渡した。



「早速これは仕事のマニュアルだから読んで置いてね」



「はあああああああ」



 大事な商品を扱ったりするだけじゃなく、様々な商売を始めるので、彼女にも勉強して貰わなきゃいけないし。



 算術を覚えて貰う為の教材は更に別で用意してあるのだ。



「ただでは贅沢な暮らしができないということだな」



 ヴェアトリスが苦笑する中、ヴェロニカもまたコクコク頷いていたのだった。









「お兄さんはこないだ助けてくれたスケルトンさん!」



 ダンジョン50階層にて俺はピクシア三人組と出会う。彼女達は俺の魔力の質でこないだ助けたスケルトンだとわかったらしい。



「久しぶりだね。元気そうで良かったよ」



「うん。あの後お礼を言おうと思って探したけど見つけられなくて。てっきり殺されちゃったのかと思った」



 ピンクヘアーのピクシアが綺麗な羽をパタパタさせながら歩み寄って来る。



「なのです!」



 こちらは青髪のピクシア。



「安心したわよ。で、今日は何の用?」



 赤髪のピクシアも俺の周りを飛び跳ねている。まるで妖精のワルツだな。


 身長は160くらいの少女という外見。


 うむ。やっぱり売り子としては合格だ。


「俺と一緒にダンジョンの外で暮さないか?」


「きゃああ。プロポーズじゃん」


「なのです」


「ふえ、マジで言ってんのアンタ! ま、まああんたみたいな男だったらいいけど

さ」



 いやプロポーズってなんだよ。結婚しないからな! まあ確かに可愛いけどさ。


 まだそう言うの考えられないし。


「まあ結婚ではなくてさ、とりあえず助けて欲しいんだよね。その代り俺も君達を

助ける美味しいご飯を毎日食べさせてあげるから」



「本当! いくいく!」


「なのです!」


「ふふん。どうやらアンタは私の魅力にいちころのようね。いいわよ」


 約一名同じことしか言ってないのが気になるけど。



 こうしてピクシアを売り子として獲得することに成功したのであった。



 ちなみにピンクヘアーのピクシアはナナで、ブルーはネネで赤はノノとい名前だそうだ。



 さて、ピクシアを連れ帰った日の夕方。未だ開店していない店の前は、多くの人が集まって中を覗こうとしている。残念ながらクロムオリハルコンを魔導錬金で透過させた窓の中はカーテンが閉められており覗くことはできない。



 更に特殊キーによって施錠されている扉も開かない為に、勝手に開けて中を覗くことはできない。



 そんな中に俺が帰ってくれば当然声を掛けられる。



「あのう、ここはどういったお店なんですか?」



「魔導細工店です。他にも色々と物を売ったりしますけどね」



 そう言って俺は扉を開いて中に入る。



 店の中では頭から湯気を出しているルリルリがカウンターに突っ伏している。



 恐らくマニュアルを制覇したが、算術の勉強で頭を悩ませているのだろう。



「あは、頭から湯気を出してる奴がいるわよ!」



 赤ピクシアことノノが腹を抱えて笑い出す。



「なのです!」



 ネネ、お前は本当にそれしか喋れないのか?



「算術ですかあ。ナナはできますよー。簡単なものですけど」



 ナナを含めて三人のピクシア達は何故か算術が出来るらしい。一応店には魔導式

電卓を置いてあるので、計算する時はこれを用いて貰うことにする。


 後は三人の衣装だけだな。


 俺は自宅に帰ってくる際に、染物店で買った上等な生地をふんだんに使って、四人分の店内用衣装を5着ずつ用意。メイド服にも似ているが、こっちは本場より丈

がはるかに短く、ちょっと魔女っ娘チックに仕上げたもの。ちなみにこれにもクロムオリハルコンを編みこんでいるので、かなり防御力がある。



 いざという時の為の戦闘服であり、決して勝負服ではない。



「きゃあ可愛い! 絶対この服は私の為に生まれてきたのよ」



「はうう。丈が短いですけど、こういう服好きです」



「なのです!」



 三者三様のリアクション。一方ルリルリもノリノリ。算術でオーバーヒートした

こともすっかり忘れてクルクル回った。



「どうどう? 似合う?」



「ああ」



 ちょっとルリルリの胸はきつかったかもしれないけど、あの胸を強調したものは

男性客にウケるだろう。


 ひざ下までのブーツも磨かれた床を歩くたびに響いており、何故か四人とも歩き方まで意識している。まるで大人の女性って感じ?



