第四十五話
「そういう総樹は何か無いのか?」
「あるにはあるんだが」
「止めておきなさい。こいつの考えなんて聞くだけ無駄よ?」
「さっき散々恵理にまくし立てられた」
総樹は落ち込んだ表情を見せる。
「どれだけ変な案だったんだよ。まさかさっきのお姉さま方って方法を応用して中に侵入しようって訳じゃないだろうな?」
「よく分かったな。エスパーかお前?」
「帰れ!!」
「ここが俺の家だ!!」
誰かこいつ殺す許可くれ!
だから言ったのに、と言う視線が恵理から向けられる。
そうは言ったものの、実際に良案が思いつかない現状では一方的に文句を言う事も出来ないか。
恵理の事と同じで、やり方にこだわらなければ総樹の案もやりようはあるのかもしれない。
辞典で殴るのを認めたわけではないが。
「おや、気が付いているみたいだね」
「博人さん?」
思案していたところ、博人さんが部屋へと入ってきた。
「どうも御無沙汰してるよ。総樹君も恵理君も久しぶりだね」
博人さんの気さくな挨拶に総樹と恵理は礼を返す。
「どうしてここに?」
「いや総樹君から君が体調不良で今日休むと聞いてね。君が休むほどだからそんなに悪いのかと思って。それに僕は名義事情この宿舎の代表にもなっているからね」
申し訳なさそうな表情をする博人さんに、逆に申し訳なく思った。体調不良と言ってもこれは人為的なものだ。
「それで、何か話しこんでいたようだけれど。もしかして何か起きたのかな?」
「それは……」
俺は総樹と恵理を見た。どちらも、お前の好きにしろという目線を返す。
一度頷き、俺は分かっている限り桜の話を博人さんに伝えた。博人さんならいいアイデアを出してくれるはずである。
「……という状況なんですけど。何か良いアプローチの方法はありませんか?」
「なるほど」
しばし考え込んだ後、博人さんは口を開く。
「確かに何の考えなしに突っ込むのは無謀だろうね。そうだね、じゃあ妥協案を提示するというのはどうだろう?」
「妥協案……ですか?」
「うん。家事側はその桜君の話を広めたくない。だけれどこちらには話を聞く大義名分がある。なら譲歩する感じで、条件付きで面会を申し込むとかすればいいんじゃないかな」
「それでも相手が承諾しなかった場合はどうするの?」
上げ足を取るわけではなく、内容を煮詰めるといった口調で恵理が問う。
「だからこその大義名分だ。認めてもらわなければ役所の監視権限を盾にすればいい。実際にする気がなくても、こちらにはそれをするほどの理由とコネがあると言えばいいのさ」
「脅迫と何も変わらねえな」
「君たちも目の前の問題に黙って口を塞げって脅迫されているようなものだ。おあいこさ。確かに無理矢理というのは卑怯な手だが、今はとよかく言っている暇はないんだろ?」
その問いかけに俺たちは首肯を返す。
家事にいるであろう桜に話す。それは早ければ早いほうがいい。
博人さんに話を聞いて、俺の中である程度方向性が固まった。
「まぁそこを心配する必要もないのだけれどね」
「えっ?」
「あ、そうそう。何か事を起こす時の注意点……というか心に留めておいてほしい事がある」
「はぁ……なんですか?」
問いかけに、博人さんは少し神妙な顔をして答えた。
「君たちに桜君と話したい理由があるように、家事側にもこの問題を広めたくない何かしらの理由があるのだということさ」




