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第五十二話

「今回の事件、それが起きて皆で改めて考えてみると、ここ最近で誰も七人分の梱包作業をやってなかったんだよ」

「つまりいつからかここへの発送が一人分増えて八人分になっていた。そういうことね」

 恵理が整理するように口を開く。そこで俺は理解した。

「なるほど。八人の宿舎は他にも何棟かある。まぎれても仕方が無い。それに八人分の仕事が中々回ってこなかったとしても、他の誰かがやってるんだろうと思って何も言わない」

 愚痴などで梱包内容を仕事終わりに話す機会はあるだろうが、それも全員で話しているわけではない。わざわざ七人分の作業をやった人間を探す物好きはいないだろう。

 秘匿にすることで、誰かがやっているんだという感情が生まれる。自然とそう考えてしまう。確認が出来ない、そこが仇となった。

 そう考えると俺が桜から聞いた内容を統合すれば、ある程度全貌が見えてきた。

「それじゃあそろそろあなたが桜と話した事を聞かせてもらえないかしら」

 俺の思考を読んでいるんじゃないかと疑いたくなるほどのジャストなタイミングで恵理が話を振ってくる。俺は一度頭の中を整理してから桜から聞いた話をする。半年前に突然表記が変わったこと。そしていつの間にかに八人分になって送られていた食料物資。

「なるほどね」

 話が終わった途端に恵理が不敵な笑みを浮かべる。冷静であれば頭の回転は恵理が一番早い。おそらく何かしらの考えが浮かんだのだろう。

「つまり……どういう事だ?」

 総樹は腕を組んで首をかしげる。

「あたし分かったよい!!」

 手を叩いて夕月が立ち上がる。

「え、本当!?」

 伊織が驚いた声を上げる。俺も思わず口に出そうになった。だって信じられないから。

「うん!えりりんに任せればいいって事が!」

 親指をグッと突き出してキリッとした表情で顔を恵理に向けた。そうだね、お前の言ってることは正しいよ。でもその開き直り方、何かむかつく。

「凄いわね夕月。その『えりりん』とかいう魔法ステッキでも振り回して勧善懲悪を訴えそうな、至極嫌悪感を覚え虫唾が走る呼び方以外完璧じゃない」

 えりりんは笑顔だ。笑顔過ぎて頬が痙攣するほど引きつっている!

「だろう、えりりん!」

 もうこいつは根本的に頭のネジがぶっ飛んでるんではないだろうか。いや、今のはかなりまどろっこしく不満を訴えた恵理が悪いか。勧善懲悪とか夕月が意味を知ってそうに思えない。

「こ、個人的なことはあとで頼むぞ」

 ティーカップを持つ手が震えていたので制止させる。あのままだと夕月にぶっ掛けていただろう。何とか自制した恵理はゆっくりとティーカップを机の上に置いた。覚えてらっしゃいという目で夕月を見る。見られてる本人笑ってるけど。

「それじゃあご指名のえ……恵理さん。状況の説明をお願いできますか?」

 思わず敬語になる。若干えりりんと言いたかったが命が惜しい。恵理は一度俺を睨んでから腕を組み、ソファーに寄りかかった。

「二つの話を統合すると、家事側の提出した数と生産側の受け取った数が合ってない。そこを考えると、一番怪しいのは半年前の家事と生産の間の取引の時。そこで何かが起こっていると考えるのが妥当じゃないのかしら?」

「同感だな。細工できるとしたらそこぐらいだ」

 恵理の言葉はそのまま俺の考えたものと同じだった。まだ可能性の域だが、数字を変更されている事を考えるとどうしてもそこが怪しい。そしてそれに関わっていた人間。

「と言ってはみたものの、残念ながら確認の仕様が無いわ。仲介に携わったからといって、何かをやった確証も無い。第一、仲介人が誰だか分からない以上は―」

「あ、あたしそれ知ってるよ。家事側も生産側も」

 恵理が手を広げてお手上げのポーズを―取ろうとした時、隣にいる夕月が挙手した。

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