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第六十三話

「…………それでいて本日はお日柄も良く。大変過ごしやすい日となり、私も胸を撫で下ろす思いでございますが……」

 という役所の代表のマイクを通した、やたら長ったらしい話からネフェティアの二周年記念式典は始まった。

 初日はスポーツ大会として、生産の牧場の隣に作られた簡易の運動場で様々な競技が開かれた。

 かけっこや騎馬戦、綱引きなどの王道の物から、サッカーや野球、また俺と夕月が参加する競馬に、夜には総樹が出場する格闘技などの、ぶっ飛んだ内容のものまで存在する。

 おおよそ運動会に見えないが、パーッと騒ぐと言う趣旨からは外れているわけでもなく、皆も楽しんでいるため誰も言及しない。

 出場した競馬は最終コーナーから俺・黒王号と夕月・ルイスキャップの一騎打ちになりほぼ同着でゴールした結果、写真判定により鼻先で黒王号の勝ちになった。

 いつもしれっとしている黒王号が根性で勝利をもぎ取ったのは意外だった。

 レースの後夕月に、「この借りはいつの日か必ず返す!」と言われたので、「ごめんその日無理なんだわ」と返すと「そうか、なら仕方が無いな」と言われた。いいのかそれで。ボケたのに拾われない悲しさを知った。

 それから遊軍選抜として対抗リレーに出場するも、お返しとばかりに(多分意識はして無いだろうが)夕月にあっさりと抜かれ、夕月と総樹の一騎打ちの結果、夕月が勝利する。

 後に個人総合で一位に輝いた夕月を見て、「あいつの体はどんな構造してやがんだ」と呟いた総樹には同意せざるを得なかった。

 その総樹は夜に行われた格闘技トーナメントにおいて生産に所属している元プロレスラーに苦戦するも、何とか勝利をもぎ取って優勝を果たす。圧巻の体捌きに、こんな奴に喧嘩売ったのかよ俺、と背筋が凍った。

 試合の後、控え室で談笑していると桜と累が訊ねて来た。

 先日の事件は百合子さんの独断という事で処理され、桜は無実が認められたので俺たちの宿舎へと無事戻ってくる事が出来た。そしてそれと同時に累が俺たちの宿舎へと引っ越しをした。

 累は総樹の願いを聞き入れた、というよりは桜に任せっきりだった家事の助手になるという事で引っ越しをしたが、やはりまだ総樹との関係はぎこちない。総樹も普通どおりにしようとして返って調子に乗ったり、逆に妙に静かだったりと波が激しい。

 話を聞いた桜が度々お節介を焼いているのだが、この二人の仲はそう簡単にはいかない。

 桜たちを含め談笑した後、俺は総樹に連れられて夜の町で、なんとも怪しげな建物に連れて行かれた。所謂キャバレーというもので、ステージに備えられたポールを使ってビキニ姿の妙齢の女性たちがダンスを披露していた。

 おいおいこんなことやって良いのかよ、風紀的に問題―と思ったが、そこには各組織の代表者級の男たちの姿も見えた。こいつはもうダメかもわからんね。

 そしてそれが最悪な事態を引き起こし、店を出た所にちょうど帰宅途中の恵理、伊織、夕月、桜、累の5人と居合わせてしまう。

「やっぱりあなたも汚らわしい下賎な狼の1人なのね」と恵理に蔑まされ、「そんな! 総樹君ならまだしも麻斗君まで!」と何故か泣き崩れる伊織、さらに「随分お楽しみだったんじゃないかいご両人?」とノリノリの夕月に、「不潔です! 金輪際、夢と鈴に近寄らないでください」と桜に拒絶され、とどめに「……」と累に無言で冷たい眼差しを喰らえば死にたくもなる。

 「これでお前も大人の仲間入りだな」と肩に手を乗せてきた総樹のわき腹をぶん殴る。格闘技で疲弊した総樹はそれをまともに食らい、うめき声を上げて跪くが、放置した。

 七人(追いついた総樹も含め)で宿舎に戻り、そのままプチパーティーを開いた。夢と鈴は幼稚園でのお泊り会に参加しているため、夜遅くまで騒いだ。

 菓子などを食べ馬鹿な話をしたりと楽しい時間が続いていたが、夕月が何を思ったのか恵理の飲み物にアルコールを混ぜた事で全てが崩壊した。

 突如、グラスを机に叩きつける恵理。ほんの数滴と夕月は言ったが、既に恵理の顔は真っ赤に変わり、目は焦点が定まっていなかった。

 俺と総樹が名前を叫ばれ正座しろと怒鳴られたので、それに従い身を屈めた瞬間、頭上をビール瓶が駆け抜けた。「避けんじゃないわよ!!」「そりゃ避けるわ!!」という事で、ビール瓶を持って暴れ出した恵理から逃げ惑う。

 大至急、累に布団を持ってきてもらいそれを盾にして何とか恵理を取り押さえ、グルグル巻きにしてイモ虫的な姿のままロープで縛る。しばらくは狂ったように暴れたが、酔いが回りきったのか、やがてすやすやと眠りに落ちた。

 その後夕月は桜、伊織、俺の三人から説教という集中砲火を食らい、涙目になって「そんな怒んなくたっていいじゃないかぁぁぁぁ!!!」と絶叫して外へ飛び出して行ったが、誰も追ってくれなかったのが寂しかったのか、直ぐに帰ってきた。

 なんだかんだのバカ騒ぎ。

 だがここまで騒げるというのもきっと良いことなのではないか。俺はしみじみそう思った。

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