「ねえねえ、ハルハル、私のパンツ見えちゃう」



 ナナが床を指さした。


 ああ、あまりにも綺麗で見事にスカートの中が丸見えだ。


 なので、俺は床の表面に気付かない程度の凹凸をつけて、光沢を残したままぼかすことにした。



 さて、三人には商品の陳列をやって貰っている間、俺は市場に買い物にでた。



 何を買うのか? 



 それは奴隷である。


 初めから使用人を雇うと金が高いので、奴隷で済ませることにしたのである。奴隷は一度買うと安く済む。



 その前に俺は、アイテムストレージから動物の毛皮やミスリルの延べ棒を再び出して、ギルドに立ち寄って換金してから市場に出向いた。



 日も沈んでから、奴隷販売している館に顔を出すと、店の主人は驚いた顔をする。


「これはこれは、表通りで新しくお店を開かれるクリスタ様ではないですか」



 え? なんで知ってるんだろう。



「誰にも言ってないはずだけど」



「不動産屋から流れた情報ですよ。彼らはそう言った情報の売り買いをしてますか

ら。私もそういう話を耳にしただけですが。して、クリスタ様はどのような奴隷

を?」


「品ぞろえは?」


「家事に夜伽に戦闘それぞれ有スキル者を取り揃えております」


 中年の紳士は手を叩くと、小奇麗な衣服に身を包んだ女性達が姿を現す。



「全てのスキルを保有しているのは何人だ?」



「5名ですね。その分値が張りますけども。一人あたり1万ベルクでしょうか。し

かも15歳から17歳です」



「じゃあその5名と算術が出来て家事ができる者だな」



「後者は何名ですかな」



「5名」



「畏まりました。全部で2万5000ベルクとなります。そうですね。これだけ大

量の奴隷を購入して頂けるのでしたら、お一人サービスで差し上げますが」



「随分気前がいいな」



「ええ。これでも人を見ています。それに私も手広く商売をしておりますので、こ

れを期にお近づきになれればと」



 全部で11名か。食費と部屋の数に衣服などその他諸々かかるなあ。でもいいか。



「じゃあそこにいるダークエルフの女性をくれ」



「畏まりました」



 これで使用人は揃った。店の主人ことローガン=ウェルスは早々と奴隷と俺の契約を結ばせる術式手続きを行い、おれはこうして使用人を手に入れた。





 11人の奴隷を引き連れて家に戻った俺は、11人全員の部屋を割り振る。



 彼女達は自分達に割り振られた部屋を見て大層驚いていた。何せ奴隷専用のタコ部屋のような汚い部屋を想像していたらしく、来てみれば貴族の家のような、綺麗な内装の部屋なのだから当然の反応と言えた。



 彼女達にはトイレの使用の仕方や風呂、魔導器具の使用の仕方をレクチャーしたあと、各々にメイドの服と店用の衣服を与える。



 そしてローテーション式に店の仕事と家事と訓練を行わせることにしている。ちなみに訓練所は地下3階にテニスコート6つ分ほど増設した。



 この訓練所の設置と彼女達の訓練は色々と考えた結果だ。



 その理由はまた別に語るとして。



 こうしてやっと、俺の店舗兼自宅での生活が始まったのである。





 ◇





 さて、店の売り物でメインの売り物。

◆塩  100g=10ベルク ◆水 1ℓ=5ベルク ◆ポーション 50㎎=100ベルク◆状態異常回復薬  50g=100ベルク

※塩の入れ物、水の入れ物。木製や甕代で5ベルクずつ。


 他、オーダーメード受付中。


武器防具。

◆ミスリルソード  1000ベルク ◆ミスリルランス  1200ベルク  ◆ミスリルアックス 1300ベルク ◆ミスリルシールド  900ベルク  ◆ミスリルバングル 1200ベルク ◆ミスリルヘルム  1500ベルク  ◆ミスリルメイル  2500    ◆ミスリルブーツ  2300ベルク  ◆ミスリルレッグ  2000ベルク。



