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デスパレードでデスパレートな異世界ライフ  作者: 蒼穹
第一章 最低状況からの成り上がり編
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     第二話 クロムオリハルコンで無双

 異世界ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?


 数多の樹海に分かれる無限の迷宮。凶悪なモンスターのドツボ。それこそ“ダンジョン・オブ・ザ・デッド”


 富と名声を求め自分も命知らずのアンデッドと墓場行き。墓石に名前を刻んでさあ出陣。


 手荷物・線香一本で土から這い上がり末に到来するのはモンスターに襲われる美少女。


 響き渡る悲鳴、怪物の汚い咆哮、間一髪で飛び込み翻る鋭い剣の音。


 怪物は倒れ、残るのは地面に座り込む少女と、クールに佇む格好の良い自分。


 ほんのり染まる頬、自分の姿を映す潤んだ綺麗な瞳、芽吹く淡い恋心。


 時には(以下略)


 少し邪までいかにも青臭い考えを抱くのはやっぱり若い(以下略)


 ダンジョンに出会いを、訂正、ハーレムを求めるのは間違っているだろうか?


 



 結論。





 俺は間違っていました。



「ほわああああああ」



「いやああああ」



 かつて住んでいた世界のラノベ作家の大森先生に脳内で謝り倒しながら俺はもと来た道を引き返す。



 なんでダンジョンに聖女隊のメンバーがきているんだ! 勝てるわけがないじゃないか!



 光属性を嫌うアンデッド達にとって天敵とも言えるべき存在。そして彼女達は光属性の攻撃が出来て当たり前の集団。



 俺が肉体もろとも昇天させられるのは必死。


 死んでしまうわあああ。


 いや既に死んでいるけどさ。


「こっちに逃げたわよ! あいつ絶対レアモンスターだわ! はぐれメタルよきっと!」


 いえクロムメタルです。


 ん?


 待てよ、俺って現在死体に憑りついてるわけじゃないよな?


《肯定。浄化の光を浴びたところで効果は発揮されません。ただし、体から離れた場合は危険》



 リリス先生の助言で俺は一気に安堵して立ち止まる。



 それじゃあ怪我をさせない程度に戦って、ころ合いを見計らって逃げればいいんだよな。


 なーんだ。


 実践テスト出来るじゃん!


 そうとわかれば俺は引き返す。まさか50階層まで聖女隊が来ているとは思わなかったけど、ここで男前なところを見せれば、俺を仲間にしてくれるかもしれない。


 むしろ使い魔にしてくれるかも!


 うん。よし、有能で可愛らしいお茶目なスケルトンだというアピールをすれば、このまま一緒にダンジョンから連れ出して貰えるかもしれない!


 そうと決まればレッツゴー。


 俺は聖女隊の集団がいるであろう場所に向けて歩いて行こうとした時だった。


《聖女隊の集団付近に重量級魔物の反応を探知》


 ぬわに! これは大チャンスではないか! ここで格好つけて登場し、彼女達を助ければハーレムの第一歩だ!


