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第四十一話
血だらけの室内。細長い和室の中は大量の血で赤く染められていた。床に転がっているのはかつて人だった物。腕、脚、首などが細かに断絶され、もはや原型を留めていない。
生者は二人。両者とも部屋と同様に体中が血で真紅に染まっている。
一人は少年。血で染まった赤い刀身の日本刀を握り締め部屋の上座の位置に立っていた。興奮状態にあり肩を張り、上下させながら荒々しい呼吸音を発している。
もう一人は少女。テーブルの脇に座り、呆然としている。その目に生気は無く、支える力もないのか首がだらしなく曲がっている。もし生きていると知らなければ死んでいると思われても仕方が無い。だがこの少女は生きている。否―殺さなかった、殺すはずが無い。
「詠奈」
刀を持った少年は妹の名を呼び、少女に近づく。だが少女―詠奈は動く素振りを見せない。少年はそんな妹を空いている方の手で優しく抱き寄せる。
「お前は自由だ。誰もお前を縛れない。あのくそ爺も、ふざけた叔父や叔母ももういない。お前を酷い目に合わせようとした奴等は皆いなくなった。だからもう悲しむ必要は無い」
悲痛な言葉。それが伝わったのか少女の右目から、一筋の涙が流れた。
詠奈、お前のためなら俺は人を殺すことさえ厭わない。例えそれが肉親だとしても。