 とまあこんなものだが、実は性能もデザインもクリスタブランドと称して、他とは一線を画している。


 このデザインが人気で他の武器防具屋のミスリル系が売れなくなってしまったとのこと。



 まあ、魔導錬金で加工が自由に出来ると言うのが大きなアドバンテージになったんだと思う。



 俺はこのためにワザと大量にミスリルや鉄を売り払ったのだ。こうして売れなくなったミスリルを使って武器防具を造り、他の店は安い値で売り始める。彼らはいくら売れようが、黒字になるどころか、元手を取り返せるかどうかギリギリの売り上げにしかならない。




 俺の場合は仕入れ値がゼロなので、競合して値段を下げる必要は無い。むしろ彼らが売って早々とミスリルを無くしてくれた方が、こちらとしては後からの旨みがあるのである。  

 

 さらに塩は海水を蒸留して出た塩は無尽蔵に出るので、これまた仕入れ値ゼロなだけでなく安い為に飛ぶように売れる。それと綺麗な水の噂はあっという間に広がり、王宮までもが注文してくるようになった。

 

 そして医薬品についても冒険者達が効能の良さに驚いて、大量に買いに来る。



 これのおかげで武器防具が売れなくても、一日3000ベルクは最低でも稼いでしまうのだ。



 全ての商品にはクリスタ印が術式で施されているので、偽物などが出回ってもすぐにわかる様になっている。

 

 この人生の快進撃とも思えるスケルトンから始まったリスタート人生は、やっと上向きに上方修正され始めた。


「ふわあ、忙しいですう」



 カフェテラスのような休憩室。これは応接室の隣のスペースが結構余っていたので、みんなの為に休憩所として改装して造った。



 当番制で使用人がカウンターの中に入って、毎日コーヒーや紅茶やお菓子と言ったものを準備する。また昼食などもここで出している。

 

 それと最近俺は制服を二種類にした。スリッドの入ったカソック風のこじゃれた衣装。靴はミドルブーツで、これもクリスタブランドオリジナルの黒のエナメルである。



 大人っぽい女性と少女っぽい女性がそれぞれに合った衣服にさせて、その魅力で男性客を誘惑しながら販売。



 乗せられ買う客が後を絶たないのだ。



 そんな回転率に合わせ売り上げも伸び始めた頃だった。


「どうも。私はドーナス商会で代表をしているブリジット=ドーナスと申します」



 ブランベルク王国でもトップを誇る商会の代表が俺の元を訪れた。



 突如の来訪だったが、とりあえず大人の対応として応接間に案内する。



 中年もいいところのおっさんのブリジットは、店に入った時から目を大きく見開き、終始俺の店の中を見回していた。



 まあ内心では物凄く驚いているようだ。何せ心拍数がめっちゃ上がっているのが俺には見えるから。



 相手の筋肉や汗の状況に脈拍を含め様々な生体情報を、リアルタイムに眼球のセンサーをとおしてリリスがモニターしているのだ。



 こいつは俺に何やら商談を持ちかけに来たらしい。大方予想は出来てるけどね。



「ご用件は一体何でしょうか?」



「実は貴方の販売するミスリル製品、そして医薬品、塩は此方の商会で販売利権を獲得しているものです」



「それで」



「こちらでの販売を止めて頂きたい。もし売り上げに応じた金額の金を収めて頂ければ権利を認めますが」



「法律でそのような規制は御座いませんけどね」



「これはこれは。クリスタ殿は商いに関しては素人とみられる。国が定めた商品規制というものがございます。これは不当に値が上がったり暴落したりしないようにする為の措置でございます」



「へえ。それにしては先日まで鉄鉱石関係の値が高騰していたのはどうしてでしょうか?」



「・・・・・・さあ。商会も全てにおいて対応できるわけではないので」



 嘘だな。明らかに脈拍が著しく変わった。



 更に眼球運動にも乱れが起きている。



「どうやらドーナスさんはどこかの貴族様と仲がよろしいでしょうかねえ。後ろ盾があることで強気な発言をしているようですが、俺の店に喧嘩を売りに来たのであれば直接そう言ってください。言っておきますが、俺は利権が云々で邪魔をする連中の店は叩き潰すつもりです。ちなみにこの国の中で一番の品を扱うのは俺です。上質でありそれ相応の値段で売る。

