第四十六話
二日後、俺は家事の本部の中を歩いていた。両サイドには女性の家事構成員が二人、俺を挟むようにして平行に歩いている。
この二人は俺の監視役。俺と桜との会話で問題と取られる発言が出たかどうかを監視する二人だ。
家事側は俺達に知られてはいけない事がある。
その上で俺は博人さんの意見を参考に、監視を付けての面会を提案した。そうする事で家事側が保持したい秘密を俺が聞く事を抑制でき、家事側としてはそれさえ守られれば良いはずである。それを聞いた家事側はそれを踏まえて更に細かいルールを定めてきた。
一つ、面会には監視役を一人つける。
二つ、面会できるのは一人だけにする。
三つ、面会時間は十分とする。
四つ、携帯などの録音機能を持った機器の持ち込み禁止。
四つ目が予想外では合ったが、特に計画に支障は起きない。電波は通ってないとはいえ、携帯の一部の機能は利用可能ではあるが、別にそれを利用しようとはしていない。
俺は眉一つ動かさない女性二人に扇動されるがまま歩き続け、建物の地下へと連れてかれた。このままフルボッコにされないか心配であったがそれは杞憂に終わった。
俺たちはある部屋の前で立ち止まった。
「面会時間は十分です。時間が着たら強制退出になります」
片方の女性が持っていたストップウォッチを俺に見せながら押す。そしてもう片方の女性が鍵を開け、ドアを開ける。
六畳ほどの小さな部屋の中は蛍光灯二本だけの光で照らされていた。その光の下、中学校の制服姿の桜の姿があった。ベッドに腰掛け、こちらをきょとんとした顔で見つめていた。若干細くなったように見える。
「麻斗……さん?」
「よっ、元気にしてるか?」
手を挙げて挨拶する。
「一体どうして?それに……」
桜は俺を見た後、後ろに控えている二人に目をやった。
「お前と面会する条件でな。一応俺とお前の会話は監視される体になっている」
俺は机に備えられている椅子を桜の前まで持ってきて腰を下ろす。
「される体って?」
「言葉の意味そのままだ」
「え、じゃあお二人は?」
「ただ立ってるだけ。別に俺たちを監視してなんかいない」
俺は扇動してくれた二人に手を振った。先程までの微動だにしなかった表情が嘘のように満面の笑みで振り返してくれる。
「一体どんな手を使ったんですか?」
唖然とした表情の桜。
「今度総樹がデートしてあげるって言ったら協力してくれた」
「はぁ」
訳分からないといったところか。その気持ちは分かる、俺も実は良く分かっていない。あっさりと買収されたので裏があるのかと勘ぐってしまうほどだ。
確かなのは扇動してくれた二人が味方だという事だ。まぁそれだけ理解すれば十分か。
「面会時間の十分は流石にどうしようもないからな。手短に行くぞ。お前は本当に横領したのか?」
「どこでそれを!?」
桜は驚き、目を見開く。だがそんなものに構っていられない。
「手短にな。やったのかやってないのか?」
「……やっていません」
沈黙のあと、搾り出すように桜は答えた。
「そうか」
俺は安堵する。まぁやってたら俺が危険を犯してまでここに入った意味がないんだが。
「悪い、何回も聞かれてるのかもしれないが答えてくれよ。お前は食料物資が余分に届けられている事に気が付いていたか?」
桜の身を気遣いながら言葉を続ける。聞く内容はもう頭の中にある。