 俺は即座に壁を拳でぶち壊しながらショートカット。掘って掘って掘りまくって

壁をぶち抜いて出た。


 ここに俺の聖女達が。


「GUGAOOOOOOOO!」


 50階層では珍しいベヒーモスでした。


「すみません。間違えました」


 ぶち壊した壁を魔導錬金で修復を始める。まるで巻き戻しをするかのように瓦礫が集まって壁を形成したので、俺は再び元の道へと引き返そうとした。


 が、しかし。見事に壁をぶち壊したベヒーモスの拳が俺の背中に直撃。10数メートル先へと飛ばされた俺は堀った壁の瓦礫の山に盛大に突っこんで埋もれた。


「おいおい仲間割れか? まあ助かるぜ。てかみんな気をつけろ! 隙を見て逃げ出すぞ」


 どうやら聖女隊のメンツでも手を焼く相手らしいベヒーモス。


《損傷ゼロ》


 スゲー。あのデフォルトスケルトンだったら絶対に死んでたね。



 さて、彼女達が戦っている間に逃げようかと考えていた時、俺の方へ何かが飛ばされてきた。



 純白の戦闘服に身を包んだ聖女隊の一人だ。



 俺の前で落ちた女性は、あちこちを怪我して気を失っているようだった。そんな時、ベヒーモスが俺のぶち壊した壁に潜り込んでくる。


 ベヒーモスがくぐるにしては小さすぎる穴の為、その巨体が穴を広げるように削りながら前進してくる。



 このままでは彼女の命が危ないだろう。まあきっと助けてもハンティング対象として見られるんだろうな。


 それでも俺は立ち上がる。


 いや、殴られたお返しをしなきゃいけないし、まだ実戦テストしてないんだよね。


 ほら、美人の前で格好つけようかと思っても、その美人が気絶してるからさ。俺はゲンナリした下心を沈めてベヒーモスの前に立ちふさがる。


 奴の目はまるで小物を見下す強者の目だった。スケルトン風情がでしゃばるなと言わんばかりの様子だが、ここで美女を食べさせてあげるわけにはいかないのだ。


「ターミネーターなめんなよ!」


 助走つけて拳をベヒーモスの片目目がけて振りおろす。突き刺さる様に俺の拳がヒットし、ベヒーモスは激痛のあまりに咆哮を上げて後ろに下がって行った。


「おお、すげえ。俺ってベヒーモス相手に戦えるんじゃない?」


 意気揚々と前に向かっていった瞬間、崩れた瓦礫の下敷きとなる。


 何とも情けない俺。


 既に聖女隊の集団の姿は底になかった。あら、みんな逃げたのね。できればこの瓦礫から助け出して貰いたかったんだけど。


 下敷きのまま首だけを動かしていた俺の目の前に、片目を潰されたベヒーモスが再び登場。


「あ、どうも。拳で語り合った仲なわけだし、ここは助けてくれたりしないですよね?」


「GUOOOOOOO」


 めっさ(青森の方言)怒ってるやん。おら死ぬかも。


《パワージェネレーター起動》


 リリスさんが俺の体にセットしていた圧縮作成した魔晶石製カートリッジから魔力を体に流す。


 漲る力が数トンはあろう瓦礫を押しのけた。


「はじめからこれやってくれないかなあ」


《命令が無かったので。現在命の危険がありましたので》


 これで俺は数分間の間オーバードライブモードで稼働できるらしい。


「ふんぬうううあああ!」


 瓦礫を持ち上げてベヒーモスにブチ敢えてると、余程痛かったのかベヒーモスはその場から逃げ出した。


《あれの生体素材と遺伝子データは有用です。仕留めることを推奨》


「了解でも意外と早いな」


《もっと先へ・・・・・・加速してみたくはないか? 少年》


「そのキャッチーなフレーズどこで覚えてきた! でも加速したい!」


 俺の願いに応えるように体のフレームの若干の装甲がスライドし、露出した内部フレームに青白い紋様が浮かび上がる。


《トラ〇ザム》


「違うよね! てっきりユ〇コーンのサ〇コフレームかと思ったよ!」


《馬鹿言ってないでくださいマスター。【エーテルドライブ・オーバーブースト】起動》


 馬鹿言っているのは決して俺じゃないと思う。


 俺の体が六倍速で空間を突っ切る。


 瞬間的に迫ったベヒーモスの体を、俺の超高温のボディーが貫通して一気に絶命させた。


 その巨体を半壊させたベヒーモスは絶命の咆哮を上げる暇も無く、地面に轟音を上げて倒れたのだった。


 初めて倒した重量級の魔物。


 感動と興奮が未だ心の中で冷めやらぬ中、リリスはベヒーモスの体をストレージに回収してしまった。


《ベヒーモスの死骸を回収。DNAデータをストック。システム【ソウルスティール】が発動され、ベヒーモスの魂と魔力も回収されました》



 何だか知らぬ間に凄いシステムが内臓されていた。なにはともあれ、これで俺はダンジョンの外へ安心して旅立てることを証明したのであった。


 ベヒーモスを撃退した俺は、先ほど気絶していた聖女隊の女性の下へ向かう。


 未だ気絶している女性を担ぎ上げて、俺は生前からストックしておいたポーションを彼女に使用し、脱出用魔法陣がある場所まで移動する。


 恐らく彼女の仲間である他の聖女隊のメンバーが探しているかもしれない。そう思って少し待っていることにした。


「あ、あいつ!」


 案の定、聖女隊の集団は俺を見て抜剣するも、その様子から大分疲弊しているように見えた。


 まだ戦う気なの!


 でも、目的は達成したので俺は担いでいた女性を脱出用魔法陣に放り投げる。


「こいつ、もしかして」


 そう俺が助けてあげたんだぜい!


「身ぐるみ剥そうとして間に合わず逃げようとしてる!」


 あれ! なんでそうなるの! 助けたんだけど。


「あのう、何か勘違いしてる」


「うわあ、喋ったぞこの金属スケルトン!」


 気味悪いものを見るように視線を向けられとへこむよね。特に相手が綺麗な女性ばかりだと。


 俺はやむなくその場から離脱しようとした時、別方向から違う聖女隊のメンバーが来るのを見かけた。


「ヴァレンタイン筆頭聖女!」


 聖女達が羨望の眼差しを向けた援軍の聖女。それは、ブルーブロンドの美しい髪に、エメラルドの瞳をした美しい女性だった。


 俺はこの人を知っている。


 忘れるわけもない。


 かつて魔導騎士官学校に在籍していた時に憧れていた聖女候補。


 成績優秀で、その実力は現役聖女を越えるもの。その彼女こそ学園のクールビューティー。


 ヴェロニカ=ヴァレンタインだった。


「珍しい個体のスケルトンのようですね。・・・・・・その服装と腰の装

備・・・・・・まさかね」


「救援要請があったので来てみれば、スケルトン一体に何をてこずっているのですか?」


 ヴェロニカの隣に立っていた美人、ピンクブロンドのミドルショートの髪に、右サイドを編み込んだお洒落ヘアーのヴェアトリス=ラトレーが呆れたような口調で聖女達をしかりつけた。