 不当に値段を上げることも下げることもしません。その時期に売れなければ別に別な時期に売ればいい。俺にはそれが出来るし、国は俺を潰すことも手放すことも出来ない。わかったらお帰りください」



「いいのですか? 高々占有利権欲しさの為に身を滅ぼすことになっても」



「それは商売上の意味ですか? それとも不運な事故を装ったことの意味でしょうか? どっち道俺はどちらでも滅びることはありませんよ。まあ死神に嫌われているようなので」



 ドーナスは怒りに表情を曇らせて店を出て行った。



「ふええ。なんだか大変なことになったみたいだねえ」



 ルリルリが苦笑いで応接室にやって来る。



 ふむ。そういう風に見えるのかな。でもまあみんなの心配を掛けないように手を売っておく必要があるな。



「てか、どさくさに紛れて仕事サボるな」



「ば、ばれた? テヘ」


「仕事はサボってはいけないのです」


 癒し系ピクシアのネネが応接室に入って来るなりルリルリの腕を引っ掴んで店へ連行していく。


 まるでコントだな。


 入れ違いにダークエルフの元奴隷のアリア=グレイスが顔を出す。


「ハル様。午後のスケジュールなのですが、買い付けなどは御座いますか?」


「特に無いな。地下の在庫のチェックは誰がやってる?」


「マリーナです」


 先日奴隷屋で買った黒髪ショートの寡黙な少女の名だ。スカイブルーのミドルス

トレートヘアーの美人ダークエルフは、店内用に来ているフレアパンツスーツが凄

く似合っている。



 さしずめ美人秘書と言ったところだ。



 勿論マリーナにも同じ衣服を着させているが、残念なことに寡黙すぎる為に接客向きではない。



 だが彼女は立っているだけでも男達の顔が緩んでしまうほどの美人。



「あとで確認する」



「ハル様が出向く必要はありませんよ」



 アリアが言うと同時にマリーナが応接室にやって来た。ヒールの高さもあって、俺より頭一つ高いマリーナが、在庫表を俺に渡してくる。



 背が高くスタイルがいいのも素敵だが、どうも見下ろされると圧迫感感じるよね。



「ハル様、ポーションの在庫が100切ってしましましたがどうしますか?」



「じゃあマリーナ一緒に作る」



「ハル様、鼻の下が伸びてます」



 アリアの手厳しい突っこみ。いいじゃないか。鼻の下伸ばすくらいタダだし、スケルトン時代には出来ない芸当だよ?



 大笑いだって出来なかったんだぜ。下顎外れるし。



「ポーションの作成方法は・・・・・・」



 そこでマリーナが首を傾げる。



「問題ない。地下にある工房でターミナル端末のアリスの指示に従って作業すればいいだけだ」



 俺はマリーナとアリアを連れて地下二階に降りる。

 

 地下二階からは床全てが蛍光灯が仕込んであるようなパネルライトになっており、その通路の奥まった場所の部屋に入ると、様々な設備が設置してある。



 さらにその隣にはガラスケースや収納棚が設置された武器庫の部屋。



 余談だが、武器庫は全て自作の銃火器類が置かれており、現在訓練を受けているメイド達は全てこの武器を使用しての訓練を行っているのだ。



 さて、工房の中で端末の前に立つとアリスがホログラムで現れる。まだ10歳程度の少女に見える外見のホログラム。



「ハローマスター。そこの二人はなあに?」



「これから色々とこの二人には工房を任せると思う。そこでアリスには面倒見て欲しいんだ」



 このリリスの妹機であるアリス。現在こいつには工房での設備運用と、自宅内の魔術系セキュリティーを担当して貰っている。



 リリスと同等の演算能力を有する能力故に、リリスとは違った意味で個性が強い

AIだ。



「ふーん。マスターのピー奴隷じゃないよね」



「その効果音はなんだよ。つうかいらん詮索するな」



《今は違うけどそのうちと言うことですよアリス》



「へえ。嫌だなあ。私も肉体持ったら凌辱されちゃうんだね」



「こら、いらんことを言うな! それじゃあ俺は行くから後はよろしく」



 取りあえずアリスの下半身ネタから離れたいが為に、俺はマリーナを置いてさっさと工房から立ち去ったのだった。





 


予想以上に長くなってしまいました。中々無双が始まらないのですが、温かく見守ってください。


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