 生前の俺が知っている限り、彼女は在籍中は素行不良であったが、その実力と成績は申し分なかった。おまけに美人で、下級生からは姉御肌的な存在として君臨。三大お姉様の一人でもある。



 まさか彼女も聖女隊に入っているとは思わなかったけど。まあ実力的には当たり前か。



「実はベヒーモスが表れて、エルザがその際に行方不明になったのです。ですがそこのスケルトンが」



「殺したと?」


「・・・・・・いえ、どういうわけかエルザを担いでここまで来て、私達の見ている前で脱出魔法陣に放り投げてました」


 その行動がさぞ不思議だと言わんばかりに俺は二人に睨まれる。


 いや、確かに不可解だよな。魔物が冒険者を助けるなんて聞いたことがないよ。


「どうであれ、魔物討伐は訓練の一つ。さっさとそのスケルトンを倒しなさい」



 ヴェアトリスが無情にも俺の討伐を命令しやがった。



 絶体絶命のピンチじゃない?


 聖女隊の集団が俺に剣先を向ける。


「お待ちなさい。今日は全員予想外の敵に遭遇して疲弊しているわ。このスケルト

ンは襲ってくる気配が無いので放って置きなさい」


 意外にも助け舟を出してくれたのはヴェロニカだった。


 誰もが困惑した表情を浮かべる中、ヴェロニカはゆっくりと脱出魔法陣に向けて歩き始める。



 俺の横を平然と通り過ぎたる、彼女は静かに呟いた。


「エルザを助けてくれてありがとう・・・・・・」


 常に無感情で静かな声音のヴェロニカだが、最後の方は余計に聞き取りづらかった。


 なんて言ったのかともかく、お礼の言葉だけはわかった。


「次会った時は殺します」


 ヴェアトリスが問答無用でバッサリと言い放った一言で、俺のハートフルになりかけた気持ちが台無しになったけど。


 本当容赦ない性格だよこの美人。



 他の集団が脱出用魔法陣に姿を消したのを見送って、俺は穴倉に戻ったのだった。







「あ、無事だったの!」



「無事で悪いかあああ! この人でなし! 親友を置いて逃げるなんて」



「人じゃないけどね」



 確かに。ってそういう問題じゃない。俺はお仕置きとしてルリルリの尻尾を鷲掴みする。



「あ、ちょ、いやくすぐったい! あん、ひゃう」



 ついでにくすぐったりなんかりしたりして、ルリルリが昇天したのを見て満足感に浸った。まあ結局ベヒーモスまで現れたから、ルリルリに逃げて貰ってよかったけどな。



 何せ、あの場にいたら危なかったもん。



「でも聖女隊相手によく助かったね」



「まあ、今の俺に浄化魔法は通じないしな。おまけに聖女隊どころかベヒーモスがいたんだよ」



 そう言ってベヒーモスの首を出して見せた。



「えええええ! ベヒーモス倒せたの! いつの間にそんな強くなっちゃったわけ!」



「いや、結構危なかったけどな。まだまだ改良の余地がある。もう少し実戦データを取って色々と改良してからじゃないと、ダンジョンの外に出てから大変かもな」



「そっかあ。でもあまり魔物と戦いたがらない君がどうやって実践データとるわけ?」



 言われてみれば。ベヒーモスは成り行きで倒したけどさ。



 魔物として転生してしまった俺が、魔物を駆逐していくのはどうも気が引ける。



「まあ適当に最下層をうろついて、強い魔物相手に殺さずに実戦データとるのもありかもな」



「大きく出たね。僕はそんな危険な賭けに付き合う気はないよ」



「大丈夫。次からは俺一人で出来るよ」



マッピングや生体反応の探知などができる今なら、わざわざルリルリを危険にさらす必要はないしな。



 そんなことを考えながらルリルリの夕食を作ってから、今日の戦闘データを元に新しいシステムの構築や、既存のシステムの確認を始めたのだった。




【個体ステータス】 ハルベルト=ミスティス=クリスタ

【称号】 無し

【兵装】 ミスリル製合成樹脂基板魔力回路 量子演算型AIリリス クロムオリハルコン製フレーム外骨格 圧縮魔晶石カートリッジ×5 魔晶石合成クロムオリハルコン製内部骨格 多彩式光学アイカメラ 生体反応識別センサー 魔力識別センサー 

【機能】 生体探知 魔力探知 スキャニング エリアマップ表示 

【武装】 インパクトハンドハンマー エーテルドライブ パワージェネレーター 





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